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冒険者
今後の話
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兵士達は自分の傷が治ると跪いて私に祈り始める。
そんな事をされても困ってしまうわ。
「なんという事だ……これは、何と凄まじい……」
伯爵も驚いていた。
「これで納得いただけましたか?」
「う、うむ。疑ってしまいすまなかった。話を元に戻そう。ウルゼイドが攻めて来ないというのは何故かね?」
「まず、私とウルゼイドの王家は私と親交があります。人間の街に行きたいと希望した時、紹介してくれたのがここだったのです」
「しかしそれだけでは根拠としては薄いのでは?」
「彼らは私達の戦闘力をよく理解しています。その気になれば国一つ消す事など容易いという事を。私のいるこの国に攻撃すれば、私に対する宣戦布告と見做します」
彼らは決してそのような事はしない。
私も彼らに対して恩があるので攻撃するつもりはないが、芽依の安全が最優先だ。いざという時は戦う事を迷いはしないだろう。
「もしも我々がウルゼイドとの友好的対話を望んだら、その橋渡し役を担って貰えるだろうか?」
「私で協力できる事があればやりましょう」
「分かった。次に街の救援についての話だが……」
「それについては私よりも詳しく話せる方に御同行していただいています」
「ではその者から話を聞こう」
商隊護衛の任務内容とその道中で起こった事についてヴァンが説明していく。
「よく分かった。君達冒険者への謝礼金を用意しようと思うのだが」
「それならばハル達に渡してください。彼女がいなければ我々はここにはいませんでした」
「お待ち下さい。私は自分の出来る事をしただけです。護衛隊のリーダーであるヴァンさんや他の方達がいてくれたから私は力を発揮する事ができました。報酬を頂くことができるなら商隊護衛の依頼を請けた全員に均等にお願いします」
ヴァンは今回の手柄を殆ど私に渡そうとしていたがそれではいけない。
事実上、商隊護衛の仕事を途中で放棄して救援に駆け付けたのだから報酬を受け取る権利は全員に有る。
「それでは後日、冒険者ギルドに特別報酬を支払う事にする」
「ありがとうございます」
報酬についてはこれで良いだろう。
「捕らえた盗賊団の者と商会の者について、引き渡しについて打ち合わせをしたい。代表者はこの後館で部下と打ち合わせてくれ。竜を駆る少女よ、名はハルだったな。ウルゼイドとの件、よろしく頼む。明日にはギルドへ遣いをやろう」
「分かりました。明日、昼にはギルドに行くようにします」
私との打ち合わせは明日になった。ヴァンには悪いが、私達は先に帰らせてもらう事にする。
颯太とカナエもいつまでもこちらに引き留めておくのも申し訳ないので、トコヤミ共々送還する事にした。
「何かあればいつでも呼んでね」
「私もです!いつでも呼んでください!」
颯太とカナエを帰して、トコヤミにエレを預けて泉に連れていく様に命じる。
「あなたは一度泉に行ってもらいます。この件が片付いたら改めて呼びますからね」
「はい。お待ちしてます」
エレが聞き分けの良い子で助かるわ。
二人と別れてギルドに向かう。領主と話した事を報告する為だ。
「ハルさんは凄いな。伯爵様相手にあんなに堂々と話せるなんて」
歩きながらセロが感心した様に話す。
「変に物怖じしても仕方ないと思うわ。堂々とありのままを話しただけですよ」
私からしたら伯爵だって子供同然。彼が生まれるずっと昔から生きているのだから。
ギルドに戻ると、共に戦った冒険者や職員達が出迎えてくれた。
皆、伯爵に何と言われたかが気になっていた様だ。
ホールで皆に聞こえる様に伯爵とのやり取りを説明する。
「俺達の報酬についても掛け合ってくれたのか。ありがてぇな」
「ヴァンはまだ領主の所なんだね」
「ハルさん達が無事で良かったよ」
皆反応はそれぞれだ。
「報告は確かに聞きました。街の危機に駆けつけてくれて、その上お疲れの所をギルドの片付けまでしてくださって本当にありがとうございました」
ギルドを代表してリフィナが礼を言い深々と頭を下げる。
「ところで冒険者ギルドの長はどうしているのですか?」
