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冒険者
生活魔法
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ラティーシアの使った魔法は私の知らないものだった。
「人間の国では生活魔法と呼ばれているものです。ご存知ありませんか?」
「ええ。私達は魔族の国から来たので」
「宜しければお教えしますよ」
「いいのですか?」
「ええ。サービスです」
食器を片付けるとラティーシアはその場で魔法について教えてくれた。
「この魔法は精神集中が出来れば大抵の者が使えます。私の指示通りに魔法を構築してみてください」
ラティーシアの指示で魔力を練り上げていく。
この生活魔法というものは詠唱も必要としないものだ。
私達がカナエに教えてもらった適性のある属性の魔法発動と感覚は同じだ。とてもわかりやすい。
ラティーシアの指示通りに魔法を行使することができ、私も芽依も皿を綺麗にする魔法を成功させていた。
「やはり魔力の扱いがとてもお上手ですね。お二人とも生活魔法はすぐに覚えられますよ」
「ありがとう。ところでラティーシアさんはこの町の出身ではないのですか?」
少しラティーシアの事を聞いてみることにした。
「はい。何故ですか?」
「先程『人間の国では』と言われたので。詮索するつもりはないのですが……」
そうは言ったが彼女の人間離れした能力や振る舞いについて、確認しておいた方が良いと思う。
「私の国はここよりも遥か北の国にありまして、そこは既に魔物の軍勢に滅ぼされてしまいました」
「……ごめんなさい。失礼な事を」
「いえ、お気になさらないでください。これは紛れもない事実ですから」
大森林の北側にあった町もその集団に襲われて滅ぼされてしまったのだろう。
彼らについてもっと知っておいた方が良いかも知れない。
「ラティーシアさん、辛い事を思い出させて申し訳ないのですが、魔物の軍勢について知っている事を詳しく教えていただけませんか?」
「彼らは魔竜と呼ばれる者を頂点とした魔物の国です。従わない者は容赦無く殺す者達でした。私の国で脱出出来たのは僅かでした」
彼らは始めに警告に来るらしい。
『降伏すれば半数は生かす』と言ってきたそうだ。
全員の命の保証はしない。
「そんな事を言われたら素直に降伏なんて出来ません。我々は彼らと戦う道を選び、結果滅びました」
そう言う彼女に表情は無い。
「ありがとうございます。辛い事を思い出させてしまい申し訳ありません」
「いえ、大丈夫です。それでは私は食器を片付けてきますので」
ラティーシアはそう言って重ねてテーブルの隅に置かれていた食器を持って厨房へ戻っていく。
それを見送りながら考える。
彼女は人間では無いのではないか?
本人に確認できる雰囲気ではなかったので、今回は聞かないでおこう。
しかし魔竜率いる魔物の国か。
勢力を拡大している様だし、警戒しておかなければならないわね。
芽依と自室に戻ると、先ほど教えてもらった生活魔法を着ている服にかけてみた。
「スゴい!洗い立てみたいになったよ!」
「あら本当、ニオイも無いわ」
これはとても便利ね。
「これって私達にも掛けられるのかな?」
「試してみましょう」
互いに洗浄の魔法を掛け合ってみる。
「なんかスッキリした感じだよ」
「そうね。これならお湯を頼まなくても良くなるわね」
お風呂に入れないので髪が洗えない事を気にしていたのだが、この魔法があれば我慢できそうだ。
「でもお風呂に入りたいねお母さん」
「そうね。ウルゼイドの屋敷が懐かしいわ」
「ねー!」
魔族の町ではなに不自由ない生活をさせてもらっていたからね。
ラティーシアには便利な魔法を教えてもらって、魔竜の国の事も教えてもらった。
何かお礼をしたい所だが何か出来ないだろうか?
明日は鍛冶屋で戦利品の剣と盾を見て貰う。希少金属なら鋳潰して武器や防具に再加工するのも良いかもしれない。
「人間の国では生活魔法と呼ばれているものです。ご存知ありませんか?」
「ええ。私達は魔族の国から来たので」
「宜しければお教えしますよ」
「いいのですか?」
「ええ。サービスです」
食器を片付けるとラティーシアはその場で魔法について教えてくれた。
「この魔法は精神集中が出来れば大抵の者が使えます。私の指示通りに魔法を構築してみてください」
ラティーシアの指示で魔力を練り上げていく。
この生活魔法というものは詠唱も必要としないものだ。
私達がカナエに教えてもらった適性のある属性の魔法発動と感覚は同じだ。とてもわかりやすい。
ラティーシアの指示通りに魔法を行使することができ、私も芽依も皿を綺麗にする魔法を成功させていた。
「やはり魔力の扱いがとてもお上手ですね。お二人とも生活魔法はすぐに覚えられますよ」
「ありがとう。ところでラティーシアさんはこの町の出身ではないのですか?」
少しラティーシアの事を聞いてみることにした。
「はい。何故ですか?」
「先程『人間の国では』と言われたので。詮索するつもりはないのですが……」
そうは言ったが彼女の人間離れした能力や振る舞いについて、確認しておいた方が良いと思う。
「私の国はここよりも遥か北の国にありまして、そこは既に魔物の軍勢に滅ぼされてしまいました」
「……ごめんなさい。失礼な事を」
「いえ、お気になさらないでください。これは紛れもない事実ですから」
大森林の北側にあった町もその集団に襲われて滅ぼされてしまったのだろう。
彼らについてもっと知っておいた方が良いかも知れない。
「ラティーシアさん、辛い事を思い出させて申し訳ないのですが、魔物の軍勢について知っている事を詳しく教えていただけませんか?」
「彼らは魔竜と呼ばれる者を頂点とした魔物の国です。従わない者は容赦無く殺す者達でした。私の国で脱出出来たのは僅かでした」
彼らは始めに警告に来るらしい。
『降伏すれば半数は生かす』と言ってきたそうだ。
全員の命の保証はしない。
「そんな事を言われたら素直に降伏なんて出来ません。我々は彼らと戦う道を選び、結果滅びました」
そう言う彼女に表情は無い。
「ありがとうございます。辛い事を思い出させてしまい申し訳ありません」
「いえ、大丈夫です。それでは私は食器を片付けてきますので」
ラティーシアはそう言って重ねてテーブルの隅に置かれていた食器を持って厨房へ戻っていく。
それを見送りながら考える。
彼女は人間では無いのではないか?
本人に確認できる雰囲気ではなかったので、今回は聞かないでおこう。
しかし魔竜率いる魔物の国か。
勢力を拡大している様だし、警戒しておかなければならないわね。
芽依と自室に戻ると、先ほど教えてもらった生活魔法を着ている服にかけてみた。
「スゴい!洗い立てみたいになったよ!」
「あら本当、ニオイも無いわ」
これはとても便利ね。
「これって私達にも掛けられるのかな?」
「試してみましょう」
互いに洗浄の魔法を掛け合ってみる。
「なんかスッキリした感じだよ」
「そうね。これならお湯を頼まなくても良くなるわね」
お風呂に入れないので髪が洗えない事を気にしていたのだが、この魔法があれば我慢できそうだ。
「でもお風呂に入りたいねお母さん」
「そうね。ウルゼイドの屋敷が懐かしいわ」
「ねー!」
魔族の町ではなに不自由ない生活をさせてもらっていたからね。
ラティーシアには便利な魔法を教えてもらって、魔竜の国の事も教えてもらった。
何かお礼をしたい所だが何か出来ないだろうか?
明日は鍛冶屋で戦利品の剣と盾を見て貰う。希少金属なら鋳潰して武器や防具に再加工するのも良いかもしれない。
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