2 / 38
プロローグ~人生の動き始めた日~
俺と彼女のプロローグ2
しおりを挟む
「うんうん、そのマジですって顔が見たかったんだ。さっきまで苦い顔か、気が抜けた顔しかしなかったからさぁ」
少女のはじけるような笑顔に、さっきまでの緊張感は飛ぶ。思わず、口元が緩んだ。
「えっ……あぁ、そうか?」
「じゃ、早速、このスマホのロック、君の指紋に変えちゃおう! 通帳の暗証番号とか教えるから忘れないでね」
急に話が進む。少女はスマホを、彼女の指紋で開くと、早速設定をいじり始めた。
「えっ……本当にお前のスマホなの?」
「そうだよ、僕の趣味用のスマホ」
なんだか、俺はとんでもない勘違いをしている気がするので、一応聞いておこう。
「……5億ってのは、親にもらったお小遣い? それとも当たった宝くじ?」
「いいや、僕のお金だよ?」
ん? ちょっと待て、5億のスマホがこの少女のもので、5億のお金はそもそも彼女のもの。どこから盗んできたわけでも降ってきたわけでもなく、彼女自身のお金。
「じゃあ、見ず知らずの人間に、お金を貸すってこと!?」
「んー、僕からしたら見ず知らずじゃないんだけどなー」
そういうと、持っていたポシェットの中から、カード入れを取り出す。そして2枚のカードを俺の前に突き出した。1枚は健康保険証。名前には「影山明」と書かれている。もう一枚は、社員証だ。だが金色の、明らかにVIPといった感じのカード。
「影山グループ……代表取締役社長……?」
「そう、同じ23歳で社長、影山明とは僕のことだよー! 例えば、君の働くファミレスも、スーパーも、全部影山商事の子会社!」
「えええええええええっ!!!」
「君は何回か転職している。その転職先のほとんどがなんと影山グループだったのだー! だから、働きぶりは僕のもとにもちゃんと届いてたよ。だから僕は、ずっと君を見てたんだ」
「ぁ……ええええええええっ!!!」
待ってくれ、驚きが多すぎる。そもそも俺より年下に見えるこの少女が同級生、そして若くして代表取締役社長。そしてなんと、俺の働いてきた転職先ほとんどが影山グループ! そうだった、今思えばそうだ。
次のバイト先を見つけるとき、店長が「あの店グループ店だし、受かるんじゃない?」とか言ってた。経済ニュースとかでも、大体俺の働いてる店って取り上げられてた。グループ会社で業績上がってるって!
俺この人のもとでずっと働いてたんだわ! うあああ、なんか恥ずかしい、申し訳ねぇ社長!
「生意気な口きいてすんませんでした社長!」
地面に頭が突き刺さるほどの勢いで土下座をする。砂利だらけの顔で見上げた社長は、全く不機嫌そうな顔をしておらず、むしろ腹を抱えてげらげら笑っていた。
「そんなぁーあははははっ! 別にこんなカード印籠でもないって、ご老公じゃないんだからさぁ」
「で、でも、俺すごく失礼な……」
「同い年なんだし、対等に話そうよ。矢崎進くんであってるよね。進くんって呼んでいい? 明ちゃんって呼んでほしいからさ」
「アカリ……チャン……?」
呼べるかよ! しかし状況を一回整理しよう。同い年にして、俺のバイト先の社長、影山明が、ちゃんづけで呼んでほしいだけでなく、5億貸してくれる。俺にとってはメリットありまくりだが、彼女にメリットなんかあるのか? 社員に勝手に金を使われるんだぞ?
