泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

養育

授業改革と武術訓練

次の日、いつも通りに登校してクラウスの授業を受ける。

「……ここまでで質問のある者は？」

必死に授業内容を書き写していた生徒達が一斉にクラウスを見る。全員驚いて声も出ない様だ。

「無いのなら次に進むぞ」
「は、はい！先生、この部分が分からないのですが……」

本当に質問して良いのか分からないのだろう。一人の男子生徒が遠慮がちに手をあげて質問する。

「ふむ……ハルは理解しているか？」
「はい先生」
「ならば君の言葉で説明してみなさい」
「分かりました」

立ち上がって、分からないと言っている部分を分かりやすい単語に言い直して説明していく。

「なるほど……分かりました。ありがとうございます」
「よし、他の者は？」
「はい！私も……！」

次々と質問が飛び出してくる。

「よし、ハル説明しなさい」
「はい」

結局質問について全て私が答える事にやった。

教師としてそれで良いのかしら？

午前中の授業が終わって昼休み。
芽依達と一緒に昼食をいただいてゆっくりと話しをする。

「おかーさん、『けんじゅつたいかい』ってしってる？」
「剣術大会？知らないわ」

芽依がクラスの友達から聞いたのだろう。楽しげに説明をしてくれた。
幼子の説明なので分からない事ばかりだったが、そこはカナエが捕捉してくれたので内容は理解できた。

何でももうすぐ学校内で剣術の大会が行われるらしく、初等部の武術科から参加資格があるらしい。
クラスの子の兄、姉に出場者がいるらしくその話を聞いたのだ。

「芽依は剣術に興味があるの？」
「わからないけどおもしろそう！」

剣術と言っても見たことがないのだから分からないのは当然か。何にでも興味を持つ子だから当然の反応ね。

「訓練場を見学する事が出来ますよ」
「みたい！！」

芽依はジョゼットの言葉に飛びついた。
多少帰りが遅くなるだけなら問題無いだろう。
終業後に訓練場に見学に行く事になった。

午後の授業も終わって皆と合流すると、ジョゼットの案内で武術訓練棟に移動する。

一階建ての円形の建物で、中に入ると沢山の生徒が木剣を手に訓練をしていた。

年齢は初等学校の生徒位の子から、大人も混じっている。
それぞれ素振りをしたり木の人形に打ち込んだり一対一で模擬戦をしている者達もいた。

「わー！スゴいスゴい！」

目を輝かせてそれらを見ている芽依。
颯太もカナエも剣術には興味がなさそうだったけど、芽依に付き合って喜んだり驚いたりしてくれていた。

「おやおや、これはまた小さな見学者が来たもんだ」

近くにいた筋肉隆々のスキンヘッドの男が声をかけてくる。

「少し見学をさせていただきます」
「幾らでも見ていってくれ。俺は武術科講師のブライドンだ」
「初等魔法科のハルです」
「メイです！」

私達を見て厳つい顔が少し緩む。
子供好きなのかしらね。

「皆来週末の剣術大会の為に特訓中だ。そっちの兄さんは剣術はやらないのか？」
「僕は剣術に興味はないよ。どちらかといえば魔法が得意だから」

爽やかに笑いながら答える颯太。

「男なら剣の一つは振れないと大切な人を護れないぞ」

笑いながら言っているブライドン。それに対して笑って返すだけの颯太。
この子に挑発は効かないわ。

「メイやってみたい！」

と思ったら芽依がやると言い出した。

「お嬢ちゃんにはまだ早いな。もう少し大きくなってから教えてやろう」
「や！メイがおかーさんとソータお兄ちゃんをまもるもん！」

頬を膨らませて抗議する芽依。困った顔をして頭に手をやるブライドン。

「分かったよ。おい、小木剣を持ってきてくれ」

近くにいた生徒が短い木剣を持ってきてくれた。

「よし、これを持ってみな。扱い方を教えてやろう」
「うん！ありがとうおじさん！」
「おじ……まあいい。じゃあ木剣を両手で持ってこう……」

ブライドンは顔に似合わず丁寧に教えてくれた。
「よし、じゃあ俺に打ち込んでみろ」
「うん！」

両手でブライドンが低く構えた木剣に向かって打ち込み始める芽依。
結構良い動きに見えるわ。流石は我が娘。

……また親馬鹿になってしまったわ。