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冒険者
商隊護衛任務
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「トーマス、まさかコイツらに代わりをさせようってのか?」
「彼らを遇らう程の実力者なら出来るんじゃないですかね?」
バルドルは商隊護衛を私達にやらせる事に反対だ。
護衛任務なんて私と芽依はやった事はないし、ましてや商隊となると危険度は高いのだろう。ノウハウのない私達が務まるとは思えないが。
「僕の担当から代役が出せないのです。この子達が駄目なら他のバルドルさんの担当から代役を立ててください」
「俺の所も商隊護衛ができる奴は出せねえよ。全員他の仕事をやってる」
ならば他のギルド員に応援を要請すればいいのではないかと思うが、それが容易に出来ない理由でもあるのだろう。
「それってバルドルさんの許可があれば私達でもやっていいの?」
そう聞いたのは芽依だった。
「そりゃあお前達二人なら戦闘力は申し分ないだろう。でも長期間の護衛任務ってのはそれだけじゃあ務まらねえんだ」
「しかし、高い戦闘力があるならいいのではないですか?彼女一人で五人の男を一瞬で戦闘不能にしてしまったのでしょう?」
トーマスは私達に商隊護衛をやらせたい様だ。それにどんな意図があるのかは分からないが……
「仕方ねえ……ハル、お前もやれるか?」
「芽依がやると言うならやりますよ」
「私は勿論やるよ!」
そう、私達はまだ正式なパーティ登録をしていない。なのでセロ達を巻き込まずに済むだろう。
「俺達も一緒に行ってもいいですか?」
「なに?お前らはいいだろう?」
「俺達、さっきハルさんとメイさんをパーティに加えるって決めたんです。まだ正式なメンバーではないけど、既に二回一緒に仕事をしています」
セロが言う事にリンとミラは大きく頷いていた。
「……ったく、分かった。それじゃあハルとメイをセロのパーティに追加しておく。それからハルとメイは昇格だ。ギルド証を出せ」
バルドルがセロの熱意に折れて、私達と一緒に商隊護衛の仕事をする事を認めてくれた。
私と芽依は首に掛けていた冒険者証を外してバルドルに預ける。
「ちょっと待ってろ。冒険者証を作り変えてくる」
そう言って受付の奥に行ってしまった。
「良かったのですか?」
「いいも何も、俺達はもうパーティなんだから」
そう言って笑うセロ。
「君達、よく決意したね。商隊護衛は明日出発だから今日しっかりと準備をして明日に備えるんだよ」
「はい!」
元気良く返事をする芽依。それを見て笑顔を浮かべるトーマス。
人が良さそうに見えるがこの男は油断ならない。目の奥に鋭さがある。その視線を芽依に向け、私にも向けてきたが、目が合うと取り繕う様により一層笑顔になった。
何かを企んでいるのかも知れない。この仕事、気を付けていこう。
「待たせたな!新しい冒険者証だ」
バルドルが戻ってきて手渡してくれたのは前と同じ楕円形の鉄製のプレートだった。
「今日からお前達は鉄級冒険者だ。そしてセロのパーティに入ったから俺がお前達の担当になる」
「宜しくお願いします」
「お願いします!」
二人でお辞儀をするとバルドルは怪訝な顔をする。
「てっきり嫌がると思ったんだが」
「前もって聞いていましたし、バルドルさんの事が嫌いな訳ではありませんので」
「私はリフィナさんの方が良かったけどね」
「ハッキリ言いやがって……まあいい。商隊護衛について詳しく説明するから場所を変えるぞ」
そう言ってバルドルはいつも行かない奥の通路に向かう。
五人でついていくと、着いたのは応接室の様なところだった。
「ホールで話せない様な事は個室でする事になっているからな」
「なんでホールで話せないの?」
「これから話すのは商隊の移動スケジュールだ。誰でも出入りできるホールに襲撃者の斥候がいたら情報が漏れちまうだろ」
確かにその通りだ。
「彼らを遇らう程の実力者なら出来るんじゃないですかね?」
バルドルは商隊護衛を私達にやらせる事に反対だ。
護衛任務なんて私と芽依はやった事はないし、ましてや商隊となると危険度は高いのだろう。ノウハウのない私達が務まるとは思えないが。
「僕の担当から代役が出せないのです。この子達が駄目なら他のバルドルさんの担当から代役を立ててください」
「俺の所も商隊護衛ができる奴は出せねえよ。全員他の仕事をやってる」
ならば他のギルド員に応援を要請すればいいのではないかと思うが、それが容易に出来ない理由でもあるのだろう。
「それってバルドルさんの許可があれば私達でもやっていいの?」
そう聞いたのは芽依だった。
「そりゃあお前達二人なら戦闘力は申し分ないだろう。でも長期間の護衛任務ってのはそれだけじゃあ務まらねえんだ」
「しかし、高い戦闘力があるならいいのではないですか?彼女一人で五人の男を一瞬で戦闘不能にしてしまったのでしょう?」
トーマスは私達に商隊護衛をやらせたい様だ。それにどんな意図があるのかは分からないが……
「仕方ねえ……ハル、お前もやれるか?」
「芽依がやると言うならやりますよ」
「私は勿論やるよ!」
そう、私達はまだ正式なパーティ登録をしていない。なのでセロ達を巻き込まずに済むだろう。
「俺達も一緒に行ってもいいですか?」
「なに?お前らはいいだろう?」
「俺達、さっきハルさんとメイさんをパーティに加えるって決めたんです。まだ正式なメンバーではないけど、既に二回一緒に仕事をしています」
セロが言う事にリンとミラは大きく頷いていた。
「……ったく、分かった。それじゃあハルとメイをセロのパーティに追加しておく。それからハルとメイは昇格だ。ギルド証を出せ」
バルドルがセロの熱意に折れて、私達と一緒に商隊護衛の仕事をする事を認めてくれた。
私と芽依は首に掛けていた冒険者証を外してバルドルに預ける。
「ちょっと待ってろ。冒険者証を作り変えてくる」
そう言って受付の奥に行ってしまった。
「良かったのですか?」
「いいも何も、俺達はもうパーティなんだから」
そう言って笑うセロ。
「君達、よく決意したね。商隊護衛は明日出発だから今日しっかりと準備をして明日に備えるんだよ」
「はい!」
元気良く返事をする芽依。それを見て笑顔を浮かべるトーマス。
人が良さそうに見えるがこの男は油断ならない。目の奥に鋭さがある。その視線を芽依に向け、私にも向けてきたが、目が合うと取り繕う様により一層笑顔になった。
何かを企んでいるのかも知れない。この仕事、気を付けていこう。
「待たせたな!新しい冒険者証だ」
バルドルが戻ってきて手渡してくれたのは前と同じ楕円形の鉄製のプレートだった。
「今日からお前達は鉄級冒険者だ。そしてセロのパーティに入ったから俺がお前達の担当になる」
「宜しくお願いします」
「お願いします!」
二人でお辞儀をするとバルドルは怪訝な顔をする。
「てっきり嫌がると思ったんだが」
「前もって聞いていましたし、バルドルさんの事が嫌いな訳ではありませんので」
「私はリフィナさんの方が良かったけどね」
「ハッキリ言いやがって……まあいい。商隊護衛について詳しく説明するから場所を変えるぞ」
そう言ってバルドルはいつも行かない奥の通路に向かう。
五人でついていくと、着いたのは応接室の様なところだった。
「ホールで話せない様な事は個室でする事になっているからな」
「なんでホールで話せないの?」
「これから話すのは商隊の移動スケジュールだ。誰でも出入りできるホールに襲撃者の斥候がいたら情報が漏れちまうだろ」
確かにその通りだ。
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