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冒険者
領主
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駐屯兵団の反乱は鎮圧された。
セイランに駐留していた兵士千人の内、反乱に加わったのはおよそ九百五十人。
残りの五十人は反乱に異を唱えて領主軍または衛兵隊に合流し、各所防衛地点で戦闘していたそうだ。
私達は冒険者ギルドを奪還すると、ギルド内の清掃、整備を始める。
ここでも激しい戦闘が行われた為、椅子やテーブルが破壊されたり、食器類などギルドの備品もかなり被害を受けていた。
みんなで協力すれば早いもので、ものの一時間程でギルドホールは綺麗になった。
「ここに黒竜を駆る冒険者は居るか?」
やって来たのは駐屯兵団の鎧を着た男、ハーツとその部下数名だ。彼らが領主軍に味方した駐屯兵団なのだろう。
「それは私のことです。ハーツさん」
「ハル……君だったのか。怪我はないか?」
ハーツは私の事を子供の様に扱う。トコヤミを従えていた事を知った上でそう接してくれる彼は、とても優しいのだと思う。
「怪我はありません。何か御用ですか?」
「ソリムド伯爵が話を聞きたいと言っているのだ。一緒に来ては貰えないか?」
「分かりました。行くのは私だけですか?」
「君のパーティ全員と、事情を詳しく説明できる者が他にいるなら来てもらいたい」
それならばヴァンに来てもらおう。彼なら商隊護衛の任務についても詳しく話す事ができる。
味方だと宣言したので敵意を向けられる事は無いだろうが、念の為に颯太とカナエも一緒に行かせる事にした。
領主の館に向かいながらハーツ逹の話を聞いた。
反乱が起こったのは彼らが街の外へ警らに出ていた時だった。
その日は珍しく彼の部隊に上役がついて来ていて、警らの途中で『我々は領主を打倒しこの地に安寧をもたらす為に蜂起する』と語り始めた。
突然の宣言とと共に、ハーツ達の部隊はルーシェンに向かい書簡を届ける様に指示を受けた。
「我々は彼の言っている事が納得できず、従う事はできなかった。彼を拘束してソリムド伯の元へと向かったのだが我々が到着した頃には既に戦闘が始まっていた」
衛兵隊はまだ事態が把握できておらず混乱していたのでハーツが指示を出し住人の避難と防備の構築を行い、彼らは駐屯兵団の拠点に近い東側避難所の防衛に駆けつけたらしい。
当初は東側の避難所が一番形勢不利だったのだが、ハーツ達の部隊が来た事により押し返す事に成功し、その後も何とか凌ぎ切る事が出来た。
「君達冒険者が援軍に駆けつけてくれなければいずれは兵力差で押し切られていただろう。本当に助かった」
「いえ、ハーツさんこそ、よく反乱に加わりませんでしたね」
軍人は基本的には上の命令に背く事はないと思っていた。ハーツ達も例外ではないだろうと。
「上役に背いたのは、ソリムド伯の統治が悪いとは思えなかったのと、連行された盗賊達が即日解放された事への不信感からだな。それからハルとメイの様な子供に顔向けできる行いをするべきだと考えた結果だよ」
「ハーツさん達と戦う事にならなくて良かったです」
「私の判断は間違いではなかったと安心しているよ」
ハーツはそう言って笑い、私と芽依の頭を撫でる。
芽依はニコニコしているし、私も悪い気はしなかった。
領主の館の着くと、入り口から領主の兵士達に固められていた。
ハーツが「ドラゴンの主人をお連れした」と言うと伝令が走り、私達は庭へと通された。
着いたのは庭の中央。丁度トコヤミを着地させた所だった。
屋敷のバルコニーに伯爵が現れる。茶色の短めの髪に口髭をたくわえた四十代くらいの男性だ。その少し後ろには兵士というより騎士といった風貌の者が四人控えていた。
「まずは礼と謝罪をさせてもらおう。街の窮地に駆けつけてくれた事、礼を言う。そしてこの様な形で会う事になってしまってすまない。私の護衛がこれ以上の接近を認めてくれなかったのだ」