「今、王都に行っていて留守なのです。戻られるまでは私が代理を務めさせていただいています」
ギルド長代理はリフィナだった。
そんな事をされても困ってしまうわ。
「なんという事だ……これは、何と凄まじい……」
伯爵も驚いていた。
「これで納得いただけましたか?」
「う、うむ。疑ってしまいすまなかった。話を元に戻そう。ウルゼイドが攻めて来ないというのは何故かね?」
「まず、私とウルゼイドの王家は私と親交があります。人間の街に行きたいと希望した時、紹介してくれたのがここだったのです」
「しかしそれだけでは根拠としては薄いのでは?」
「彼らは私達の戦闘力をよく理解しています。その気になれば国一つ消す事など容易いという事を。私のいるこの国に攻撃すれば、私に対する宣戦布告と見做します」
彼らは決してそのような事はしない。
私も彼らに対して恩があるので攻撃するつもりはないが、芽依の安全が最優先だ。いざという時は戦う事を迷いはしないだろう。
「もしも我々がウルゼイドとの友好的対話を望んだら、その橋渡し役を担って貰えるだろうか?」
「私で協力できる事があればやりましょう」
「分かった。次に街の救援についての話だが……」
「それについては私よりも詳しく話せる方に御同行していただいています」
「ではその者から話を聞こう」
商隊護衛の任務内容とその道中で起こった事についてヴァンが説明していく。
「よく分かった。君達冒険者への謝礼金を用意しようと思うのだが」
「それならばハル達に渡してください。彼女がいなければ我々はここにはいませんでした」
「お待ち下さい。私は自分の出来る事をしただけです。護衛隊のリーダーであるヴァンさんや他の方達がいてくれたから私は力を発揮する事ができました。報酬を頂くことができるなら商隊護衛の依頼を請けた全員に均等にお願いします」
ヴァンは今回の手柄を殆ど私に渡そうとしていたがそれではいけない。
事実上、商隊護衛の仕事を途中で放棄して救援に駆け付けたのだから報酬を受け取る権利は全員に有る。
「それでは後日、冒険者ギルドに特別報酬を支払う事にする」
「ありがとうございます」
報酬についてはこれで良いだろう。
「捕らえた盗賊団の者と商会の者について、引き渡しについて打ち合わせをしたい。代表者はこの後館で部下と打ち合わせてくれ。竜を駆る少女よ、名はハルだったな。ウルゼイドとの件、よろしく頼む。明日にはギルドへ遣いをやろう」
「分かりました。明日、昼にはギルドに行くようにします」
私との打ち合わせは明日になった。ヴァンには悪いが、私達は先に帰らせてもらう事にする。
颯太とカナエもいつまでもこちらに引き留めておくのも申し訳ないので、トコヤミ共々送還する事にした。
「何かあればいつでも呼んでね」
「私もです!いつでも呼んでください!」
颯太とカナエを帰して、トコヤミにエレを預けて泉に連れていく様に命じる。
「あなたは一度泉に行ってもらいます。この件が片付いたら改めて呼びますからね」
「はい。お待ちしてます」
エレが聞き分けの良い子で助かるわ。
二人と別れてギルドに向かう。領主と話した事を報告する為だ。
「ハルさんは凄いな。伯爵様相手にあんなに堂々と話せるなんて」
歩きながらセロが感心した様に話す。
「変に物怖じしても仕方ないと思うわ。堂々とありのままを話しただけですよ」
私からしたら伯爵だって子供同然。彼が生まれるずっと昔から生きているのだから。
ギルドに戻ると、共に戦った冒険者や職員達が出迎えてくれた。
皆、伯爵に何と言われたかが気になっていた様だ。
ホールで皆に聞こえる様に伯爵とのやり取りを説明する。
「俺達の報酬についても掛け合ってくれたのか。ありがてぇな」
「ヴァンはまだ領主の所なんだね」
「ハルさん達が無事で良かったよ」
皆反応はそれぞれだ。
「報告は確かに聞きました。街の危機に駆けつけてくれて、その上お疲れの所をギルドの片付けまでしてくださって本当にありがとうございました」
ギルドを代表してリフィナが礼を言い深々と頭を下げる。
「ところで冒険者ギルドの長はどうしているのですか?」
「今、王都に行っていて留守なのです。戻られるまでは私が代理を務めさせていただいています」
ギルド長代理はリフィナだった。
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