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養育
初等魔法科クラス
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自分の外見の相違にショックを受けはしたものの、よく考えれば若く見られる事は良い事だと気を取り直した。
芽依はクラスの子達とすぐに仲良くなった様で安心した。
「ハルさん、午後からは初等学校の方へ行ってもらえますか?」
「あら、今日からなのね」
「ハルちゃん一緒じゃないの?」
「ええ、ごめんなさいね。芽依もいるし、また遊びに行くから」
残念がるクラスの子達。皆を宥めつつ芽依に聞く。
「私が居なくても大丈夫?」
「うん!おかーさんもおべんきょーがんばって!」
「私がついていますからどうかご安心を」
カナエも付いていてくれるし芽依は快活で誰とでも仲良くなれる子だから大丈夫だろう。
「芽依の事を宜しくお願いします」
「はい。お任せください」
ルシアーナにも挨拶しておく。
「私も芽依様に付いております。何かあれば直ぐにご報告いたします」
「ありがとうジョゼット。宜しく頼みます」
指導役のジョゼットもいるし、芽依が知らず知らずにトラブルを起こす事もないだろう。私は安心して自分の勉学に励める。
……元々こんなつもりではなかったのだけど。
「失礼、私が初等魔法科の教師のクラウスだ。午後から君が入るクラスの担当になる」
「よろしくお願いします」
二十代後半の銀髪の男性教師。眼鏡を掛けた神経質そうな印象の人だ。
「それでは案内しよう」
「はい」
芽依達に手を振って私はクラウスの後について行く。
私の後ろに颯太もついて来る。
「メイにはカナエがついているからね。僕は母さんについて行くよ」
「そう……クラウス先生、よろしいですか、」
「ああ、構わないよ」
振り向かずに答えるクラウス。颯太に興味はない様だ。
初等魔法科の教室は違う棟にあった。
教室の仕様は幼児学校と変わらなかった。人数も二十人と同じ。
クラウスと教室に入ると既に全員着席していた。
「急遽編入となった生徒を紹介する。自己紹介を」
「はい。ハルといいます。宜しくお願いします」
「信じられないかも知れないが、彼女は建国の父を救った精霊様だ。しかしこの学校にいる限り諸君らと同じ生徒、ここでは実力のない者は落第する」
特別扱いしない事は良い事だけど、幼児学校から上がってすぐにこれで芽依は大丈夫だろうか?
「席は一番後ろだ。教科書類は引き出しに入っている」
「分かりました」
席に着いて教科書を確認する。問題なく読める。
「さて、授業を始める。まずは……」
始められたのは魔法の基礎部分を学術的に解釈した内容だ。科目は魔導基礎学。
クラウスの授業は話し方は乱暴だが、授業は的確で分かりやすい。
ただ難点は、理解が追い付かない者がいる内に次に進んでしまう所だ。
例えば左前の十歳位の女の子。彼女は必至に授業の内容を書き写しているけど、理解が追いついていない様だ。
分からないものを書き写すのは苦痛だ。要点を纏める事もできない。
言われた事を書き写すのには労力がかかり過ぎるし、クラウスの進行速度も早い。
「先生、理解出来ていない生徒もいます。質問の時間をとってはいかがですか?」
「不要だ。それでは出来る生徒の邪魔になってしまう。出来ない者は終わってから復習すれば良い」
そう言うとすぐに授業を再開する。
ここの教室はこれが普通なのだろう。
悪い事を言ってしまっただろうか。
授業が終わり休憩時間になると、左前に座っていた女の子が声を掛けてきた。
「その…気を遣っていただいてありがとうございました」
「いいえ、私の方こそいきなり言う事ではなかったわ。ごめんなさい」
彼女の名前はセシリアという。銀色の長い髪をハーフアップにしている可愛らしい少女だ。
「君、余計な事をしないでもらえるか?」
そう言ってきたのは黒髪の少年。
「ごめんなさいね」
