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繁栄

大群

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私と颯太は実体化して大森林の南西部へ。
私と颯太、共に百ポイントになる様に調整した。いざとなれば実体化を解いて泉に帰ればいい。

ただ、私と颯太以外はそれができない。
どうしようもなくなる前に撤退もしなければならない。

私達がいない状態では、カクカミとメトには全員を連れて速やかに逃げる様に予め伝えておいた。

「お母さん、あれ……」

カクカミの背中に乗った颯太が遠くを指差す。
ここは少し高台になっていて南西方向を見下ろすことができる。
そして見下ろした先には……

「多いわね。彼らのリーダーはどこにいるのかしら……」

木々の間から見えるゴブリンの数はどれくらいだろうか。百や二百ではないだろう。大集団が真っ直ぐこちらに向かってきている。

『奴らに勇猛さなどはありません。指示を出すものはずっと後ろにいるでしょう。』

ケリュネイアの長、カノオが教えてくれる。

『ならば雑魚を蹴散らしながら長の所へ行きますか?』

ヨキが聞いてくるけど、それはあまりにも無謀だ。視界が十分に確保できない所で動きの速い集団に襲われたらひとたまりも無いだろう。

慎重に対応するべきだ。

「カクカミ、メト、まずはゴブリン達の正面戦力と対話を試みます。こちらの呼びかけに応じない場合は攻撃を開始して構わないわ。くれぐれも囲まれない様に気をつけて。」

『畏まりました。』
『ハル様、奴らは道具を使います。何か投げてくるかも知れません。十分にお気をつけ下さい。』

私達の身を案じてカクカミが伝えてくる。

「お母さんは僕が守るからね。」
「颯太も気をつけてね。」

颯太も新しい能力を得て自信を付けている。実戦で使うのは初めてで、過信している様なら注意しないと危険だ。
とにかく全員無事に帰る事を最優先にする。

『止まれ!ゴブリンども!!』

カクカミが大音声でゴブリンの大群に呼び掛ける。私達は彼の背中に乗ったままだ。

そのサイズと、声に怯んだゴブリン達は前進をやめて見上げている。

「私は泉の精のハルといいます。あなた達の長と話をさせてください。」
『化け物の飼い主だ。奴を捕えればコイツらを従えられるぞ!』

前に出会った時と同じ事を言っている。

『一匹だけ残してあとは殺せ!』

一斉にゴブリンが動き出す。

「カクカミ、後退して。」
『畏まりました。』
『俺が前に出ます。』
「援護するよ!」

カクカミが素早く後ろに下がり、メトが前に出て飛び掛かってくるゴブリンを殴り付けている。

颯太も《植物操作》で木々を動かして前進してくるゴブリンを足止めしてくれた。

「颯太、木々を操作して私達の後ろにゴブリン達を行かせないように出来る?」
「多分大丈夫だよ!任せて!」

颯太は木々やツタを動かして通り道を塞いでいく。
その分攻撃がメトに集中しているけど、ゴブリン達の持っている石斧や棍棒や槍で攻撃では傷一つ付けられない。

私達の所にも攻撃は飛んできた。
矢の様な物が飛来するが、カクカミが頭を振って弾き飛ばしてくれた。

今のは……矢?

よく見ると木の枝の上にゴブリンが数人立っていて、矢の様なものを投げつけて来ている。

カクカミの言った通り飛び道具を持っていた。油断をしないようにしないと大怪我をしてしまうだろう。

ゴブリン達は蹴散らされても次々と襲いかかってくる。

まるで津波だ。

その狂気の光景に恐怖を覚える。

『ハル様、メトに任せてもう少し下がります。』
「私達を下ろしてカクカミも前に出て頂戴。」

メトだけに任せるのは心配だ。カクカミにも戦ってもらおう。

『承知しました。カノオよ、ハル様達を頼む。』
『お任せを。』

私達は素早くカクカミから降りてカノオのそばに移動する。

カクカミが前に出てメトと並んで戦闘を始める。

圧倒的な力に怯む様子もなく突撃を繰り返してくるゴブリン。
既にかなりの数の犠牲が出ているのに勢いは弱まらない。

次はどうするか……。
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