92 / 453
冒険者
旅の準備
しおりを挟む
私が決意を言う前に颯太が提案してくれた。
「母さん、たまにはのんびりしておいでよ。今まで森の事とか、そこに住むみんなの為に頑張ってきたじゃないか。休養だと思って芽依と旅をして来るといい」
「森は大丈夫かしら?」
「僕が残るし他のみんなと協力するから大丈夫。母さんの助けが必要になる様な事があったら呼びに行くよ」
「ありがとう。今回は颯太に甘えさせてもらおうかしら」
颯太は芽依の事も私の事も考えて言ってくれたのだろう。本当に優しい良い子だ。
パーティの終了後、帰りの馬車の中で芽依にその事を話すと泣きながら喜んでいた。
「お兄ちゃんありがとう……!」
「芽依は人間だから僕たちの様に長く生きられない。芽依が生きている間くらいは母さんが森を留守にしても大丈夫だよ」
芽依は隣に座る颯太に抱きついていた。
ジョゼットは注意しようとした様だけど、その嬉しそうな様子を見て目を瞑ってくれた。
「学校の手続きもあるから卒業は五日後。その間にイルザハーンが人間の国に移る準備をしておいてくれるわ。向こうに着いたら冒険者登録をしましょう」
「お母さんも冒険者になるの?」
ワクワクとした顔で芽依が聞いてくる。
「そうね……精霊でも冒険者になれるのかしら?」
「どうだろうね?なれるなら一緒に冒険者をやるのもいいんじゃないかな?」
「ええ。試してみるわ」
精霊が冒険者になった前例は無いだろう。まあ、なれなくとも芽依の手伝いは出来るだろうからどちらでも良い。
あれこれと考えていたら私も楽しみになって来た。
『私もお供させてもらえませんか?私がいた方が何かと便利でしょう』
馬車を引きながらギョクリュウが聞いてくる。
「駄目だよギョクリュウ。君は目立ち過ぎる。僕達と森で留守番だ」
「私ならいいですよね?小さいしメイ様とハル様の警護が必要でしょう?」
「カナエも駄目だよ。これはメイを自立させる為の旅になるのだから。君がいたら甘やかしてしまうだろう?」
本当は颯太が一番行きたいだろうに、皆を止めるために冷静を装っている。
「母さんも教職を辞するんだから学校に挨拶しないとね。明日からやる事は沢山あるよ」
「え、ええ……勿論分かっているわ」
息子がしっかり者で助かるわ。
次の日から、学校では後任者への引き継ぎやお世話になった先生方へ挨拶を。
芽依も卒業に向けて最後の試験を受けている。
帰ってからはイルザハーンから人間の国の事を教わり、2人で暮らしていける様に大切な事を学んでいる。
「人間の国の通貨はエルドね。魔族の国の通貨はレムズ。これが一エルド硬貨、これが五、十、二十五、百、五百、千……」
私達はウルゼイドで魔族の暮らしを学んで来たけど貨幣のやり取りはしていなかった。
アルザハーンとイルザハーンがここでの暮らしを全て用意してくれたお陰でお金に触れる事なく生活出来てしまっていた。
私は前世でお金を扱っていたのですぐに覚えられたが芽依は苦労していた。
「お金って面倒だね」
「でも、これでご飯を買ったりするのよ。大事な事だからしっかり覚えないとね」
「うん。覚えたけど、これをいっぱい持ち歩かなくちゃいけないんだよね。重いしかさ張るしヤだなぁ」
芽依は何でも覚えられるしすぐに慣れるわよ。計算は学校で習っているので問題は無いし、あとは騙されない様に気を付けないといけない。
残念ながら私も芽依も世間知らずだ。この先幾度か騙される事があるかもしれないが、それが致命的な事にならない様に気を付けていこうと思う。
定期的に颯太達と連絡がとれる様に準備もあった。
『お初にお目にかかります。私、ホワイトビークと申します。トコヤミ様の棲まう山に住まわせていただいております』
屋敷の庭に来て挨拶をしているのは翼幅が2メートルもある鷹に似た鳥だった。
「母さん、たまにはのんびりしておいでよ。今まで森の事とか、そこに住むみんなの為に頑張ってきたじゃないか。休養だと思って芽依と旅をして来るといい」
「森は大丈夫かしら?」
「僕が残るし他のみんなと協力するから大丈夫。母さんの助けが必要になる様な事があったら呼びに行くよ」
「ありがとう。今回は颯太に甘えさせてもらおうかしら」
颯太は芽依の事も私の事も考えて言ってくれたのだろう。本当に優しい良い子だ。
パーティの終了後、帰りの馬車の中で芽依にその事を話すと泣きながら喜んでいた。
「お兄ちゃんありがとう……!」
「芽依は人間だから僕たちの様に長く生きられない。芽依が生きている間くらいは母さんが森を留守にしても大丈夫だよ」
芽依は隣に座る颯太に抱きついていた。
ジョゼットは注意しようとした様だけど、その嬉しそうな様子を見て目を瞑ってくれた。
「学校の手続きもあるから卒業は五日後。その間にイルザハーンが人間の国に移る準備をしておいてくれるわ。向こうに着いたら冒険者登録をしましょう」
「お母さんも冒険者になるの?」
ワクワクとした顔で芽依が聞いてくる。
「そうね……精霊でも冒険者になれるのかしら?」
「どうだろうね?なれるなら一緒に冒険者をやるのもいいんじゃないかな?」
「ええ。試してみるわ」
精霊が冒険者になった前例は無いだろう。まあ、なれなくとも芽依の手伝いは出来るだろうからどちらでも良い。
あれこれと考えていたら私も楽しみになって来た。
『私もお供させてもらえませんか?私がいた方が何かと便利でしょう』
馬車を引きながらギョクリュウが聞いてくる。
「駄目だよギョクリュウ。君は目立ち過ぎる。僕達と森で留守番だ」
「私ならいいですよね?小さいしメイ様とハル様の警護が必要でしょう?」
「カナエも駄目だよ。これはメイを自立させる為の旅になるのだから。君がいたら甘やかしてしまうだろう?」
本当は颯太が一番行きたいだろうに、皆を止めるために冷静を装っている。
「母さんも教職を辞するんだから学校に挨拶しないとね。明日からやる事は沢山あるよ」
「え、ええ……勿論分かっているわ」
息子がしっかり者で助かるわ。
次の日から、学校では後任者への引き継ぎやお世話になった先生方へ挨拶を。
芽依も卒業に向けて最後の試験を受けている。
帰ってからはイルザハーンから人間の国の事を教わり、2人で暮らしていける様に大切な事を学んでいる。
「人間の国の通貨はエルドね。魔族の国の通貨はレムズ。これが一エルド硬貨、これが五、十、二十五、百、五百、千……」
私達はウルゼイドで魔族の暮らしを学んで来たけど貨幣のやり取りはしていなかった。
アルザハーンとイルザハーンがここでの暮らしを全て用意してくれたお陰でお金に触れる事なく生活出来てしまっていた。
私は前世でお金を扱っていたのですぐに覚えられたが芽依は苦労していた。
「お金って面倒だね」
「でも、これでご飯を買ったりするのよ。大事な事だからしっかり覚えないとね」
「うん。覚えたけど、これをいっぱい持ち歩かなくちゃいけないんだよね。重いしかさ張るしヤだなぁ」
芽依は何でも覚えられるしすぐに慣れるわよ。計算は学校で習っているので問題は無いし、あとは騙されない様に気を付けないといけない。
残念ながら私も芽依も世間知らずだ。この先幾度か騙される事があるかもしれないが、それが致命的な事にならない様に気を付けていこうと思う。
定期的に颯太達と連絡がとれる様に準備もあった。
『お初にお目にかかります。私、ホワイトビークと申します。トコヤミ様の棲まう山に住まわせていただいております』
屋敷の庭に来て挨拶をしているのは翼幅が2メートルもある鷹に似た鳥だった。
3
お気に入りに追加
434
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる