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新しい時代
国
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見事な繁栄を遂げて子孫達が泉の周りに帰ってきた。
皆を眷属として迎え入れ、各々で暮らしを開始する。
平原に《植物生成》を合成した雨を降らせて森林地帯にする準備をする。
それともう一つ。
ヨキ達の話だと例の石がまた現れたそうなので、広範囲に雨を降らせて殲滅しておく。ただ、全ての場所に泉の水を染み渡らせる事は出来ないので、どこかにあの石はあり続けるだろう。
あれをこの星から無くさないと同じ過ちを繰り返す事になりそうで不安だ。
まずはこの地域にある石は排除しておこう。
☆★☆★☆★☆★
そして時は流れ、幾度も世代交代が行われた、
平原は豊かな森へと姿を変え、皆が安心して暮らせる様になっていた。
広大な森をそれぞれの種族が交流をしながら大切に使ってくれている。
ブランザハーンの子孫達は東の外れにウルゼイドという名の国を築き繁栄している。
西にあった国、ディアブレルも健在だが、泉の高地どころか大森林にも立ち入らない様にしている。
大森林の西側に住んでいる者達には、くれぐれも自分達の領域から出ない事と、魔族が迷い込んで来ても攻撃されない限りこちらから襲わない様にと伝えてある。
このまま良き隣人であってほしい。
大森林の北側はエルフ達の領域、その一番端にはトコヤミの棲む大きな山がある。その更に向こう側には平原や森林があるそうだが、遥か北側に街が出来始めていた。
『どうやら人間が住んでいる様です』
トコヤミが上空から様子を見て来て教えてくれた。
「こちらに踏み入ってこない限りはそのままにしておきましょう」
泉やその周囲を荒らさない限り友好的でありたい。
反対側、遥か南には海があり、そこにも人間の街が出来ていた。
あの氷河期を人間達も多く生き延びていたと思うと嬉しく思う。
あの街のいずれかにアインはいるのだろうか?もうどれくらい彼の顔を見ていないだろう。私達の事は忘れてしまったのか?或いは老いる事のない身体にされて私を恨んでいるのか……
彼はまだ帰らない。
ある日、トコヤミが泉にやって来て気になる事を言った。
『北の人間達の街ですが、何やら不穏な動きがあります』
街の周りに強固な塀を作り、見張り台を幾つも築いているらしい。
『お前が姿を見せるから警戒しているだけではないのか?』
『いえ、我は人間が見えぬ程の高空より監視しております故、その様な事は無いはずです』
カクカミに指摘されて言い返すトコヤミ。
「それならあの人間達は何に警戒しているのだろうね?」
颯太も気がかりの様だ。
「こちらに来ないのなら様子を見ましょう」
私達の方針は変わらない。彼らがこちらに来ない限り、どう動こうと見守るのみだ。
その数日後、北の街が燃えていると報告を受けた。
私も《遠隔視野》で確認すると、地平線の彼方で街が燃えているのが見えた。
『こちらに逃げてくる者がいた場合は如何されますか?』
「状況が状況です。保護しましょう」
『御意』
しかし人間はこちらに逃げてくる事は無かった。
恐らく全滅だったのだろう。
何者があの街を焼いたのか気になるが、こちらに進出してくる様子もなかったので何もしないでおいた。
そして数日後。
『ハル様!竜に乗った人間がこちらにやって参ります!』
トコヤミが大慌てで泉にやって来て告げる。
「敵対の意志はありそう?」
『いえ、人間も竜も手負いの様子です』
「こちらに誘導してあげて。保護します」
『御意』
トコヤミが再び飛び立っていき、竜を引き連れて泉に戻ってきた。
竜は着地寸前で力尽き、地面に墜落した。
乗っていた人間が地面に投げ出される。
畔に倒れた人間と竜に泉の水を与えるが、どちらも既に事切れていた。
人間の腕の中で動くものがあり、取り出してみると赤ん坊だった。
『ハル様、それは?』
「人間の子供の様ね。この子は無事みたい」
この子だけでも保護しよう。
皆を眷属として迎え入れ、各々で暮らしを開始する。
平原に《植物生成》を合成した雨を降らせて森林地帯にする準備をする。
それともう一つ。
ヨキ達の話だと例の石がまた現れたそうなので、広範囲に雨を降らせて殲滅しておく。ただ、全ての場所に泉の水を染み渡らせる事は出来ないので、どこかにあの石はあり続けるだろう。
あれをこの星から無くさないと同じ過ちを繰り返す事になりそうで不安だ。
まずはこの地域にある石は排除しておこう。
☆★☆★☆★☆★
そして時は流れ、幾度も世代交代が行われた、
平原は豊かな森へと姿を変え、皆が安心して暮らせる様になっていた。
広大な森をそれぞれの種族が交流をしながら大切に使ってくれている。
ブランザハーンの子孫達は東の外れにウルゼイドという名の国を築き繁栄している。
西にあった国、ディアブレルも健在だが、泉の高地どころか大森林にも立ち入らない様にしている。
大森林の西側に住んでいる者達には、くれぐれも自分達の領域から出ない事と、魔族が迷い込んで来ても攻撃されない限りこちらから襲わない様にと伝えてある。
このまま良き隣人であってほしい。
大森林の北側はエルフ達の領域、その一番端にはトコヤミの棲む大きな山がある。その更に向こう側には平原や森林があるそうだが、遥か北側に街が出来始めていた。
『どうやら人間が住んでいる様です』
トコヤミが上空から様子を見て来て教えてくれた。
「こちらに踏み入ってこない限りはそのままにしておきましょう」
泉やその周囲を荒らさない限り友好的でありたい。
反対側、遥か南には海があり、そこにも人間の街が出来ていた。
あの氷河期を人間達も多く生き延びていたと思うと嬉しく思う。
あの街のいずれかにアインはいるのだろうか?もうどれくらい彼の顔を見ていないだろう。私達の事は忘れてしまったのか?或いは老いる事のない身体にされて私を恨んでいるのか……
彼はまだ帰らない。
ある日、トコヤミが泉にやって来て気になる事を言った。
『北の人間達の街ですが、何やら不穏な動きがあります』
街の周りに強固な塀を作り、見張り台を幾つも築いているらしい。
『お前が姿を見せるから警戒しているだけではないのか?』
『いえ、我は人間が見えぬ程の高空より監視しております故、その様な事は無いはずです』
カクカミに指摘されて言い返すトコヤミ。
「それならあの人間達は何に警戒しているのだろうね?」
颯太も気がかりの様だ。
「こちらに来ないのなら様子を見ましょう」
私達の方針は変わらない。彼らがこちらに来ない限り、どう動こうと見守るのみだ。
その数日後、北の街が燃えていると報告を受けた。
私も《遠隔視野》で確認すると、地平線の彼方で街が燃えているのが見えた。
『こちらに逃げてくる者がいた場合は如何されますか?』
「状況が状況です。保護しましょう」
『御意』
しかし人間はこちらに逃げてくる事は無かった。
恐らく全滅だったのだろう。
何者があの街を焼いたのか気になるが、こちらに進出してくる様子もなかったので何もしないでおいた。
そして数日後。
『ハル様!竜に乗った人間がこちらにやって参ります!』
トコヤミが大慌てで泉にやって来て告げる。
「敵対の意志はありそう?」
『いえ、人間も竜も手負いの様子です』
「こちらに誘導してあげて。保護します」
『御意』
トコヤミが再び飛び立っていき、竜を引き連れて泉に戻ってきた。
竜は着地寸前で力尽き、地面に墜落した。
乗っていた人間が地面に投げ出される。
畔に倒れた人間と竜に泉の水を与えるが、どちらも既に事切れていた。
人間の腕の中で動くものがあり、取り出してみると赤ん坊だった。
『ハル様、それは?』
「人間の子供の様ね。この子は無事みたい」
この子だけでも保護しよう。
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