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繁栄
津波
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カクカミとメトの奮闘でゴブリンの大群を足止めできている。しかし木々の間を縫って、積み上げられた死体の山を駆け登ってカクカミ達を突破してくるゴブリンも現れた。
「俺達の出番だ!全員気合を入れろ!!」
ヨキが全員に発破を掛けて前進していく。
高い所から飛び降りて来たばかりのゴブリンを狙って倍以上に太くなった腕を大きく振りかぶって拳を繰り出す。
殴られたゴブリンは頭が吹き飛んでいた。
「幾ら攻めてこようとも俺がいる限りハル様とソータ様には指一本触れさせねぇ!!」
他のコボルト達も手にした武器で次々とゴブリンを倒していく。颯太も足元の小さな草をゴブリンの足に絡めて転ばせたりして援護している。
しかしゴブリンの勢いは止まらない。次々と迫り来るゴブリン達の攻撃に怪我をする者も増えてきた。
私は《成分複製》で泉の水を作って怪我をした人に掛けていく。
傷は治せるし、元気を無くしていた者を励ます事はできてもゴブリン達の勢いに押される者も増えてくる。
撤退するべきか。
いや、泉まで後退しても何も解決できないだろう。
ならば迎撃態勢の整っているここで押し返した方がいいだろう。ならばここはやるしかない。
「カクカミ、メト、《反転》を使います。合図をしたら下がって。」
『承知しました!』
『はい!』
《効果合成》で《成分複製》、《反転》、《気化》、《拡散》を合わせて精製する。
実体にあるポイントは百だけだ。全然足らないのだけど、生成は成功した。
これで実体が消えてしまうのなら仕方ない。私が泉に戻ってしまった場合は全員泉まで後退する様に指示してある。
「カクカミ、メト、準備ができたわ。」
『『はい!』』
二人は飛び退いて私の後ろに下がった。
手の中にある精製物を撒く。
今度は液体ではなく気体だ。手から離れたそれは霧の様に広がっていく。
風に乗ってゴブリンの軍勢の方へと広がっていった目に見えない猛毒の気体は、彼らの鼻や口から体内に入り込んだ様だ。
苦しみ出したかと思ったらその場に倒れて動かなくなる。
それは連鎖的に広がっていき、見える範囲のゴブリンは全て地に伏していた。
近くのゴブリンを調べてみると完全に死んでいるのが確認できた。
『ハル様ありがとうございます。助かりました。』
カクカミが礼を言ってくる。彼らはゴブリンがいくら襲って来ても問題なかっただろう。私達を守るために立ち回っていたから苦戦していたのだ。
「こちらこそ無理をさせてしまってごめんなさいね。」
カクカミとメトが怪我をしていないか調べてみたが、やはり怪我はなかった。
「お母さんは大丈夫?」
颯太に聞かれて自分の状態を確認する。
実体のポイントは減っていない。どうやら使用したのは付与力の方だ。足りない場合は付与力から消費するのだろうか?
いや、意識すればどちらを消費するかを選択できるのかもしれない。
それについては要検証か。
「大丈夫よ。颯太も怪我はないわね?」
「うん平気だよお母さん。」
元気に頷く颯太を見て安心した。
ゴブリンの方は攻めて来ていた軍勢全てが死亡している為、これ以上の戦いにはならない。
第二波が来なければ。
「ハル様、ゴブリンどもは撃退できましたがこれからどうされますか?」
「暫くこの場で様子を見ます。まだ攻めてくるなら同じ様にやるしかないわ。」
私のやった事は虐殺ではないのか?
しかし、ああでもしなければヨキやカノオ達が危なかっただろう。私を守ってくれていた彼らを失う訳にはいかない。
話し合いに応じる事もなく、攻め入ってくる彼らが悪いのだ。情けをかける必要はない。
そう自分に言い聞かせて全員に声を掛ける。
「私達に向かってくるものは何であろうと排除します。」
生命の取り合いだ。躊躇していたらこちらが死ぬ。
覚悟を決めよう。
「俺達の出番だ!全員気合を入れろ!!」
ヨキが全員に発破を掛けて前進していく。
高い所から飛び降りて来たばかりのゴブリンを狙って倍以上に太くなった腕を大きく振りかぶって拳を繰り出す。
殴られたゴブリンは頭が吹き飛んでいた。
「幾ら攻めてこようとも俺がいる限りハル様とソータ様には指一本触れさせねぇ!!」
他のコボルト達も手にした武器で次々とゴブリンを倒していく。颯太も足元の小さな草をゴブリンの足に絡めて転ばせたりして援護している。
しかしゴブリンの勢いは止まらない。次々と迫り来るゴブリン達の攻撃に怪我をする者も増えてきた。
私は《成分複製》で泉の水を作って怪我をした人に掛けていく。
傷は治せるし、元気を無くしていた者を励ます事はできてもゴブリン達の勢いに押される者も増えてくる。
撤退するべきか。
いや、泉まで後退しても何も解決できないだろう。
ならば迎撃態勢の整っているここで押し返した方がいいだろう。ならばここはやるしかない。
「カクカミ、メト、《反転》を使います。合図をしたら下がって。」
『承知しました!』
『はい!』
《効果合成》で《成分複製》、《反転》、《気化》、《拡散》を合わせて精製する。
実体にあるポイントは百だけだ。全然足らないのだけど、生成は成功した。
これで実体が消えてしまうのなら仕方ない。私が泉に戻ってしまった場合は全員泉まで後退する様に指示してある。
「カクカミ、メト、準備ができたわ。」
『『はい!』』
二人は飛び退いて私の後ろに下がった。
手の中にある精製物を撒く。
今度は液体ではなく気体だ。手から離れたそれは霧の様に広がっていく。
風に乗ってゴブリンの軍勢の方へと広がっていった目に見えない猛毒の気体は、彼らの鼻や口から体内に入り込んだ様だ。
苦しみ出したかと思ったらその場に倒れて動かなくなる。
それは連鎖的に広がっていき、見える範囲のゴブリンは全て地に伏していた。
近くのゴブリンを調べてみると完全に死んでいるのが確認できた。
『ハル様ありがとうございます。助かりました。』
カクカミが礼を言ってくる。彼らはゴブリンがいくら襲って来ても問題なかっただろう。私達を守るために立ち回っていたから苦戦していたのだ。
「こちらこそ無理をさせてしまってごめんなさいね。」
カクカミとメトが怪我をしていないか調べてみたが、やはり怪我はなかった。
「お母さんは大丈夫?」
颯太に聞かれて自分の状態を確認する。
実体のポイントは減っていない。どうやら使用したのは付与力の方だ。足りない場合は付与力から消費するのだろうか?
いや、意識すればどちらを消費するかを選択できるのかもしれない。
それについては要検証か。
「大丈夫よ。颯太も怪我はないわね?」
「うん平気だよお母さん。」
元気に頷く颯太を見て安心した。
ゴブリンの方は攻めて来ていた軍勢全てが死亡している為、これ以上の戦いにはならない。
第二波が来なければ。
「ハル様、ゴブリンどもは撃退できましたがこれからどうされますか?」
「暫くこの場で様子を見ます。まだ攻めてくるなら同じ様にやるしかないわ。」
私のやった事は虐殺ではないのか?
しかし、ああでもしなければヨキやカノオ達が危なかっただろう。私を守ってくれていた彼らを失う訳にはいかない。
話し合いに応じる事もなく、攻め入ってくる彼らが悪いのだ。情けをかける必要はない。
そう自分に言い聞かせて全員に声を掛ける。
「私達に向かってくるものは何であろうと排除します。」
生命の取り合いだ。躊躇していたらこちらが死ぬ。
覚悟を決めよう。
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