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冒険者
策略
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「この隊にいる共犯者の名前をあなたの口から言いなさい」
「それは……」
「言いたくないなら私が言っても良いのですよ」
フェルナンドの目が泳ぐ。
視線を追うとレイルとロッシュを見ていた。
やはり彼らか。
「二人には何をやらせていたのです?」
真っ直ぐ見つめながら訊くと、目を見開いて震え出した。呼吸は早くなり汗を吹き出している。
一方レイルとロッシュは皆より少し離れた所で顔を青くしながら何やら小声で話をしていた。
「何だ?お前らどこに行く気だ?」
たじろいでいる二人の後ろに『鋼鉄の壁』のリーダーが現れて肩を掴む。
「……その二人は盗賊団の間者だ」
「テメェ!裏切んのかよ!」
「ぶち殺すぞ!」
分かりやすい脅し文句を並べ立てる二人。
「すまねえ、俺の落ち度だ。その二人は偵察の得意な奴を探していて、今回の仕事の前に合流した。能力査定は行なったが素性については冒険者証を確認しただけだ」
「おいおい……ロディよ、随分適当じゃないか」
「ウチみてぇな評判の悪りぃパーティは審査を厳しくすると誰も来ねえんだよ」
『草原の風』のリーダー、ロディが『雷鳴』のリーダーに説明している。
さて、それでは二人からも話を聞かせてもらおう。
「あなた達は何故、毎夜私達のテントを見に来ていたの?」
「……んだよ、気付いてたのかよ」
「ええ。初日からずっとだったわね」
「お前らは捕まえれば高く売れそうだったからな。値踏みしてただけだぜ」
そう言って不敵に笑うレイル。
他に何か仕掛けて来ようとしていたのかも知れないが、言っている事は大凡間違ってはいないだろう。
「スマンな。コイツらは俺が始末しよう」
「いえ、彼らもフェルナンドと同じく様に役人に突き出すべきです」
ここで殺すより何か情報が得られるかも知れない。
何となくだけど商人と盗賊団だけで仕組んだ事ではない気がする。
三人から武器になる様な物は全て没収して、ある程度自由を奪う様に手足に縄をつないでおく。この状態でルーシェンまで歩かせる事になった。
今更野営地に戻るのも手間だったので、このまま泉まで移動し、盗賊団が泉の水に何かしていないかを確認して、ここで野営する事になった。
私達は夕食を手早く作って全員に配り、テント設営して休む事にする。
その夜、見張りに立っていた冒険者達が騒ぎ出すのを聞いて起きると、カクカミとメトを伴った颯太が泉にやって来ていた。私と芽依は急いで見張のところへ向かう。
「彼らは私の家族、眷属です。盗賊団の追撃と殲滅を頼んでいました」
「そ、そうなのか……」
カクカミとメトの巨体に圧倒され、戦う事も出来ずに立ち尽くす冒険者に説明した。
他の冒険者達も飛び起きて来たので同じ様に説明して落ち着かせる。
リーダー達は私達と共に話を聞く事にした様なので、三人を紹介しておいた。
「母さん全員始末したよ。それで気になったのは、盗賊の割には装備が整いすぎてないかな?」
颯太が調べた結果を説明してくれる。
彼らの殆どが同じ製造元の長剣を使っていた。防具も森に紛れるために色を着けたり木の葉で擬装してはいたが、どうやら殆ど同じ物らしい。
「一応幾つかは回収して来たから見てもらえるかな?」
颯太が合図すると、カクカミとメトが盗賊から奪った長剣と鎧を地面に置く。
「コイツは……駐屯兵団の払い下げ品じゃないか」
「フェルナンドの所の商会が手配したのか?」
「いや、奴の所は軍の装備は扱っていない筈だ。セイランの街に横流しをしている者が他にいるか、あるいは──」
「兵団が直接関わっているか、だな」
冒険者は兵団と同じく周辺の治安維持に貢献している存在のはずだ。
それを態々排除しようとするとは思えないのだが……何か理由があるのだろうか?
「それは……」
「言いたくないなら私が言っても良いのですよ」
フェルナンドの目が泳ぐ。
視線を追うとレイルとロッシュを見ていた。
やはり彼らか。
「二人には何をやらせていたのです?」
真っ直ぐ見つめながら訊くと、目を見開いて震え出した。呼吸は早くなり汗を吹き出している。
一方レイルとロッシュは皆より少し離れた所で顔を青くしながら何やら小声で話をしていた。
「何だ?お前らどこに行く気だ?」
たじろいでいる二人の後ろに『鋼鉄の壁』のリーダーが現れて肩を掴む。
「……その二人は盗賊団の間者だ」
「テメェ!裏切んのかよ!」
「ぶち殺すぞ!」
分かりやすい脅し文句を並べ立てる二人。
「すまねえ、俺の落ち度だ。その二人は偵察の得意な奴を探していて、今回の仕事の前に合流した。能力査定は行なったが素性については冒険者証を確認しただけだ」
「おいおい……ロディよ、随分適当じゃないか」
「ウチみてぇな評判の悪りぃパーティは審査を厳しくすると誰も来ねえんだよ」
『草原の風』のリーダー、ロディが『雷鳴』のリーダーに説明している。
さて、それでは二人からも話を聞かせてもらおう。
「あなた達は何故、毎夜私達のテントを見に来ていたの?」
「……んだよ、気付いてたのかよ」
「ええ。初日からずっとだったわね」
「お前らは捕まえれば高く売れそうだったからな。値踏みしてただけだぜ」
そう言って不敵に笑うレイル。
他に何か仕掛けて来ようとしていたのかも知れないが、言っている事は大凡間違ってはいないだろう。
「スマンな。コイツらは俺が始末しよう」
「いえ、彼らもフェルナンドと同じく様に役人に突き出すべきです」
ここで殺すより何か情報が得られるかも知れない。
何となくだけど商人と盗賊団だけで仕組んだ事ではない気がする。
三人から武器になる様な物は全て没収して、ある程度自由を奪う様に手足に縄をつないでおく。この状態でルーシェンまで歩かせる事になった。
今更野営地に戻るのも手間だったので、このまま泉まで移動し、盗賊団が泉の水に何かしていないかを確認して、ここで野営する事になった。
私達は夕食を手早く作って全員に配り、テント設営して休む事にする。
その夜、見張りに立っていた冒険者達が騒ぎ出すのを聞いて起きると、カクカミとメトを伴った颯太が泉にやって来ていた。私と芽依は急いで見張のところへ向かう。
「彼らは私の家族、眷属です。盗賊団の追撃と殲滅を頼んでいました」
「そ、そうなのか……」
カクカミとメトの巨体に圧倒され、戦う事も出来ずに立ち尽くす冒険者に説明した。
他の冒険者達も飛び起きて来たので同じ様に説明して落ち着かせる。
リーダー達は私達と共に話を聞く事にした様なので、三人を紹介しておいた。
「母さん全員始末したよ。それで気になったのは、盗賊の割には装備が整いすぎてないかな?」
颯太が調べた結果を説明してくれる。
彼らの殆どが同じ製造元の長剣を使っていた。防具も森に紛れるために色を着けたり木の葉で擬装してはいたが、どうやら殆ど同じ物らしい。
「一応幾つかは回収して来たから見てもらえるかな?」
颯太が合図すると、カクカミとメトが盗賊から奪った長剣と鎧を地面に置く。
「コイツは……駐屯兵団の払い下げ品じゃないか」
「フェルナンドの所の商会が手配したのか?」
「いや、奴の所は軍の装備は扱っていない筈だ。セイランの街に横流しをしている者が他にいるか、あるいは──」
「兵団が直接関わっているか、だな」
冒険者は兵団と同じく周辺の治安維持に貢献している存在のはずだ。
それを態々排除しようとするとは思えないのだが……何か理由があるのだろうか?
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