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冒険者
マルダの手前
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「今回は俺達も参考になった。また機会があれば誘ってくれ」
『雷鳴』のリーダーはそう言うとメンバーを連れて帰って行った。
「ハルさん、また」
アルだけは別で私に挨拶に来た。
「はい。今日は色々とありがとうございました。明日からも頑張りましょうね」
「はい!」
アルは嬉しそうに返事をするとリーダー達の所へ駆けていった。
とても可愛い少年だ。私に好意を持ってくれるのは嬉しいが、それに応えてあげる事は出来ない。
一時の心の揺らぎと捉えて様子をみよう。その内に新たに気になる子が現れれば私の事は忘れるだろう。
「お母さん、アルさんに好かれてるんだね」
「そうみたいね」
「告白とかされたらどうするの?」
「感謝を伝えて断るわ。私は精霊だもの」
「そっか……」
少し寂しそうにする芽依。
それは私達精霊と人間とでは生きる時間が違うと言う事。芽依はそれを理解してしまったのかもしれない。
「私はあなた達の母親であるだけで充分なのよ。これからも良き娘、息子であってね」
「うん!」
「勿論だよ」
訓練と反省会も終わったので颯太を送還して宿に戻る。
明日からはマルダに向けて十五日の移動だ。必要物資の補充は商人達が手配してくれている。準備は万端、あとはゆっくり休むだけだ。
因みにフェルナンド達の引き渡しはここでは行わずマルダで行う事になった。
というのは、ルーシェンはソリエド伯爵領だが、港町マルダはアレイマット子爵領らしい。ソリエド伯爵が商会と盗賊団の取引に絡んでいたら引き渡しても無意味だろう。それならば隣の領地で身柄を引き渡してしまおうという話で纏った。
マルダまでの道中は襲撃などは一切無く順調に進んだ。
あの襲撃が本命で、全戦力だったのだろう。颯太、カクカミ、メトで全滅させてしまったのでこれ以上盗賊団は出てこないのかもしれない。
油断するつもりはないが。
私達の役割は基本的に変わらず、空いた時間で連携の確認や個人戦闘能力を向上させる為の訓練をしていた。
そしてルーシェン出発から14日目。
いつも通り最後尾を歩いていたら前の方が騒がしくなる。
《遠隔視野》で確認すると、正面の道とその周りが著しく荒れていた。
草が焼け焦げた跡や、血痕もあった。
商隊が停止して、前を歩いていた《竜の爪》のメンバーが荒らされている辺りを調べ始める。
私達よりも先にマルダを目指していた者が何者かに襲われたのだろう。遺体は見当たらないが……いや。
「ヴァンさんに話をしてくるわ」
「私も行くよ」
芽依がついて来てくれる。
「ヴァンさん」
「ハルか。どうやらここで襲撃があった様だ。痕跡はまだ新しい。襲われた者は連れ拐われたのだろう」
仲間達と周りを探索していたヴァンはそう教えてくれた。
「いえ、恐らくは殺されています」
「何で分かるんだ?」
私は魔力の痕跡が残っている場所がある事に気付いた。そこは街道から少し離れた所で、地面を草で擬装してあるが掘り返した跡があった。
私は地面の土を魔法で掘り返す。
そこには複数人の遺体と馬、馬車の残骸も埋まっていた。人は原型を留めておらず、バラバラに切断されているものが殆どだった。
「これは……」
あまりに惨い遺体の状況を見て言葉を失うヴァン。
「殆ど魔法で殺されています。これだけの遺体を地面に埋められて隠すまで行えるのは、かなりの使い手だと思います」
「君よりもか?」
「いえ、それは有り得ません」
「そうか……ここまで来て立ち止まる訳にはいかない。襲撃を警戒しながら前進だ」
各リーダーを集めて状況の説明と今後の方針を話していくヴァン。
敵に相当な魔法の使い手が居ると聞いて皆緊張していた。
『ハル様!』
オオトリが急降下して来て地面に降りる。私と芽依以外は驚いて武器を抜いていたが、私の眷属だと分かるとすぐに武器を納めてくれた。
「どうしたの?」
『この先に妙な一団が待ち構えています』
詳しく聞くと、その一団はローブに身を包んだ集団で数は十五程度らしい。
どうやらその連中が街道を行く者を襲った様だ。
『雷鳴』のリーダーはそう言うとメンバーを連れて帰って行った。
「ハルさん、また」
アルだけは別で私に挨拶に来た。
「はい。今日は色々とありがとうございました。明日からも頑張りましょうね」
「はい!」
アルは嬉しそうに返事をするとリーダー達の所へ駆けていった。
とても可愛い少年だ。私に好意を持ってくれるのは嬉しいが、それに応えてあげる事は出来ない。
一時の心の揺らぎと捉えて様子をみよう。その内に新たに気になる子が現れれば私の事は忘れるだろう。
「お母さん、アルさんに好かれてるんだね」
「そうみたいね」
「告白とかされたらどうするの?」
「感謝を伝えて断るわ。私は精霊だもの」
「そっか……」
少し寂しそうにする芽依。
それは私達精霊と人間とでは生きる時間が違うと言う事。芽依はそれを理解してしまったのかもしれない。
「私はあなた達の母親であるだけで充分なのよ。これからも良き娘、息子であってね」
「うん!」
「勿論だよ」
訓練と反省会も終わったので颯太を送還して宿に戻る。
明日からはマルダに向けて十五日の移動だ。必要物資の補充は商人達が手配してくれている。準備は万端、あとはゆっくり休むだけだ。
因みにフェルナンド達の引き渡しはここでは行わずマルダで行う事になった。
というのは、ルーシェンはソリエド伯爵領だが、港町マルダはアレイマット子爵領らしい。ソリエド伯爵が商会と盗賊団の取引に絡んでいたら引き渡しても無意味だろう。それならば隣の領地で身柄を引き渡してしまおうという話で纏った。
マルダまでの道中は襲撃などは一切無く順調に進んだ。
あの襲撃が本命で、全戦力だったのだろう。颯太、カクカミ、メトで全滅させてしまったのでこれ以上盗賊団は出てこないのかもしれない。
油断するつもりはないが。
私達の役割は基本的に変わらず、空いた時間で連携の確認や個人戦闘能力を向上させる為の訓練をしていた。
そしてルーシェン出発から14日目。
いつも通り最後尾を歩いていたら前の方が騒がしくなる。
《遠隔視野》で確認すると、正面の道とその周りが著しく荒れていた。
草が焼け焦げた跡や、血痕もあった。
商隊が停止して、前を歩いていた《竜の爪》のメンバーが荒らされている辺りを調べ始める。
私達よりも先にマルダを目指していた者が何者かに襲われたのだろう。遺体は見当たらないが……いや。
「ヴァンさんに話をしてくるわ」
「私も行くよ」
芽依がついて来てくれる。
「ヴァンさん」
「ハルか。どうやらここで襲撃があった様だ。痕跡はまだ新しい。襲われた者は連れ拐われたのだろう」
仲間達と周りを探索していたヴァンはそう教えてくれた。
「いえ、恐らくは殺されています」
「何で分かるんだ?」
私は魔力の痕跡が残っている場所がある事に気付いた。そこは街道から少し離れた所で、地面を草で擬装してあるが掘り返した跡があった。
私は地面の土を魔法で掘り返す。
そこには複数人の遺体と馬、馬車の残骸も埋まっていた。人は原型を留めておらず、バラバラに切断されているものが殆どだった。
「これは……」
あまりに惨い遺体の状況を見て言葉を失うヴァン。
「殆ど魔法で殺されています。これだけの遺体を地面に埋められて隠すまで行えるのは、かなりの使い手だと思います」
「君よりもか?」
「いえ、それは有り得ません」
「そうか……ここまで来て立ち止まる訳にはいかない。襲撃を警戒しながら前進だ」
各リーダーを集めて状況の説明と今後の方針を話していくヴァン。
敵に相当な魔法の使い手が居ると聞いて皆緊張していた。
『ハル様!』
オオトリが急降下して来て地面に降りる。私と芽依以外は驚いて武器を抜いていたが、私の眷属だと分かるとすぐに武器を納めてくれた。
「どうしたの?」
『この先に妙な一団が待ち構えています』
詳しく聞くと、その一団はローブに身を包んだ集団で数は十五程度らしい。
どうやらその連中が街道を行く者を襲った様だ。
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