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破壊と再生
緑の絨毯
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雨も上がり青空が戻ってきた。
汚染も殆どなくなっているので、いよいよ《植物生成》を合成した雨を降らせる。
《天候操作》は微調整が可能だったので今回はあまり長い時間降らせずに弱めの雨を降らせることにした。
さあ、どうだろうか?
雨が止んで数日、辺りに小さな芽が出ていた。
芽はそれぞれ形が違う。色々な種類の植物が一斉に芽吹いたのだ。
見渡す限り一面緑。
「綺麗だね、お母さん。」
「本当ね……緑の絨毯みたいだわ。」
颯太と手を繋ぎながら芽吹いた緑達を眺めていた。
この子達が一斉に喋り出したら騒がしいわね。
その光景を想像して笑ってしまう。
近くに生えている芽の様子を見る。
聞いた事のない植物の名前だ。
私は山奥の農家で育ったから大抵の植物は知っている。海外の草木にはあまり詳しくないけれど。
「こんにちは。」
『…………』
何も言わない。喋ることが出来ないのかしら?
「この子達、喋れないんじゃないかな。」
「颯太はすぐに喋れたのにね。」
「多分だけど喋れる植物とそうじゃない植物がいるんじゃないかな?」
颯太の言った通り、他の子にも声を掛けてみたけど返事はなかった。
「ちょっと残念ね。」
「僕は全然良いけどね。だってお母さんを独り占めできるもん。」
「まあ……颯太ったら。」
この若芽達が育っていくのを2人で見守っていくのも悪くはないわね。
☆★☆★
更に月日は流れ、芽吹いた植物達は順調に大きくなり、泉の周りは森の様になっていた。
私もまた少し成長して今は12歳位だろうか、泉に映った姿は薄い水色の髪に青い瞳、外国人の様な容姿をしていて驚いた。
人の姿の颯太も10歳位まで成長していた。
二人ともゆったりとした白い服を着ているのだけど、これは成長に合わせてサイズが変わっている様だ。
精霊は衣服についても困る事はないみたいだ。
木の方の颯太の樹高はもう下からでは分からないほど伸びていて、幹なんて私が3人いても手が届かないくらい太くなった。立派に育ってくれて嬉しい。
泉はというと、あれから少しずつ大きくしたりしているけど、あまり変化はない。透き通った水の中には植物は生えておらず、小さな虫一匹見当たらない。
「颯太は泉から栄養を摂っているのよね?」
「そうだよ。」
「他の子達も泉から摂っているのだから悪い訳はないのだろうけど。」
「何かあったの?」
「普通は泉って水草が生えたり何かしらの生物がいると思うの。それなのにここには何も生えてこないから心配で。」
「お母さんの泉が悪い訳はないよ!きっとみんな遠慮しているんだよ。」
植物が育つのに遠慮を?……まあこの世界ならあり得るかもしれないわね。
私達はどれくらいの年月を2人で過ごしてきたのだろう?
ただただこの大地に緑を取り戻そうとあれこれやってきたけれど、ここまでくるのにかなりの時を要した筈だ。
「お母さん、少しだけ遠出してみようか。泉からあまり離れた事なかったよね?他の所に生き物がいるかもしれないよ。」
そう、私達は泉の周りから離れたことがなかった。何故かは分からないけど離れてはいけない気がしたからだ。
「そうね。少しだけ様子を見てみましょう。」
颯太と手を繋いで森の中を進んでいく。
泉から離れる度に不安な気持ちが増していく。これはなんだろう……?
「僕も変な感じだよ。僕達精霊は本体である泉や木からあまり離れられないのかもしれないね。」
「離れ過ぎたら良くないのかも知れないわ。もう少し歩いたら帰りましょう。」
森は鬱蒼としていて緑の匂いが濃い。近くに小川が流れていて、小さな動くものがいた。
あれは……ネズミ?
ズングリとした体型の20センチくらいの野ネズミの様な生き物が何かの実を齧っている。
「あ母さん!あれ!」
「ええ、あれが動物よ。良かった……ちゃんと他の生命も生まれているのね。」
ただそれだけの事が堪らなく嬉しかった。
汚染も殆どなくなっているので、いよいよ《植物生成》を合成した雨を降らせる。
《天候操作》は微調整が可能だったので今回はあまり長い時間降らせずに弱めの雨を降らせることにした。
さあ、どうだろうか?
雨が止んで数日、辺りに小さな芽が出ていた。
芽はそれぞれ形が違う。色々な種類の植物が一斉に芽吹いたのだ。
見渡す限り一面緑。
「綺麗だね、お母さん。」
「本当ね……緑の絨毯みたいだわ。」
颯太と手を繋ぎながら芽吹いた緑達を眺めていた。
この子達が一斉に喋り出したら騒がしいわね。
その光景を想像して笑ってしまう。
近くに生えている芽の様子を見る。
聞いた事のない植物の名前だ。
私は山奥の農家で育ったから大抵の植物は知っている。海外の草木にはあまり詳しくないけれど。
「こんにちは。」
『…………』
何も言わない。喋ることが出来ないのかしら?
「この子達、喋れないんじゃないかな。」
「颯太はすぐに喋れたのにね。」
「多分だけど喋れる植物とそうじゃない植物がいるんじゃないかな?」
颯太の言った通り、他の子にも声を掛けてみたけど返事はなかった。
「ちょっと残念ね。」
「僕は全然良いけどね。だってお母さんを独り占めできるもん。」
「まあ……颯太ったら。」
この若芽達が育っていくのを2人で見守っていくのも悪くはないわね。
☆★☆★
更に月日は流れ、芽吹いた植物達は順調に大きくなり、泉の周りは森の様になっていた。
私もまた少し成長して今は12歳位だろうか、泉に映った姿は薄い水色の髪に青い瞳、外国人の様な容姿をしていて驚いた。
人の姿の颯太も10歳位まで成長していた。
二人ともゆったりとした白い服を着ているのだけど、これは成長に合わせてサイズが変わっている様だ。
精霊は衣服についても困る事はないみたいだ。
木の方の颯太の樹高はもう下からでは分からないほど伸びていて、幹なんて私が3人いても手が届かないくらい太くなった。立派に育ってくれて嬉しい。
泉はというと、あれから少しずつ大きくしたりしているけど、あまり変化はない。透き通った水の中には植物は生えておらず、小さな虫一匹見当たらない。
「颯太は泉から栄養を摂っているのよね?」
「そうだよ。」
「他の子達も泉から摂っているのだから悪い訳はないのだろうけど。」
「何かあったの?」
「普通は泉って水草が生えたり何かしらの生物がいると思うの。それなのにここには何も生えてこないから心配で。」
「お母さんの泉が悪い訳はないよ!きっとみんな遠慮しているんだよ。」
植物が育つのに遠慮を?……まあこの世界ならあり得るかもしれないわね。
私達はどれくらいの年月を2人で過ごしてきたのだろう?
ただただこの大地に緑を取り戻そうとあれこれやってきたけれど、ここまでくるのにかなりの時を要した筈だ。
「お母さん、少しだけ遠出してみようか。泉からあまり離れた事なかったよね?他の所に生き物がいるかもしれないよ。」
そう、私達は泉の周りから離れたことがなかった。何故かは分からないけど離れてはいけない気がしたからだ。
「そうね。少しだけ様子を見てみましょう。」
颯太と手を繋いで森の中を進んでいく。
泉から離れる度に不安な気持ちが増していく。これはなんだろう……?
「僕も変な感じだよ。僕達精霊は本体である泉や木からあまり離れられないのかもしれないね。」
「離れ過ぎたら良くないのかも知れないわ。もう少し歩いたら帰りましょう。」
森は鬱蒼としていて緑の匂いが濃い。近くに小川が流れていて、小さな動くものがいた。
あれは……ネズミ?
ズングリとした体型の20センチくらいの野ネズミの様な生き物が何かの実を齧っている。
「あ母さん!あれ!」
「ええ、あれが動物よ。良かった……ちゃんと他の生命も生まれているのね。」
ただそれだけの事が堪らなく嬉しかった。
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