「ふん、今後は授業をあんなつまらない事で止めない事だ」
それだけ言って去って行く。
彼は『出来る子』の方なのだろう。
芽依はクラスの子達とすぐに仲良くなった様で安心した。
「ハルさん、午後からは初等学校の方へ行ってもらえますか?」
「あら、今日からなのね」
「ハルちゃん一緒じゃないの?」
「ええ、ごめんなさいね。芽依もいるし、また遊びに行くから」
残念がるクラスの子達。皆を宥めつつ芽依に聞く。
「私が居なくても大丈夫?」
「うん!おかーさんもおべんきょーがんばって!」
「私がついていますからどうかご安心を」
カナエも付いていてくれるし芽依は快活で誰とでも仲良くなれる子だから大丈夫だろう。
「芽依の事を宜しくお願いします」
「はい。お任せください」
ルシアーナにも挨拶しておく。
「私も芽依様に付いております。何かあれば直ぐにご報告いたします」
「ありがとうジョゼット。宜しく頼みます」
指導役のジョゼットもいるし、芽依が知らず知らずにトラブルを起こす事もないだろう。私は安心して自分の勉学に励める。
……元々こんなつもりではなかったのだけど。
「失礼、私が初等魔法科の教師のクラウスだ。午後から君が入るクラスの担当になる」
「よろしくお願いします」
二十代後半の銀髪の男性教師。眼鏡を掛けた神経質そうな印象の人だ。
「それでは案内しよう」
「はい」
芽依達に手を振って私はクラウスの後について行く。
私の後ろに颯太もついて来る。
「メイにはカナエがついているからね。僕は母さんについて行くよ」
「そう……クラウス先生、よろしいですか、」
「ああ、構わないよ」
振り向かずに答えるクラウス。颯太に興味はない様だ。
初等魔法科の教室は違う棟にあった。
教室の仕様は幼児学校と変わらなかった。人数も二十人と同じ。
クラウスと教室に入ると既に全員着席していた。
「急遽編入となった生徒を紹介する。自己紹介を」
「はい。ハルといいます。宜しくお願いします」
「信じられないかも知れないが、彼女は建国の父を救った精霊様だ。しかしこの学校にいる限り諸君らと同じ生徒、ここでは実力のない者は落第する」
特別扱いしない事は良い事だけど、幼児学校から上がってすぐにこれで芽依は大丈夫だろうか?
「席は一番後ろだ。教科書類は引き出しに入っている」
「分かりました」
席に着いて教科書を確認する。問題なく読める。
「さて、授業を始める。まずは……」
始められたのは魔法の基礎部分を学術的に解釈した内容だ。科目は魔導基礎学。
クラウスの授業は話し方は乱暴だが、授業は的確で分かりやすい。
ただ難点は、理解が追い付かない者がいる内に次に進んでしまう所だ。
例えば左前の十歳位の女の子。彼女は必至に授業の内容を書き写しているけど、理解が追いついていない様だ。
分からないものを書き写すのは苦痛だ。要点を纏める事もできない。
言われた事を書き写すのには労力がかかり過ぎるし、クラウスの進行速度も早い。
「先生、理解出来ていない生徒もいます。質問の時間をとってはいかがですか?」
「不要だ。それでは出来る生徒の邪魔になってしまう。出来ない者は終わってから復習すれば良い」
そう言うとすぐに授業を再開する。
ここの教室はこれが普通なのだろう。
悪い事を言ってしまっただろうか。
授業が終わり休憩時間になると、左前に座っていた女の子が声を掛けてきた。
「その…気を遣っていただいてありがとうございました」
「いいえ、私の方こそいきなり言う事ではなかったわ。ごめんなさい」
彼女の名前はセシリアという。銀色の長い髪をハーフアップにしている可愛らしい少女だ。
「君、余計な事をしないでもらえるか?」
そう言ってきたのは黒髪の少年。
「ごめんなさいね」
「ふん、今後は授業をあんなつまらない事で止めない事だ」
それだけ言って去って行く。
彼は『出来る子』の方なのだろう。
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