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冒険者
旅の準備
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私が決意を言う前に颯太が提案してくれた。
「母さん、たまにはのんびりしておいでよ。今まで森の事とか、そこに住むみんなの為に頑張ってきたじゃないか。休養だと思って芽依と旅をして来るといい」
「森は大丈夫かしら?」
「僕が残るし他のみんなと協力するから大丈夫。母さんの助けが必要になる様な事があったら呼びに行くよ」
「ありがとう。今回は颯太に甘えさせてもらおうかしら」
颯太は芽依の事も私の事も考えて言ってくれたのだろう。本当に優しい良い子だ。
パーティの終了後、帰りの馬車の中で芽依にその事を話すと泣きながら喜んでいた。
「お兄ちゃんありがとう……!」
「芽依は人間だから僕たちの様に長く生きられない。芽依が生きている間くらいは母さんが森を留守にしても大丈夫だよ」
芽依は隣に座る颯太に抱きついていた。
ジョゼットは注意しようとした様だけど、その嬉しそうな様子を見て目を瞑ってくれた。
「学校の手続きもあるから卒業は五日後。その間にイルザハーンが人間の国に移る準備をしておいてくれるわ。向こうに着いたら冒険者登録をしましょう」
「お母さんも冒険者になるの?」
ワクワクとした顔で芽依が聞いてくる。
「そうね……精霊でも冒険者になれるのかしら?」
「どうだろうね?なれるなら一緒に冒険者をやるのもいいんじゃないかな?」
「ええ。試してみるわ」
精霊が冒険者になった前例は無いだろう。まあ、なれなくとも芽依の手伝いは出来るだろうからどちらでも良い。
あれこれと考えていたら私も楽しみになって来た。
『私もお供させてもらえませんか?私がいた方が何かと便利でしょう』
馬車を引きながらギョクリュウが聞いてくる。
「駄目だよギョクリュウ。君は目立ち過ぎる。僕達と森で留守番だ」
「私ならいいですよね?小さいしメイ様とハル様の警護が必要でしょう?」
「カナエも駄目だよ。これはメイを自立させる為の旅になるのだから。君がいたら甘やかしてしまうだろう?」
本当は颯太が一番行きたいだろうに、皆を止めるために冷静を装っている。
「母さんも教職を辞するんだから学校に挨拶しないとね。明日からやる事は沢山あるよ」
「え、ええ……勿論分かっているわ」
息子がしっかり者で助かるわ。
次の日から、学校では後任者への引き継ぎやお世話になった先生方へ挨拶を。
芽依も卒業に向けて最後の試験を受けている。
帰ってからはイルザハーンから人間の国の事を教わり、2人で暮らしていける様に大切な事を学んでいる。
「人間の国の通貨はエルドね。魔族の国の通貨はレムズ。これが一エルド硬貨、これが五、十、二十五、百、五百、千……」
私達はウルゼイドで魔族の暮らしを学んで来たけど貨幣のやり取りはしていなかった。
アルザハーンとイルザハーンがここでの暮らしを全て用意してくれたお陰でお金に触れる事なく生活出来てしまっていた。
私は前世でお金を扱っていたのですぐに覚えられたが芽依は苦労していた。
「お金って面倒だね」
「でも、これでご飯を買ったりするのよ。大事な事だからしっかり覚えないとね」
「うん。覚えたけど、これをいっぱい持ち歩かなくちゃいけないんだよね。重いしかさ張るしヤだなぁ」
芽依は何でも覚えられるしすぐに慣れるわよ。計算は学校で習っているので問題は無いし、あとは騙されない様に気を付けないといけない。
残念ながら私も芽依も世間知らずだ。この先幾度か騙される事があるかもしれないが、それが致命的な事にならない様に気を付けていこうと思う。
定期的に颯太達と連絡がとれる様に準備もあった。
『お初にお目にかかります。私、ホワイトビークと申します。トコヤミ様の棲まう山に住まわせていただいております』
屋敷の庭に来て挨拶をしているのは翼幅が2メートルもある鷹に似た鳥だった。
「母さん、たまにはのんびりしておいでよ。今まで森の事とか、そこに住むみんなの為に頑張ってきたじゃないか。休養だと思って芽依と旅をして来るといい」
「森は大丈夫かしら?」
「僕が残るし他のみんなと協力するから大丈夫。母さんの助けが必要になる様な事があったら呼びに行くよ」
「ありがとう。今回は颯太に甘えさせてもらおうかしら」
颯太は芽依の事も私の事も考えて言ってくれたのだろう。本当に優しい良い子だ。
パーティの終了後、帰りの馬車の中で芽依にその事を話すと泣きながら喜んでいた。
「お兄ちゃんありがとう……!」
「芽依は人間だから僕たちの様に長く生きられない。芽依が生きている間くらいは母さんが森を留守にしても大丈夫だよ」
芽依は隣に座る颯太に抱きついていた。
ジョゼットは注意しようとした様だけど、その嬉しそうな様子を見て目を瞑ってくれた。
「学校の手続きもあるから卒業は五日後。その間にイルザハーンが人間の国に移る準備をしておいてくれるわ。向こうに着いたら冒険者登録をしましょう」
「お母さんも冒険者になるの?」
ワクワクとした顔で芽依が聞いてくる。
「そうね……精霊でも冒険者になれるのかしら?」
「どうだろうね?なれるなら一緒に冒険者をやるのもいいんじゃないかな?」
「ええ。試してみるわ」
精霊が冒険者になった前例は無いだろう。まあ、なれなくとも芽依の手伝いは出来るだろうからどちらでも良い。
あれこれと考えていたら私も楽しみになって来た。
『私もお供させてもらえませんか?私がいた方が何かと便利でしょう』
馬車を引きながらギョクリュウが聞いてくる。
「駄目だよギョクリュウ。君は目立ち過ぎる。僕達と森で留守番だ」
「私ならいいですよね?小さいしメイ様とハル様の警護が必要でしょう?」
「カナエも駄目だよ。これはメイを自立させる為の旅になるのだから。君がいたら甘やかしてしまうだろう?」
本当は颯太が一番行きたいだろうに、皆を止めるために冷静を装っている。
「母さんも教職を辞するんだから学校に挨拶しないとね。明日からやる事は沢山あるよ」
「え、ええ……勿論分かっているわ」
息子がしっかり者で助かるわ。
次の日から、学校では後任者への引き継ぎやお世話になった先生方へ挨拶を。
芽依も卒業に向けて最後の試験を受けている。
帰ってからはイルザハーンから人間の国の事を教わり、2人で暮らしていける様に大切な事を学んでいる。
「人間の国の通貨はエルドね。魔族の国の通貨はレムズ。これが一エルド硬貨、これが五、十、二十五、百、五百、千……」
私達はウルゼイドで魔族の暮らしを学んで来たけど貨幣のやり取りはしていなかった。
アルザハーンとイルザハーンがここでの暮らしを全て用意してくれたお陰でお金に触れる事なく生活出来てしまっていた。
私は前世でお金を扱っていたのですぐに覚えられたが芽依は苦労していた。
「お金って面倒だね」
「でも、これでご飯を買ったりするのよ。大事な事だからしっかり覚えないとね」
「うん。覚えたけど、これをいっぱい持ち歩かなくちゃいけないんだよね。重いしかさ張るしヤだなぁ」
芽依は何でも覚えられるしすぐに慣れるわよ。計算は学校で習っているので問題は無いし、あとは騙されない様に気を付けないといけない。
残念ながら私も芽依も世間知らずだ。この先幾度か騙される事があるかもしれないが、それが致命的な事にならない様に気を付けていこうと思う。
定期的に颯太達と連絡がとれる様に準備もあった。
『お初にお目にかかります。私、ホワイトビークと申します。トコヤミ様の棲まう山に住まわせていただいております』
屋敷の庭に来て挨拶をしているのは翼幅が2メートルもある鷹に似た鳥だった。
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