5億貰うのは信じよう。だが、こんなうまい話あるわけないし、もしかして、テレビか何かの企画か? ドッキリのような……
「ねぇ、進くん。いろいろと考えてるなぁっていうのは、顔に出てるよ」
「え?」
「だって、ずっと下唇の端っこ噛んでるもん。癖だよね」
そういえば、そうだったかなぁ。自分でも知らなかった癖だ。確かに唇を触ってみると、噛んだ後があった。俺の考えは、彼女には筒抜けなのかな。
「考えてるみたいだから言うけど、これはドッキリでもないし、社員サービスでもない。僕は君にお金をあげたくてあげたんだ」
「……でも、あなたに、メリットあるんですか?」
「はいはい、敬語使わない! メリットはあるよ」
彼女は怪しく目を細め、ニヤリと笑う。彼女の言葉に、俺は思わず唾をのんだ。
「いつかは君に、僕のすべてを預けたいと思ってるんだ。僕には大きなメリットだよ」
それは俺にとって、大きなデメリットな気がする。だが、人生が少しでも変わるなら、それに一つ賭けてみよう。
それが投資か、ギャンブルか、まだわからない。
少女のはじけるような笑顔に、さっきまでの緊張感は飛ぶ。思わず、口元が緩んだ。
「えっ……あぁ、そうか?」
「じゃ、早速、このスマホのロック、君の指紋に変えちゃおう! 通帳の暗証番号とか教えるから忘れないでね」
急に話が進む。少女はスマホを、彼女の指紋で開くと、早速設定をいじり始めた。
「えっ……本当にお前のスマホなの?」
「そうだよ、僕の趣味用のスマホ」
なんだか、俺はとんでもない勘違いをしている気がするので、一応聞いておこう。
「……5億ってのは、親にもらったお小遣い? それとも当たった宝くじ?」
「いいや、僕のお金だよ?」
ん? ちょっと待て、5億のスマホがこの少女のもので、5億のお金はそもそも彼女のもの。どこから盗んできたわけでも降ってきたわけでもなく、彼女自身のお金。
「じゃあ、見ず知らずの人間に、お金を貸すってこと!?」
「んー、僕からしたら見ず知らずじゃないんだけどなー」
そういうと、持っていたポシェットの中から、カード入れを取り出す。そして2枚のカードを俺の前に突き出した。1枚は健康保険証。名前には「影山明」と書かれている。もう一枚は、社員証だ。だが金色の、明らかにVIPといった感じのカード。
「影山グループ……代表取締役社長……?」
「そう、同じ23歳で社長、影山明とは僕のことだよー! 例えば、君の働くファミレスも、スーパーも、全部影山商事の子会社!」
「えええええええええっ!!!」
「君は何回か転職している。その転職先のほとんどがなんと影山グループだったのだー! だから、働きぶりは僕のもとにもちゃんと届いてたよ。だから僕は、ずっと君を見てたんだ」
「ぁ……ええええええええっ!!!」
待ってくれ、驚きが多すぎる。そもそも俺より年下に見えるこの少女が同級生、そして若くして代表取締役社長。そしてなんと、俺の働いてきた転職先ほとんどが影山グループ! そうだった、今思えばそうだ。
次のバイト先を見つけるとき、店長が「あの店グループ店だし、受かるんじゃない?」とか言ってた。経済ニュースとかでも、大体俺の働いてる店って取り上げられてた。グループ会社で業績上がってるって!
俺この人のもとでずっと働いてたんだわ! うあああ、なんか恥ずかしい、申し訳ねぇ社長!
「生意気な口きいてすんませんでした社長!」
地面に頭が突き刺さるほどの勢いで土下座をする。砂利だらけの顔で見上げた社長は、全く不機嫌そうな顔をしておらず、むしろ腹を抱えてげらげら笑っていた。
「そんなぁーあははははっ! 別にこんなカード印籠でもないって、ご老公じゃないんだからさぁ」
「で、でも、俺すごく失礼な……」
「同い年なんだし、対等に話そうよ。矢崎進くんであってるよね。進くんって呼んでいい? 明ちゃんって呼んでほしいからさ」
「アカリ……チャン……?」
呼べるかよ! しかし状況を一回整理しよう。同い年にして、俺のバイト先の社長、影山明が、ちゃんづけで呼んでほしいだけでなく、5億貸してくれる。俺にとってはメリットありまくりだが、彼女にメリットなんかあるのか? 社員に勝手に金を使われるんだぞ?
5億貰うのは信じよう。だが、こんなうまい話あるわけないし、もしかして、テレビか何かの企画か? ドッキリのような……
「ねぇ、進くん。いろいろと考えてるなぁっていうのは、顔に出てるよ」
「え?」
「だって、ずっと下唇の端っこ噛んでるもん。癖だよね」
そういえば、そうだったかなぁ。自分でも知らなかった癖だ。確かに唇を触ってみると、噛んだ後があった。俺の考えは、彼女には筒抜けなのかな。
「考えてるみたいだから言うけど、これはドッキリでもないし、社員サービスでもない。僕は君にお金をあげたくてあげたんだ」
「……でも、あなたに、メリットあるんですか?」
「はいはい、敬語使わない! メリットはあるよ」
彼女は怪しく目を細め、ニヤリと笑う。彼女の言葉に、俺は思わず唾をのんだ。
「いつかは君に、僕のすべてを預けたいと思ってるんだ。僕には大きなメリットだよ」
それは俺にとって、大きなデメリットな気がする。だが、人生が少しでも変わるなら、それに一つ賭けてみよう。
それが投資か、ギャンブルか、まだわからない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる