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養育
仲直り
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翌日。
今日は剣術大会学生の部の日だ。すっかり仲良くなったウェークの応援に行く事になっているが、芽依は来るだろうか?
昨日は失敗した。あの子の気持ちを考えずに私の考えだけで話をしてしまった。
芽依に大嫌いと言われたのは初めてで、私もそれなりに落ち込んでいる。
「母さん、芽依が来たら謝れるかい?」
「ええ。大丈夫よ」
颯太も私の落ち込む姿を見て心配したのか側に来て聞いてくる。
朝食の時間だけど芽依は食堂にやって来ない。
やはり怒っているのだろう。部屋に行ってみようか。
席を立とうとしたした時、扉が開いて芽依が入ってきた。
「遅れてごめんなさい」
いつもの元気さは無く、入った先で頭を下げると席についた。
全員揃ったので朝食をいただく。
いつに無く静かな食事だった。
「お母さん……」
食事が終わって大会を観戦に行く準備をしようと席を立った時、芽依の方から声を掛けてきた。
「昨日は大嫌いなんて言ってごめんなさい」
芽依は涙を浮かべながら謝ってきた。
よく見ると目には隈が出来ていた。昨晩は眠れなかったのだろう。
「私の方こそごめんなさい。芽依の気持ちも考えずにあんな事を言ってしまって……」
「お母さんが私の事を考えて言ってくれたのは分かるよ。でも……私はお母さんの子供でいたいし、ずっと一緒に暮していくんだって思ってたから」
芽依が剣術にのめり込む様になったのは私達を守りたいからだった。
『もっと強くなってお母さんとお兄ちゃんを守るんだ!』
幼い芽依はそう言って木剣を振っていた。
全ては私達の為。
それを知っていて私は突き放す様な事を言ってしまった。
この子はまだ十二歳なのだ。どれ程ショックだっただろうか?
しかし芽依は自室に帰ってからも私の言った事を反芻して考えていたのだろう。
この子は賢い。何故私があんな事を言ったのかを自分なりに理解していた。
「突然あんな事を言ってごめんなさい。昨日言った事、一人で人間の国で暮らすというのは今すぐじゃないのよ。あなたはいずれ、人間の社会で暮らしていって欲しいと思っているの。芽依は私の自慢の娘よ。血は繋がっていなくても、芽依のお母さんになれて良かったと思っているわ」
芽依は俯いたまま泣いていた。
私はそっと抱きしめる。
私と背丈は変わらない。もうこんなに大きくなったのね。
「私はずっとお母さんの娘でいていいの?」
「当たり前よ。これからもずっと親子よ」
「うん……!」
嬉しそうに顔を埋めてくる芽依。
「そろそろ闘技場に行かないと……芽依、寝てないのでしょう?今日はやめておく?」
「行く!ウェークに応援に行くって約束してるから!」
「じゃあ急いで支度しなくちゃね」
「うん!」
目は赤かったがいつもの元気な芽依に戻ってくれた。
大会はウェークが優勝。エキシビジョンマッチではロイドと戦って手も足も出なかった。
城でのパーティもいつもの様に楽しむ事が出来た。
私はその日のうちに学校の卒業についてと芽依の今後についてをアルザハーン達に話しておいた。
人間の国で冒険者になる事は可能らしい。ウルゼイドから東にある人間の国ならイルザハーンが取引をしているし、色々と手助けをしてくれるそうだ。
「メイ様は教養もあり武術、魔法共に一流の冒険者にも引けを取らないでしょう。しかしまだ十二歳です。一人で暮らしていくにはまだ早いかと存じます」
「確かにそうね。出来が良すぎてつい焦ってしまっていたわ」
アルザハーンにも言われて反省する。
「母さんが一緒について行くのはどうだい?」
隣で聞いていた颯太が言ってくる。
「メイが一人立ちできる様になるまで母さんが側にいてあげればいいと思うんだ。駄目そうなら連れて帰って来ればいい。森の事は僕が見ているから行っておいでよ」
颯太には私がやりたい事は何でも分かってしまうのかしらね。
今日は剣術大会学生の部の日だ。すっかり仲良くなったウェークの応援に行く事になっているが、芽依は来るだろうか?
昨日は失敗した。あの子の気持ちを考えずに私の考えだけで話をしてしまった。
芽依に大嫌いと言われたのは初めてで、私もそれなりに落ち込んでいる。
「母さん、芽依が来たら謝れるかい?」
「ええ。大丈夫よ」
颯太も私の落ち込む姿を見て心配したのか側に来て聞いてくる。
朝食の時間だけど芽依は食堂にやって来ない。
やはり怒っているのだろう。部屋に行ってみようか。
席を立とうとしたした時、扉が開いて芽依が入ってきた。
「遅れてごめんなさい」
いつもの元気さは無く、入った先で頭を下げると席についた。
全員揃ったので朝食をいただく。
いつに無く静かな食事だった。
「お母さん……」
食事が終わって大会を観戦に行く準備をしようと席を立った時、芽依の方から声を掛けてきた。
「昨日は大嫌いなんて言ってごめんなさい」
芽依は涙を浮かべながら謝ってきた。
よく見ると目には隈が出来ていた。昨晩は眠れなかったのだろう。
「私の方こそごめんなさい。芽依の気持ちも考えずにあんな事を言ってしまって……」
「お母さんが私の事を考えて言ってくれたのは分かるよ。でも……私はお母さんの子供でいたいし、ずっと一緒に暮していくんだって思ってたから」
芽依が剣術にのめり込む様になったのは私達を守りたいからだった。
『もっと強くなってお母さんとお兄ちゃんを守るんだ!』
幼い芽依はそう言って木剣を振っていた。
全ては私達の為。
それを知っていて私は突き放す様な事を言ってしまった。
この子はまだ十二歳なのだ。どれ程ショックだっただろうか?
しかし芽依は自室に帰ってからも私の言った事を反芻して考えていたのだろう。
この子は賢い。何故私があんな事を言ったのかを自分なりに理解していた。
「突然あんな事を言ってごめんなさい。昨日言った事、一人で人間の国で暮らすというのは今すぐじゃないのよ。あなたはいずれ、人間の社会で暮らしていって欲しいと思っているの。芽依は私の自慢の娘よ。血は繋がっていなくても、芽依のお母さんになれて良かったと思っているわ」
芽依は俯いたまま泣いていた。
私はそっと抱きしめる。
私と背丈は変わらない。もうこんなに大きくなったのね。
「私はずっとお母さんの娘でいていいの?」
「当たり前よ。これからもずっと親子よ」
「うん……!」
嬉しそうに顔を埋めてくる芽依。
「そろそろ闘技場に行かないと……芽依、寝てないのでしょう?今日はやめておく?」
「行く!ウェークに応援に行くって約束してるから!」
「じゃあ急いで支度しなくちゃね」
「うん!」
目は赤かったがいつもの元気な芽依に戻ってくれた。
大会はウェークが優勝。エキシビジョンマッチではロイドと戦って手も足も出なかった。
城でのパーティもいつもの様に楽しむ事が出来た。
私はその日のうちに学校の卒業についてと芽依の今後についてをアルザハーン達に話しておいた。
人間の国で冒険者になる事は可能らしい。ウルゼイドから東にある人間の国ならイルザハーンが取引をしているし、色々と手助けをしてくれるそうだ。
「メイ様は教養もあり武術、魔法共に一流の冒険者にも引けを取らないでしょう。しかしまだ十二歳です。一人で暮らしていくにはまだ早いかと存じます」
「確かにそうね。出来が良すぎてつい焦ってしまっていたわ」
アルザハーンにも言われて反省する。
「母さんが一緒について行くのはどうだい?」
隣で聞いていた颯太が言ってくる。
「メイが一人立ちできる様になるまで母さんが側にいてあげればいいと思うんだ。駄目そうなら連れて帰って来ればいい。森の事は僕が見ているから行っておいでよ」
颯太には私がやりたい事は何でも分かってしまうのかしらね。
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