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Chapter 2 猫は居すわる。にゃーにゃ―!

第10話 あのね。なんでもないけど。 File 2

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私が意識を閉ざしてもう1年になるのかぁ。
パパとママ。悲しんでいるよね。きっと。……ごめんね。

でもね、これはどうしても必要なことだったみたい。私も始めは知らなかったんだよ。教えてくれたのはパパとママが良く知っている人からだったんだ。
愛美が意識を閉ざしたのは病気でも、事故でもなんでもない。
時の流れがそうさせたんだ。

そして、私が彼女を救うきっかけを作ることで、未来が変わる。
本当はさ、愛美はこの世界に。この世に生まれてこなかった。そんな世界が二人の未来にはあるんだよ。
パパとママが別れてそのままの世界が。

パパ、久我雄太は蓬田香と別れて別な女性と結婚する。そして、その逆の世界もある。
どちらにしても、この私は生まれて来なかった世界。
どちらも、お互いに不幸な世界。なのかは分からないけど。

別れたくなんかなかったんだよね本当は。でも二人は別れてしまった。久我雄太が別な人を愛し、結婚した世界ではママは物凄く後悔しちゃうんだ。別れたんだけど、パパの事が諦めきれずにいたママは、この後いろんな人と付き合うんだけど、どの人共うまくいかなくて、婚期を逃がしちゃうんだ。開き直ったうていうか、諦めちゃったんだよね。ずっと独身のまま通しちゃうんだよ。

それでさ、その逆の場合。ママ、蓬田香がパパじゃない人と結婚しちゃうんだよ。もしかしたらこのパターンが一番しっくりいっていたのかもしれないね。久我雄太も新たな恋が始まり、その道へと進んでいく。

結果二人の接点は無くなっちゃうんだ。当然私の存在は無いよね。
でもさ、これはどうしてかは分からないけど、愛美はどの世界にも存在していたんだよ。私とまったく同じ人じゃないんだけど、だけど、繋がりのある人が。

それを教えてくれたのが野木崎美愛さんだった。
美愛さんは、16の時に事故で家族と共にこの世を去っていた。
それが本当の世界だったんだ。

全ては繋がっている。
どんな世界であっても全ては同じ事。


「あと少し……。あと少しで彼女が望む。世界が繋がる」

その時、私が目覚める時間ときがやってくる。



「初めてじゃないか、こうして3人で出かけるのって」
「そう言えばそうだね」
「そっかぁ。そうだね」香さんも私の顔を見ながらニコッとして言う。

別に香さんに対して敵対心なんて持っていないんだけど、ちょっと恥ずかしかっただけなんだけど。思わず目をそらしてしまった。

「あらあら、もしかして私お邪魔だったのかしら?」
えっ! そうじゃないでしょ。誘ったのは香さんでしょ。
「あ、美愛ちゃんちょっと怒ったでしょ。可愛いなぁ。ねぇ手つなぎましょ」

香さんは軽く私の手を取って握った。
「はい、雄太は反対側の手を握ってやって」
「えっ、俺もか?」
「そうよ。美愛ちゃんを真ん中にして歩くの」

「なんか恥ずかしいよぉ」
「いいんじゃない」
「あのさ、これってどう見られてんだろう?」
「仲のいい親子風景って言う感じかなぁ」
「親子? に、しては、娘役歳合わねぇんじゃねぇのか?」
「うんうん、そうだよ。香さん」

「そうかぁ、じゃ、仲のいい恋人たち」
「ちょっと俺ってどんな存在なんだよ」
「んっもうなんでもいいの。こうして3人仲良く出来ているんだから」
「じゃぁ、雄太さんの隣は香さんじゃないと」

雄太さんの手を放して一歩後ずさりをした。
「それじゃ雄太を真ん中にしちゃえ!」
「あのぉ、どうでもいいんだけど、駅着いたぞ」
「あははは、そうだね」

なんか今日の香さんテンション高いなぁ。私に気を使ってくれてるのかなぁ。
そんなことしなくたっていいのに。
無理しなくてもいいんだよ香さん。
ちらっと覗いた香さんの顔には。何で私が思ったことが分かったんだろか?
無理なんかしてないよ。て言う顔で返された。
それならいいんだけど。

ショッピングモールに着くと迷わずお目当ての店に向かう香さん。すかさずその後を遅れることなくついていく雄太さん。さすが息ピッタリ。て、なんか変なところで感心している私って何?

さすがに女性水着をバァン! と展示している店内には雄太さんも入りずらいんだろね。何も言わず近くのソファーに座って、持久戦の待ち時間をスマホでやり過ごす体制がもうすでに出来ている。
こりゃぁ、雄太さん今まで相当香さんに付き合わされていたんだって言うのが良く分かるわ。

「ねぇ香さんはどんな水着にするの?」
「ん――――どうしよっかなぁ。もうビキニって言う年じゃないし」
「そうかなぁ―。香さんスタイルいいからビキニ似合いそうなんだけど」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。本当はさ、今年が最後かなぁって、出来れば着たいんだようねぇビキニ」

「まだまだいけるって」
「そぉ? じゃぁ美愛ちゃん見立ててくれる?」
「なははは、でも私センスないけどいいの?」
「うんうん、大丈夫。例え超露出のビキニでも試着だけはしてみるから」
「あ、そうですか分かりました。それじゃ見繕ってきます」
「お願いね」

なんだか楽しいなぁ。こういうところに来るの初めてだし。水着なんて選んだことなんかないけど、香さんに似合いそうな水着を一生懸命に探した。
香さんも展示してあるマネキンの水着を見ながら、店内を見回っていた。
ようやく選んだ3着の水着をもって香さんの所に行くと、香さんも3着水着を持っていた。

「あのぉ、これ選んできたんですけど」
私の持っている水着を見て「あらいいんじゃない。やっぱり美愛ちゃんこういうの選ぶの上手じゃない」
「そ、そんな事ないです。試着してくれますか?」

「うん、じゃ、こっち美愛ちゃん試着して」

「へっ、私もですか?」
「そうよ美愛ちゃんもよ」

ありゃりゃ、なんだか物凄く恥ずかしいんですけど!!
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