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繁栄
渓谷の主
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全員に休息をとらせて自分も休んでいると、突然カクカミが首を起こして遠くを見る。
「どうしたのカクカミ?」
『はい、どうやらまた来た様です。』
私の問いかけにカクカミは視線を一方向に向けたまま答えてきた。
そちらを見やると新たなゴブリン達が集団でこちらに向かってきていた。
「また性懲りもなく来たか。何度来ようと同じ事だ。」
ヨキはやる気満々だ。他の者の士気も高い。
よく見るとゴブリンよりも遥かに大きい人型も混ざっている。肌は青に近く、手足は太く筋肉が発達している。腰にボロボロの革を巻いただけの格好で、手には巨大な棍棒を持っている。頭には二本のツノが生えていてまるで鬼だ。
あれは何だろうか?
「あれはオーガです。力だけは凄まじく、頭はそんなに良くはありません。ゴブリンは奴らに従っているのかも知れませんな。」
ヨキが教えてくれた。つまりあれが群れの長という事になるのか。
「対話は無理そうね。」
『恐らく無理でしょう。これだけの被害を出して大人しく引き下がるとは思えません。』
カクカミは立ち上がり首を左右に振りながら答える。
「全員、待機よ。《反転》を使って一気に倒します。」
私は準備を始める。
『お待ちを。敵は回り込んできているみたいです。』
距離はかなり離れているが、私達の後方にもゴブリン達が現れていた。
「囲まれちゃうよ。」
前後どちらかに《反転》の毒素を撒いた場合、私達はそちらの方向に移動できなくなる。そこに突撃をされれば下がる事も出来ずに多くの犠牲を出してしまうだろう。
ここは包囲されない様にここから離れるべきだ。
「全員移動します。一旦北部へ行きましょう。」
『賛成です。ここから北には渓谷があります。入り組んだ地形なら大群を分散できるでしょう。』
すぐに移動開始だ。コボルト達はケリュネイアに乗ってもらって急いでこの場を離れる。
木々を掻き分けて森を疾走するケリュネイア達。その速度はゴブリン達の進軍速度の比ではない。途中何人かのゴブリンに遭遇したがメトとカクカミが一撃で倒してくれた。
全員無事に渓谷まで辿り着いた。
「何であんなにいるんだろう?」
『分かりません。ゴブリンというのは繁殖力が高いらしいですが、あれは異常です。』
颯太とカクカミが話している。
生態を狂わせる何かがあるのか……まさかあの石では?
「石の付いたゴブリンやオーガを見た者はいない?」
全員かぶりを振る。
思い過ごしであれば良いのだけど。
『こっちに何か来ます。』
メトが全員を庇う様に立つ。
姿を現したのは巨大な蛇だった。
大木の様に太い身体を唸らせながら近づいてきて頭を持ち上げ威嚇してくる。
『我の縄張りに踏み込むとは愚か者どもめ。』
思わずそばにいた颯太をギュッと抱きしめる。
昔から蛇が苦手なのよ。
『なに?思いあがるなよ、この辺り一帯が平穏なのはハル様のお陰なのだぞ。』
メトが立ち上がり巨大蛇を威嚇している。
「あ、あの……私は泉の精霊のハルといいます。あなたの領域を侵したのは謝ります。私達は今ゴブリンとオーガと争っているのです。ここを通過する事をお許しください。」
『なんと……!泉の精霊様でしたか!大変失礼致しました。』
私が名乗ると持ち上げていた頭をペタリと地面に着けて謝ってきた。
「いいのです。無断で踏み入ったのは私達なのですから。」
『ゴブリンやオーガといいましたね?私も加勢いたしましょう。』
「ありがとう。実はこの渓谷に大軍を引き込んで各個撃破を狙っていました。」
『さすがは精霊様、この地は複雑ですので大軍を引き込むのにはうってつけです。私がゴブリンどもを蹴散らしてご覧に入れましょう。』
顔をこちらに向け、チロチロと舌を出しながら得意げにいう巨大蛇。
ありがたいが、鳥肌が治らなかった。
「どうしたのカクカミ?」
『はい、どうやらまた来た様です。』
私の問いかけにカクカミは視線を一方向に向けたまま答えてきた。
そちらを見やると新たなゴブリン達が集団でこちらに向かってきていた。
「また性懲りもなく来たか。何度来ようと同じ事だ。」
ヨキはやる気満々だ。他の者の士気も高い。
よく見るとゴブリンよりも遥かに大きい人型も混ざっている。肌は青に近く、手足は太く筋肉が発達している。腰にボロボロの革を巻いただけの格好で、手には巨大な棍棒を持っている。頭には二本のツノが生えていてまるで鬼だ。
あれは何だろうか?
