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冒険者
昇格
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パーティというのはギルドに登録しておくものらしく、最低人数は三人。
登録は任意で、登録しておけばギルドから指名依頼を受けられるという利点がある。
指名依頼には自由要請と緊急要請の二種類があり、緊急要請の方は強制的に仕事をしなければならなくなる代わりに報酬も高額だ。
拘束力が発生する分不便ではないかと思ったが、良い仕事は早い者勝ちになっている為パーティ登録をして担当ギルド員から斡旋を受ける方が良いそうだ。
「早い者勝ちなら早起きして朝一でギルドに来れば良いんじゃない?」
「仕事の募集はギルド員が自分の担当パーティに斡旋する為にキープしてしまうんだよ。だからフリーだと良い仕事はまず回って来ないんだ」
私達は最低ランクだったから気にならなかったけど、その形式だとパーティを組んでいないと不利ね。
「セロさん達の担当ってどなた?」
「バルドルさんだよ」
「バルドルさんかぁ……」
芽依はため息混じりに呟いた。口にはしないが私も芽依と同じ心境だ。
「バルドルさんと何かあったの?」
「うん。実は……」
芽依が冒険者登録の際の能力査定でバルドルと模擬戦をした事を話す。
「──で、勝ったんだけど、気まずくて……」
「えぇっ!?バルドルさんに勝った!?」
「ウルゼイドの剣術大会準優勝者ならあり得ますね……」
リンとミラがそれぞれの反応を示している。
「あ、でもお酒飲んでたので全力じゃなかったと思いますよ」
「いやいや、それでも凄えよ。バルドルってあの暴風のバルドルだろ?現役時代は一人で三十人以上いるの盗賊団を一夜で壊滅させたっていう……」
ハンクが顔を痙攣らせながら言っている。
バルドルには暴風なんて通り名が付いていたのね。
芽依が戦った時『風を起こすのが得意』とか煽っていたけど、間違ってはいなかったみたいね。
芽依も同じ事を考えていたのか、目が笑っていた。
「バルドルさんは酒癖が悪いだけで悪い人ではないよ。俺達も結構世話になってるんだ」
「私達が加入するって言ったらどんな反応をするかしら」
セロの言う通り、仕事ぶりは確かなのは分かったが心象は良くないだろう。それがどう影響するかは心配だ。
「戦力が増えたって喜ぶと思うよ。確か今の時間はギルドにいる筈だから今から行ってみない?」
リンの提案で今からギルドへ行く事になった。
ハンクに礼を言い鍛冶屋を後にする。
時間はまだ昼下がり。太陽も出ていて心地良い陽気だ。特に急ぐ訳でもないので露店で何か食べてからギルドに向かう事になった。
セロ達が良く行く串焼きの露店に案内してもらいそこで芽依と一本ずつ肉の串焼きを買って食べてみる。
ほんのりと辛いタレが塗ってあり、肉も鮮度が良くて食べやすい。一本の量もかなりあるので、一本二十エルズなら安いと思う。
お腹も落ち着いた所でギルドに向かう。
もう少しで到着という所で、昨日の背の高い男が正面からやってくるのが見えた。後ろに四人の男を連れている。
「昨日の人だ。どうする?」
「今から後戻っても不自然だしこのまま進もう」
芽依が聞くとセロは緊張した様子で言う。
「よお。セロ」
「こんにちは。剣なら売りませんよ」
「分かってる。今日はお前に用事は無ぇんだ」
セロを一瞥してやって来たのは私の目の前。芽依が男との間に立とうとするけど手を繋いで引き留めた。
何の用かしら?
「お前、俺達のパーティに来い。新米でもそれだけの回復魔法が使えるなら充分役に立つ」
「折角のお誘いを悪いのですが、私はもうセロさんのパーティに加入すると決めているので」
「俺は誘ってるんじゃあねえ。来いって言ってるんだ」
そう言って私の腕を乱暴に掴む。
「お母さん!」
「芽依、大丈夫よ。任せて」
この男には少し礼儀を教えておきましょう。
登録は任意で、登録しておけばギルドから指名依頼を受けられるという利点がある。
指名依頼には自由要請と緊急要請の二種類があり、緊急要請の方は強制的に仕事をしなければならなくなる代わりに報酬も高額だ。
拘束力が発生する分不便ではないかと思ったが、良い仕事は早い者勝ちになっている為パーティ登録をして担当ギルド員から斡旋を受ける方が良いそうだ。
「早い者勝ちなら早起きして朝一でギルドに来れば良いんじゃない?」
「仕事の募集はギルド員が自分の担当パーティに斡旋する為にキープしてしまうんだよ。だからフリーだと良い仕事はまず回って来ないんだ」
私達は最低ランクだったから気にならなかったけど、その形式だとパーティを組んでいないと不利ね。
「セロさん達の担当ってどなた?」
「バルドルさんだよ」
「バルドルさんかぁ……」
芽依はため息混じりに呟いた。口にはしないが私も芽依と同じ心境だ。
「バルドルさんと何かあったの?」
「うん。実は……」
芽依が冒険者登録の際の能力査定でバルドルと模擬戦をした事を話す。
「──で、勝ったんだけど、気まずくて……」
「えぇっ!?バルドルさんに勝った!?」
「ウルゼイドの剣術大会準優勝者ならあり得ますね……」
リンとミラがそれぞれの反応を示している。
「あ、でもお酒飲んでたので全力じゃなかったと思いますよ」
「いやいや、それでも凄えよ。バルドルってあの暴風のバルドルだろ?現役時代は一人で三十人以上いるの盗賊団を一夜で壊滅させたっていう……」
ハンクが顔を痙攣らせながら言っている。
バルドルには暴風なんて通り名が付いていたのね。
芽依が戦った時『風を起こすのが得意』とか煽っていたけど、間違ってはいなかったみたいね。
芽依も同じ事を考えていたのか、目が笑っていた。
「バルドルさんは酒癖が悪いだけで悪い人ではないよ。俺達も結構世話になってるんだ」
「私達が加入するって言ったらどんな反応をするかしら」
セロの言う通り、仕事ぶりは確かなのは分かったが心象は良くないだろう。それがどう影響するかは心配だ。
「戦力が増えたって喜ぶと思うよ。確か今の時間はギルドにいる筈だから今から行ってみない?」
リンの提案で今からギルドへ行く事になった。
ハンクに礼を言い鍛冶屋を後にする。
時間はまだ昼下がり。太陽も出ていて心地良い陽気だ。特に急ぐ訳でもないので露店で何か食べてからギルドに向かう事になった。
セロ達が良く行く串焼きの露店に案内してもらいそこで芽依と一本ずつ肉の串焼きを買って食べてみる。
ほんのりと辛いタレが塗ってあり、肉も鮮度が良くて食べやすい。一本の量もかなりあるので、一本二十エルズなら安いと思う。
お腹も落ち着いた所でギルドに向かう。
もう少しで到着という所で、昨日の背の高い男が正面からやってくるのが見えた。後ろに四人の男を連れている。
「昨日の人だ。どうする?」
「今から後戻っても不自然だしこのまま進もう」
芽依が聞くとセロは緊張した様子で言う。
「よお。セロ」
「こんにちは。剣なら売りませんよ」
「分かってる。今日はお前に用事は無ぇんだ」
セロを一瞥してやって来たのは私の目の前。芽依が男との間に立とうとするけど手を繋いで引き留めた。
何の用かしら?
「お前、俺達のパーティに来い。新米でもそれだけの回復魔法が使えるなら充分役に立つ」
「折角のお誘いを悪いのですが、私はもうセロさんのパーティに加入すると決めているので」
「俺は誘ってるんじゃあねえ。来いって言ってるんだ」
そう言って私の腕を乱暴に掴む。
「お母さん!」
「芽依、大丈夫よ。任せて」
この男には少し礼儀を教えておきましょう。
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