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冒険者
一日目
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商隊の馬車は全部で七台。その内一台は商人達の生活物資が詰め込まれている。冒険者の食料を積んだ馬車を含めて八台だ。冒険者用の馬車は御者のできる者が交代で操るそうだ。
冒険者のパーティについて。
私達以外のチームはみんな名前が付いていた。
ヴァンをリーダーとする金級パーティ『竜の爪』七人。
防衛戦が得意で重装備の戦士ばかりの『鋼鉄の壁』六人。
軽装戦士と弓使いのパーティ『草原の風』八人。
攻守のバランスの取れた『雷鳴』六人。
ここに私達が加わって三十二人が護衛する。
商隊の商人は十六人、全員がそれぞれの馬車に乗り込んでいる。
冒険者は基本的には徒歩で移動。出発時の荷物はセイラン近郊で採れた物や加工品が大半。それから取引用の貨幣を積んでいる。
護衛の陣形はヴァンが指示した通り、全員が配置について移動開始。
私達は『草原の風』の索敵二人と共に後方の警戒だ。
「お前らみたいな雑魚が商隊の護衛に来て役に立つと思ってんの?」
移動開始から半日、そう言ってきたのは索敵の一人レイル。彼は弓使いで遠目が効くらしい。
「アイツらの代役を立てるにしても、もう少しマシなのがいたっしょ。精々雑用か囮くらいにしか使えねーじゃん」
もう一人の索敵はロッシュ。腰に二本の短剣と沢山の投げナイフを装備した男だ。
二人とも十五、六の少年。
「すみません。邪魔にならない様に気を付けます」
「それだけで報酬をもらおうなんて図々しくない?」
セロが言うと畳み掛ける様に言ってくるレイル。
「剣の腕なら負けないよ。護衛は素人でも戦闘なら役に立つんだから!」
堪らず芽依が言い返す。
「へぇ、そうなの。じゃあ何か来たら真っ先に前に出てよね」
「分かりました!」
売り言葉に買い言葉、馬鹿にした様に言うロッシュに力を込めて返事をする芽依。
「芽依、彼らの言う事も間違ってはいないのよ。私達は護衛任務をする様な冒険者じゃない。嫌味を言われても仕方のない立場なのよ」
「でも…!」
「へぇ、そっちのお嬢さんは分かってるじゃん。君らの役割は野営の時の食事の準備くらいじゃない?あとは夜の世話くらい?」
そう言いながらレイルは歩く私のそばに来て髪を触ろうとする。
私はその手を掴んで彼の目をじっと見つめる。
レイルは驚きの表情を浮かべた後、ニヤリと笑った。
「よそ見をしていると襲撃に気付けませんよ」
「こんなセイランの近くで襲われる事なんて無いよ。君の髪、綺麗だね。良いトコのお嬢様なのかな?」
掴んだ腕を振り解こうとしているけど、レイルは私の手を引き離せずにいる。
いや、そんな事より……
「お母さんに触るな!」
芽依が走ってきてレイルの背中を蹴り飛ばす。
「痛ってぇ……何しやがる!」
「それはコッチの台詞だよ!汚い手でお母さんに触るな!」
芽依を睨みつけるレイル。
喧嘩は流石に良くないわ。
「やめなさい。敵が近くに来ているわ」
「え?」
「まさかそんな……」
レイルは周囲を見渡す。
私は《遠隔視野》を使って既に見つけていた不審者のいる方を指し示す。
「数は十二。風貌からして野盗の類だと思います」
「この距離で振り向きもせずにどうやって気付いたんだよ?」
ロッシュが聞いてくるがそれを説明するのは億劫だ。
野盗がいるのは私達の後方の丘だ。距離もかなりある為そちらをセロ達が見ているが視認できていない。
「あれは私達の様子を見ている感じね。斥候なのかしら」
「聞けよ。どうやったんだって」
「それは今話し合う事じゃありません。リーダーにどうするか聞くのが先でしょう?」
「分かったよ!」
ロッシュは前方にいるヴァンの所へと走って行った。
冒険者のパーティについて。
私達以外のチームはみんな名前が付いていた。
ヴァンをリーダーとする金級パーティ『竜の爪』七人。
防衛戦が得意で重装備の戦士ばかりの『鋼鉄の壁』六人。
軽装戦士と弓使いのパーティ『草原の風』八人。
攻守のバランスの取れた『雷鳴』六人。
ここに私達が加わって三十二人が護衛する。
商隊の商人は十六人、全員がそれぞれの馬車に乗り込んでいる。
冒険者は基本的には徒歩で移動。出発時の荷物はセイラン近郊で採れた物や加工品が大半。それから取引用の貨幣を積んでいる。
護衛の陣形はヴァンが指示した通り、全員が配置について移動開始。
私達は『草原の風』の索敵二人と共に後方の警戒だ。
「お前らみたいな雑魚が商隊の護衛に来て役に立つと思ってんの?」
移動開始から半日、そう言ってきたのは索敵の一人レイル。彼は弓使いで遠目が効くらしい。
「アイツらの代役を立てるにしても、もう少しマシなのがいたっしょ。精々雑用か囮くらいにしか使えねーじゃん」
もう一人の索敵はロッシュ。腰に二本の短剣と沢山の投げナイフを装備した男だ。
二人とも十五、六の少年。
「すみません。邪魔にならない様に気を付けます」
「それだけで報酬をもらおうなんて図々しくない?」
セロが言うと畳み掛ける様に言ってくるレイル。
「剣の腕なら負けないよ。護衛は素人でも戦闘なら役に立つんだから!」
堪らず芽依が言い返す。
「へぇ、そうなの。じゃあ何か来たら真っ先に前に出てよね」
「分かりました!」
売り言葉に買い言葉、馬鹿にした様に言うロッシュに力を込めて返事をする芽依。
「芽依、彼らの言う事も間違ってはいないのよ。私達は護衛任務をする様な冒険者じゃない。嫌味を言われても仕方のない立場なのよ」
「でも…!」
「へぇ、そっちのお嬢さんは分かってるじゃん。君らの役割は野営の時の食事の準備くらいじゃない?あとは夜の世話くらい?」
そう言いながらレイルは歩く私のそばに来て髪を触ろうとする。
私はその手を掴んで彼の目をじっと見つめる。
レイルは驚きの表情を浮かべた後、ニヤリと笑った。
「よそ見をしていると襲撃に気付けませんよ」
「こんなセイランの近くで襲われる事なんて無いよ。君の髪、綺麗だね。良いトコのお嬢様なのかな?」
掴んだ腕を振り解こうとしているけど、レイルは私の手を引き離せずにいる。
いや、そんな事より……
「お母さんに触るな!」
芽依が走ってきてレイルの背中を蹴り飛ばす。
「痛ってぇ……何しやがる!」
「それはコッチの台詞だよ!汚い手でお母さんに触るな!」
芽依を睨みつけるレイル。
喧嘩は流石に良くないわ。
「やめなさい。敵が近くに来ているわ」
「え?」
「まさかそんな……」
レイルは周囲を見渡す。
私は《遠隔視野》を使って既に見つけていた不審者のいる方を指し示す。
「数は十二。風貌からして野盗の類だと思います」
「この距離で振り向きもせずにどうやって気付いたんだよ?」
ロッシュが聞いてくるがそれを説明するのは億劫だ。
野盗がいるのは私達の後方の丘だ。距離もかなりある為そちらをセロ達が見ているが視認できていない。
「あれは私達の様子を見ている感じね。斥候なのかしら」
「聞けよ。どうやったんだって」
「それは今話し合う事じゃありません。リーダーにどうするか聞くのが先でしょう?」
「分かったよ!」
ロッシュは前方にいるヴァンの所へと走って行った。
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