伯爵は声を張り上げて私達にそう言った。
セイランに駐留していた兵士千人の内、反乱に加わったのはおよそ九百五十人。
残りの五十人は反乱に異を唱えて領主軍または衛兵隊に合流し、各所防衛地点で戦闘していたそうだ。
私達は冒険者ギルドを奪還すると、ギルド内の清掃、整備を始める。
ここでも激しい戦闘が行われた為、椅子やテーブルが破壊されたり、食器類などギルドの備品もかなり被害を受けていた。
みんなで協力すれば早いもので、ものの一時間程でギルドホールは綺麗になった。
「ここに黒竜を駆る冒険者は居るか?」
やって来たのは駐屯兵団の鎧を着た男、ハーツとその部下数名だ。彼らが領主軍に味方した駐屯兵団なのだろう。
「それは私のことです。ハーツさん」
「ハル……君だったのか。怪我はないか?」
ハーツは私の事を子供の様に扱う。トコヤミを従えていた事を知った上でそう接してくれる彼は、とても優しいのだと思う。
「怪我はありません。何か御用ですか?」
「ソリムド伯爵が話を聞きたいと言っているのだ。一緒に来ては貰えないか?」
「分かりました。行くのは私だけですか?」
「君のパーティ全員と、事情を詳しく説明できる者が他にいるなら来てもらいたい」
それならばヴァンに来てもらおう。彼なら商隊護衛の任務についても詳しく話す事ができる。
味方だと宣言したので敵意を向けられる事は無いだろうが、念の為に颯太とカナエも一緒に行かせる事にした。
領主の館に向かいながらハーツ逹の話を聞いた。
反乱が起こったのは彼らが街の外へ警らに出ていた時だった。
その日は珍しく彼の部隊に上役がついて来ていて、警らの途中で『我々は領主を打倒しこの地に安寧をもたらす為に蜂起する』と語り始めた。
突然の宣言とと共に、ハーツ達の部隊はルーシェンに向かい書簡を届ける様に指示を受けた。
「我々は彼の言っている事が納得できず、従う事はできなかった。彼を拘束してソリムド伯の元へと向かったのだが我々が到着した頃には既に戦闘が始まっていた」
衛兵隊はまだ事態が把握できておらず混乱していたのでハーツが指示を出し住人の避難と防備の構築を行い、彼らは駐屯兵団の拠点に近い東側避難所の防衛に駆けつけたらしい。
当初は東側の避難所が一番形勢不利だったのだが、ハーツ達の部隊が来た事により押し返す事に成功し、その後も何とか凌ぎ切る事が出来た。
「君達冒険者が援軍に駆けつけてくれなければいずれは兵力差で押し切られていただろう。本当に助かった」
「いえ、ハーツさんこそ、よく反乱に加わりませんでしたね」
軍人は基本的には上の命令に背く事はないと思っていた。ハーツ達も例外ではないだろうと。
「上役に背いたのは、ソリムド伯の統治が悪いとは思えなかったのと、連行された盗賊達が即日解放された事への不信感からだな。それからハルとメイの様な子供に顔向けできる行いをするべきだと考えた結果だよ」
「ハーツさん達と戦う事にならなくて良かったです」
「私の判断は間違いではなかったと安心しているよ」
ハーツはそう言って笑い、私と芽依の頭を撫でる。
芽依はニコニコしているし、私も悪い気はしなかった。
領主の館の着くと、入り口から領主の兵士達に固められていた。
ハーツが「ドラゴンの主人をお連れした」と言うと伝令が走り、私達は庭へと通された。
着いたのは庭の中央。丁度トコヤミを着地させた所だった。
屋敷のバルコニーに伯爵が現れる。茶色の短めの髪に口髭をたくわえた四十代くらいの男性だ。その少し後ろには兵士というより騎士といった風貌の者が四人控えていた。
「まずは礼と謝罪をさせてもらおう。街の窮地に駆けつけてくれた事、礼を言う。そしてこの様な形で会う事になってしまってすまない。私の護衛がこれ以上の接近を認めてくれなかったのだ」
伯爵は声を張り上げて私達にそう言った。
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