「あれはオーガです。力だけは凄まじく、頭はそんなに良くはありません。ゴブリンは奴らに従っているのかも知れませんな。」
ヨキが教えてくれた。つまりあれが群れの長という事になるのか。
「対話は無理そうね。」
『恐らく無理でしょう。これだけの被害を出して大人しく引き下がるとは思えません。』
カクカミは立ち上がり首を左右に振りながら答える。
「全員、待機よ。《反転》を使って一気に倒します。」
私は準備を始める。
『お待ちを。敵は回り込んできているみたいです。』
距離はかなり離れているが、私達の後方にもゴブリン達が現れていた。
「囲まれちゃうよ。」
前後どちらかに《反転》の毒素を撒いた場合、私達はそちらの方向に移動できなくなる。そこに突撃をされれば下がる事も出来ずに多くの犠牲を出してしまうだろう。
ここは包囲されない様にここから離れるべきだ。
「全員移動します。一旦北部へ行きましょう。」
『賛成です。ここから北には渓谷があります。入り組んだ地形なら大群を分散できるでしょう。』
すぐに移動開始だ。コボルト達はケリュネイアに乗ってもらって急いでこの場を離れる。
木々を掻き分けて森を疾走するケリュネイア達。その速度はゴブリン達の進軍速度の比ではない。途中何人かのゴブリンに遭遇したがメトとカクカミが一撃で倒してくれた。
全員無事に渓谷まで辿り着いた。
「何であんなにいるんだろう?」
『分かりません。ゴブリンというのは繁殖力が高いらしいですが、あれは異常です。』
颯太とカクカミが話している。
生態を狂わせる何かがあるのか……まさかあの石では?
「石の付いたゴブリンやオーガを見た者はいない?」
全員かぶりを振る。
思い過ごしであれば良いのだけど。
『こっちに何か来ます。』
メトが全員を庇う様に立つ。
姿を現したのは巨大な蛇だった。
大木の様に太い身体を唸らせながら近づいてきて頭を持ち上げ威嚇してくる。
『我の縄張りに踏み込むとは愚か者どもめ。』
思わずそばにいた颯太をギュッと抱きしめる。
昔から蛇が苦手なのよ。
『なに?思いあがるなよ、この辺り一帯が平穏なのはハル様のお陰なのだぞ。』
メトが立ち上がり巨大蛇を威嚇している。
「あ、あの……私は泉の精霊のハルといいます。あなたの領域を侵したのは謝ります。私達は今ゴブリンとオーガと争っているのです。ここを通過する事をお許しください。」
『なんと……!泉の精霊様でしたか!大変失礼致しました。』
私が名乗ると持ち上げていた頭をペタリと地面に着けて謝ってきた。
「いいのです。無断で踏み入ったのは私達なのですから。」
『ゴブリンやオーガといいましたね?私も加勢いたしましょう。』
「ありがとう。実はこの渓谷に大軍を引き込んで各個撃破を狙っていました。」
『さすがは精霊様、この地は複雑ですので大軍を引き込むのにはうってつけです。私がゴブリンどもを蹴散らしてご覧に入れましょう。』
顔をこちらに向け、チロチロと舌を出しながら得意げにいう巨大蛇。
ありがたいが、鳥肌が治らなかった。
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