44 / 453
人間
災厄
しおりを挟む
突然夜の闇が切り裂かれて巨大な隕石が落ちてくる。
私達は隕石の衝突後の津波を予想して高台への避難を開始していた。
正直被害の想像ができない。
直撃ではないにしてもあれだけの大きさだ、ただでは済まないだろう。
山の斜面を背にする様に避難するべきか迷ったが、とにかく高台に避難する事に決めた。
一番近くに住んでいたケリュネイア達は足の遅い人型を乗せて泉に運んでは戻りを繰り返してくれている。
時間はあまりないかも知れない。全員を避難させる事は難しい。
人型動物型関係なく次々と避難してくる。泉の周りはかなり広いが島全体からしたら微々たるものだ。
アインと颯太が避難して来た者達を誘導して出来るだけ詰めてくれている。
そしてその時はやって来た。
空に轟く爆発音、大気全体が震えている。
そして……
「風が……止んだ?」
空を見上げながらアインが呟く。
そのあと巻き起こる突風。風は落下地点に吹いている……?
「何か変です……森全体が震えてる……」
カナエは怯えて私の肩にしがみついている。
《遠隔視野》を使って落下地点の方角を確認する。
海が向こうに引っ張られている……
更に遠くを見ると、こちらに向かう波と衝撃波が目視できた。
「みんな、物凄い突風がくるわ!伏せて!」
「小さな者は僕の木の陰に隠れるんだ!」
私が叫ぶと颯太も指示を出しながら私を抱き寄せて伏せる。
次の瞬間、凄まじい風が巻き起こる。この森はそう簡単に揺らぐ事の無い大木ばかりだが、その木々が大きく揺さぶられている。
《遠隔視野》でもう一度確認すると、津波が迫って来ていた。
その高さたるや、ビルくらいあるのではないかという波で、恐ろしい速度で迫って来ていた。
あの高さではここも危ない。
『ハル様!』
『ハル様、ご無事ですか!?』
カクカミとヤトがほぼ同時に戻ってきた。遅れてメトもやって来た。
「ええ、今からここに津波が来ます。魔法で防ぐから力を貸して!」
『『分かりました!』』
「何をすればいい?」
私は指示を出す。
土の魔法でなるべく固く、この泉に波が来ない様に壁を作る。波に対して鋭角に、二枚の壁をだ。
高さはかなり高くしなければ飲み込まれてしまう。土魔法の使える私と颯太とカナエで作っていく。
間に合うのか?そもそもこんなもので防げるのか?しかし何もしないよりは良い筈だ。
なるべく多くの者を守れる様に出来るだけ泉から離れた位置に作った。
そしてやって来る巨大な津波。轟音と振動が伝わってくる。
全力で強化した二枚の壁は波の衝突に何とか耐えた。幾らかは壁を乗り越えて雨の様に降りかかって来たけどそれ位は問題ない。
しかし、泉の周りの高台以外は波に飲み込まれてしまった。
眼下にあった湖や広大な森は全て飲み込まれてしまった。
私達はそれをただ呆然と見ていることしか出来なかった。
夜が明けて波も少しずつ収まっていき、被害の全容が見えてきた。
あれだけ生い茂っていた木々は一本も残っていない。荒地だけが広がっていた。
泉のある高台にいた者達は無事だったけど、逃げ遅れた者も少なくはなかっただろう。
「なんてことなの……」
破壊され尽くした島を見ながら呟く。
あの神様は、この《イルメイア》という世界を滅びと再生の世界と呼んでいた。
まさかこんな事が定期的に起こるのだろうか?
それでは幾ら繁栄しても、文明が興っても何も残らないではないか。
怒りと絶望の入り混じったドロドロとした感情が湧き上がってくる。
「折角ここまで来たのに……」
あんまりだ。
「母さん……」
泣き崩れそうになるのを颯太の声が支えてくれた。
そうだ。この世界に来たばかりの孤独な自分ではないのだ。
今はみんながいる。私がしっかりしなければ。
「怪我をした者がいないか確認をしましょう。それから周囲の探索を行います」
何とか己を奮い立たせて皆に言った。
私達は隕石の衝突後の津波を予想して高台への避難を開始していた。
正直被害の想像ができない。
直撃ではないにしてもあれだけの大きさだ、ただでは済まないだろう。
山の斜面を背にする様に避難するべきか迷ったが、とにかく高台に避難する事に決めた。
一番近くに住んでいたケリュネイア達は足の遅い人型を乗せて泉に運んでは戻りを繰り返してくれている。
時間はあまりないかも知れない。全員を避難させる事は難しい。
人型動物型関係なく次々と避難してくる。泉の周りはかなり広いが島全体からしたら微々たるものだ。
アインと颯太が避難して来た者達を誘導して出来るだけ詰めてくれている。
そしてその時はやって来た。
空に轟く爆発音、大気全体が震えている。
そして……
「風が……止んだ?」
空を見上げながらアインが呟く。
そのあと巻き起こる突風。風は落下地点に吹いている……?
「何か変です……森全体が震えてる……」
カナエは怯えて私の肩にしがみついている。
《遠隔視野》を使って落下地点の方角を確認する。
海が向こうに引っ張られている……
更に遠くを見ると、こちらに向かう波と衝撃波が目視できた。
「みんな、物凄い突風がくるわ!伏せて!」
「小さな者は僕の木の陰に隠れるんだ!」
私が叫ぶと颯太も指示を出しながら私を抱き寄せて伏せる。
次の瞬間、凄まじい風が巻き起こる。この森はそう簡単に揺らぐ事の無い大木ばかりだが、その木々が大きく揺さぶられている。
《遠隔視野》でもう一度確認すると、津波が迫って来ていた。
その高さたるや、ビルくらいあるのではないかという波で、恐ろしい速度で迫って来ていた。
あの高さではここも危ない。
『ハル様!』
『ハル様、ご無事ですか!?』
カクカミとヤトがほぼ同時に戻ってきた。遅れてメトもやって来た。
「ええ、今からここに津波が来ます。魔法で防ぐから力を貸して!」
『『分かりました!』』
「何をすればいい?」
私は指示を出す。
土の魔法でなるべく固く、この泉に波が来ない様に壁を作る。波に対して鋭角に、二枚の壁をだ。
高さはかなり高くしなければ飲み込まれてしまう。土魔法の使える私と颯太とカナエで作っていく。
間に合うのか?そもそもこんなもので防げるのか?しかし何もしないよりは良い筈だ。
なるべく多くの者を守れる様に出来るだけ泉から離れた位置に作った。
そしてやって来る巨大な津波。轟音と振動が伝わってくる。
全力で強化した二枚の壁は波の衝突に何とか耐えた。幾らかは壁を乗り越えて雨の様に降りかかって来たけどそれ位は問題ない。
しかし、泉の周りの高台以外は波に飲み込まれてしまった。
眼下にあった湖や広大な森は全て飲み込まれてしまった。
私達はそれをただ呆然と見ていることしか出来なかった。
夜が明けて波も少しずつ収まっていき、被害の全容が見えてきた。
あれだけ生い茂っていた木々は一本も残っていない。荒地だけが広がっていた。
泉のある高台にいた者達は無事だったけど、逃げ遅れた者も少なくはなかっただろう。
「なんてことなの……」
破壊され尽くした島を見ながら呟く。
あの神様は、この《イルメイア》という世界を滅びと再生の世界と呼んでいた。
まさかこんな事が定期的に起こるのだろうか?
それでは幾ら繁栄しても、文明が興っても何も残らないではないか。
怒りと絶望の入り混じったドロドロとした感情が湧き上がってくる。
「折角ここまで来たのに……」
あんまりだ。
「母さん……」
泣き崩れそうになるのを颯太の声が支えてくれた。
そうだ。この世界に来たばかりの孤独な自分ではないのだ。
今はみんながいる。私がしっかりしなければ。
「怪我をした者がいないか確認をしましょう。それから周囲の探索を行います」
何とか己を奮い立たせて皆に言った。
0
お気に入りに追加
434
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
異世界転生はうっかり神様のせい⁈
りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。
趣味は漫画とゲーム。
なにかと不幸体質。
スイーツ大好き。
なオタク女。
実は予定よりの早死は神様の所為であるようで…
そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は
異世界⁈
魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界
中々なお家の次女に生まれたようです。
家族に愛され、見守られながら
エアリア、異世界人生楽しみます‼︎
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる