143 / 453
冒険者
ルーシェン
しおりを挟む
軍が冒険者達を排除するのに手を貸しているとするのなら問題だ。
「ありがとう、颯太、カクカミ、メト」
「うん。またいつでも呼んで」
『ハル様のお力になれて光栄です』
3人を送還した。
「で、どうするよ?今回の依頼、続けなくてもいいんじゃねえか?」
『草原の風』のリーダー、ロディが言う。
商会の者が盗賊団と手を組んでいたのなら、この依頼は不履行だ。破棄しても良い。
「このまま引き返しても問題はないだろうな。依頼については依頼主側の違反による破棄。報酬も全額出る筈だ。しかし、物資を必要としているのは商会ではない。民が困らない為にも、この依頼は続行すべきじゃないだろうか?」
ヴァンは全員に言っている。
「確かにな。俺は続行でいいぞ」
「右に同じだ。今更帰るのは納得がいかない」
『雷鳴』と『鋼鉄の壁』のリーダーは続行すると言っている。
『草原の風』のリーダーは反対の様だが、続行ならそれに従うと言っている。
ヴァンは続行を支持し、セロもそれに賛成。この仕事は続行する事になった。
尚、襲撃について知っていた商人はフェルナンドのみで、他の商人達は何も知らずに臨時で商会に雇われた者ばかりだった。中には怒りフェルナンドを罵る者もいたが、それ以上は冒険者達が引き留めた。
次の日から同じ様に移動を行い商隊は順調に進み、予定通り中継地の街ルーシェンに到着した。
この街はマルダとセイランを結ぶ街だが、かなり規模が大きい。
周辺は農耕地で、長閑な風景が広がっている。
街はメインの大通りが一つ。そこに主要な施設が全て揃っていた。
ここで食料の補給を行いマルダへと向かう。
私達は宿に入り一日休暇だ。
とはいえ、特にやるべき事はない。
本当に身体を休めるだけなる。
部屋割りについてはパーティ毎になっていた。
荷物を部屋に運んでベッドに腰掛ける。
みんな歩き通しだったからか、柔らかいベッドの心地を楽しんでいた。
時間は昼過ぎ、明日一日は自由行動になる。
「お母さん、街を見に行こうよ!」
「行ってきていいかしら?」
「いいよ。僕達はここで休んでるから、夕食までには戻ってきて」
「はーい!」
セロに確認をとって二人で出かける事にした。
装備は外して二人で街を散策する。
ここは牧畜も行っていて、地球の牛よりも大きなヴァーシュという牛が飼われていた。
芽依は柵の側まで走って行って牛を見ている。
私もそれに続いて柵の所に行く。
「お母さん、何かここの子達元気がないよ」
「あら、本当ね」
広い敷地の隅に集まって蹲っている。
「ねえ!どうしたのー?」
芽依が大声でヴァーシュ達に話しかけている。
近くを通った人が芽依を見て笑っているが気にする必要はない。
暫くすると一頭のヴァーシュがノソノソと歩いて来た。
『お前達人間には何を言っても分からんだろうが、近くに恐ろしい気配があるんだよ』
投げやりに言うヴァーシュ。
「それってどんな気配なの?」
『アンタ……俺の言う事が分かるのか?』
「うん!分かるよ。どんな気配なの?」
『とても大きな気配だよ。よく分からないけどここを狙っているんじゃないかってみんなで話していたんだよ』
それで寄り集まって蹲っていたのね。
私達が戦った森はここから随分と離れているし、カクカミやメトを呼び出したのも随分前だ。彼らの気配という事はないだろう。
「街の人達は何も気付いてないの?」
『アンタも話せるのか……多分気付いていない。人間達は暢気なもんだよ』
ヴァーシュは驚きながらも私の質問に答えてくれた。
街の人に話してみようと、牧場の管理者に話してみたが相手にしてくれなかった。
「むぅ……もう少し真剣に話を聞いてくれてもいいじゃない」
「仕方ないわ。『牛が大きな気配に怖がっている』なんて話しても信じてくれる人なんていないわよ」
一応ヴァン達にも相談しておく事にした。
「ありがとう、颯太、カクカミ、メト」
「うん。またいつでも呼んで」
『ハル様のお力になれて光栄です』
3人を送還した。
「で、どうするよ?今回の依頼、続けなくてもいいんじゃねえか?」
『草原の風』のリーダー、ロディが言う。
商会の者が盗賊団と手を組んでいたのなら、この依頼は不履行だ。破棄しても良い。
「このまま引き返しても問題はないだろうな。依頼については依頼主側の違反による破棄。報酬も全額出る筈だ。しかし、物資を必要としているのは商会ではない。民が困らない為にも、この依頼は続行すべきじゃないだろうか?」
ヴァンは全員に言っている。
「確かにな。俺は続行でいいぞ」
「右に同じだ。今更帰るのは納得がいかない」
『雷鳴』と『鋼鉄の壁』のリーダーは続行すると言っている。
『草原の風』のリーダーは反対の様だが、続行ならそれに従うと言っている。
ヴァンは続行を支持し、セロもそれに賛成。この仕事は続行する事になった。
尚、襲撃について知っていた商人はフェルナンドのみで、他の商人達は何も知らずに臨時で商会に雇われた者ばかりだった。中には怒りフェルナンドを罵る者もいたが、それ以上は冒険者達が引き留めた。
次の日から同じ様に移動を行い商隊は順調に進み、予定通り中継地の街ルーシェンに到着した。
この街はマルダとセイランを結ぶ街だが、かなり規模が大きい。
周辺は農耕地で、長閑な風景が広がっている。
街はメインの大通りが一つ。そこに主要な施設が全て揃っていた。
ここで食料の補給を行いマルダへと向かう。
私達は宿に入り一日休暇だ。
とはいえ、特にやるべき事はない。
本当に身体を休めるだけなる。
部屋割りについてはパーティ毎になっていた。
荷物を部屋に運んでベッドに腰掛ける。
みんな歩き通しだったからか、柔らかいベッドの心地を楽しんでいた。
時間は昼過ぎ、明日一日は自由行動になる。
「お母さん、街を見に行こうよ!」
「行ってきていいかしら?」
「いいよ。僕達はここで休んでるから、夕食までには戻ってきて」
「はーい!」
セロに確認をとって二人で出かける事にした。
装備は外して二人で街を散策する。
ここは牧畜も行っていて、地球の牛よりも大きなヴァーシュという牛が飼われていた。
芽依は柵の側まで走って行って牛を見ている。
私もそれに続いて柵の所に行く。
「お母さん、何かここの子達元気がないよ」
「あら、本当ね」
広い敷地の隅に集まって蹲っている。
「ねえ!どうしたのー?」
芽依が大声でヴァーシュ達に話しかけている。
近くを通った人が芽依を見て笑っているが気にする必要はない。
暫くすると一頭のヴァーシュがノソノソと歩いて来た。
『お前達人間には何を言っても分からんだろうが、近くに恐ろしい気配があるんだよ』
投げやりに言うヴァーシュ。
「それってどんな気配なの?」
『アンタ……俺の言う事が分かるのか?』
「うん!分かるよ。どんな気配なの?」
『とても大きな気配だよ。よく分からないけどここを狙っているんじゃないかってみんなで話していたんだよ』
それで寄り集まって蹲っていたのね。
私達が戦った森はここから随分と離れているし、カクカミやメトを呼び出したのも随分前だ。彼らの気配という事はないだろう。
「街の人達は何も気付いてないの?」
『アンタも話せるのか……多分気付いていない。人間達は暢気なもんだよ』
ヴァーシュは驚きながらも私の質問に答えてくれた。
街の人に話してみようと、牧場の管理者に話してみたが相手にしてくれなかった。
「むぅ……もう少し真剣に話を聞いてくれてもいいじゃない」
「仕方ないわ。『牛が大きな気配に怖がっている』なんて話しても信じてくれる人なんていないわよ」
一応ヴァン達にも相談しておく事にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
433
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる