【改訂版】この世界に足を踏み入れたら抜け出せないじゃないですか……

さかき原枝都は

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あま~い 桃生活

ついに修羅場? 亜希子と真由美の対決 その1戦

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尚子さんのお店を任されて3日目が過ぎた。
真由美との息もぴったりと、不思議なくらい仕事は順調。

お客さんからは、いつものおねぇさんは? と聞かれることが何度かあったけど、事情を説明すると

「君達でも十分に僕らを楽しませてくれているよ。頑張ってね」

にっこりと励ましの言葉を会計の時に、投げかけてくれるお客さんの姿にやりがいさえ感じてきていた。

そして今日は定休日の日。
尚子さんからメッセージで

「定休日はちゃんと取ってね。無理に開ける必要はないから」
とメッセージが来ていた。

私たち二人でことのほか順調にお店が運営出来ていることに、尚子さんも安心しているようだ。

ただ、美代ねぇからは何も音沙汰はない。

尚子さんと一緒にいる美代ねぇはいったい、何をしているんだろう?

少しくらい心配してくれたっていいのに……。

いつもはあんなに私に頼りきりの美代ねぇ。

もしかして私寂しがっている? 

美代ねぇのいない日々。それが私には何か抜け落ちているような不思議な感じがしているのは多分事実だ。

その分いま、私の傍に真由美がいてくれているのは本当に助かっている。
もしたった一人っきりだったら……。

朝食を食べ終え、真由美はソファで雑誌を眺めている。

「真由美、コーヒー飲む?」
「うん、飲みたい」

雑誌からひょこッと顔をのぞかせて、私を見つめている。

「亜美今日はちょっと元気ないね」
「そうぉ?」

「熱でもある?」

真由美が私の所に来ておでこをくっつけた。

「ドキッ」とした。
よけいに熱が上がりそうだ。


「大丈夫そうだね」
「そうでしょ」

出来上がった珈琲をカップにし注いで、テーブルに置いた。
「いい香り」
「うん、そうだね」

「亜美、やっぱりなんか変だよ。何かあった?」

何もないよと真由美に隠し通すべきだろうか? 

確かに美代ねぇから何も連絡がないという事も気になっているんだけど、実はもっと気になることが、目覚めの私を襲った。


何時もの様に真由美が私の寝顔を見つめながら、私は目を覚めた。

彼女の笑顔が目を開けた時。私のこの目に入り込む。至福の朝の時だ。

軽くおはようのキスをして、真由美は先に朝食を作るためにベッドを出た。

まだふわふわとした心地いい感情が私を包み込んでいる時、スマホがラインのメッセージ着信を知らせた。

亜希子からだった。

最近亜希子からは何も連絡が来ていない。

いったいどうしているんだろうかと、心の片隅で気にかけてはいたんだが、いざ、その亜希子からメッセージが来ると、何となくそのメッセージを見るのが怖くなる。


「私見ちゃっんだ。亜希子ちゃんが男の人と手を繋いでいるの」

夏休みに入る前の私たち3人のあの姿が目に映る。

亜希子が所かまわず私にべたべたと寄り添うその姿、少しはにかみながら、私に触れることで、その幸せをかみしめているかのようなあの表情。


真由美はその後ろで私たちのその姿をずっと見ていたんだ。

自分の気持ちを、爆発しそうになるその気持ちを一生懸命に抑えながら、平然を装っていた真由美。

でも今はもう違う。

真由美のそのため込んでいた想いは、一気に私へと注がれた。
その想いを私は受け入れたんだ。

だけど、亜希子の気持ちはどうなっちゃうんだ?

それがずっと気にかかっていた。

もしかしたら、わたしたち3人の仲は崩れてしまうかもしれない。

出来る事なら仲のよかった私たち。
このまま変わらないでほしいと、私は実のところ願っている。

でも、真由美は亜希子に対しては嫉妬心を抱いているのは確実だ。

今まで通り、私と亜希子が接することに真由美は反発心をもつだろう。

ならば正直に、私と真由美の今の関係を亜希子に打ち明けるべきだろうか?

そうした時、亜希子はどんな反応をしてくるんだろう……。

こんな時、もし美代ねぇがいたなら、私は美代ねぇに相談しているだろうな。

ラインでも電話でも、美代ねぇに連絡を取ることは出来る。でも、なぜかその行動には移せなかった。

「やっぱ変、亜美。何か隠し事してるでしょ」

真由美がわたしの目を見ながら、問いただす。


「私にも言えない事なの?」


「あ、いや、そう言う訳じゃないんだけど」

「だったら言って、表にまで出てくるようなことなんだから、もう隠してなんておけないでしょ」

「亜希子の事なんだけど」

亜希子とその名を聞いた時、真由美の顔色が一瞬変わった。

「実は真由美がベッドを出たあと、亜希子からラインが来ていたんだ」

「亜希子ちゃんから……なんて?」

そのメッセージをそのまま真由美に見せた。

「亜美最近ご無沙汰。急なんだけど、ちょっと相談と、報告があるんだけど。もしよかったら、亜美の所に行ってもいい?」

今の時間はもう10時を過ぎていた。時間の指定はしていなかったけど、もしかしたらもうじき亜希子はここに来るかもしれない。

亜希子は今の私と真由美とのこの関係を、まだ知らないはずだ。

ここにきて、私たち二人のこの関係を知ったら亜希子はなんて思うんだろう。私たち3人の今までの友情? 仲の良さは崩れてしまうんだろうか。

そんな不安がずっと私の中で湧いていた。

「そっかぁ、亜希子ちゃんからメッセージが来ていたんだぁ」

平然と返す真由美。
「怒らないの?」
「何で怒らないといけないの?」

「だってさ真由美、亜希子には嫉妬しているんでしょ」

「うん、嫉妬……しているよ。亜美とべたべたしていたあの光景を思い出すたびに私の胸の中が物凄く苦しくなちゃうのは本当だよ」

「だから、真由美の事を思うと、どうしたらいいのか分からなくなっちゃって」

「そっかぁ、ごめんね亜美。亜美に変な心配かけさせちゃったみたいで。でもねこれは亜美が悩む問題じゃない。

私と亜希子ちゃんがちゃんと向き合わないといけない事なんだから」

なんか物凄く強くなった感じがするよ真由美。

「大丈夫よ。私はありのままの事を亜希子ちゃんに話します。いずれ、こういう機会は持たないといけないと思っていたから」

うううう、なんか浮気がばれた夫が妻と、その浮気相手との一騎打ちの対決にこれからなだれ込みそうな感じがする。

最後に「さぁ、あなたはどっちを選ぶの?」なんて聞かれたらどう答えたらいいんだぁ……。

修羅場だ、修羅場がもう時期私を食い尽くすんだ。

そんなことを考えていると「ピンポン」と、インターフォンが鳴った。

やっぱり亜希子だった。
「ねぇ、亜美いるぅ」

居留守を使いたいとこだけど、もうこうなったら亜希子を迎えるしかない。

「今開ける」

オートロックを解除して、ドアのロックを解除した。

「いやー、今日も暑いねぇ。亜美久しぶり!」

相変わらずの亜希子。何も変わったそぶりは感じられなかった。

「ほ、ほんと最近おとなしかったね」

「ははは、そうかぁ、私の方が忙しかったからなぁ」

「さぁ、上がって」
亜希子を玄関から、リビングへを向かわせた。

「いやぁーここに来るの、引っ越しの時以来だからなんか緊張するなぁ」

と、リビングでソファーに座る真由美の姿を見て。

「あれぇ―、真由美も来ていたんだぁ」


「こんにちは亜希子ちゃん」


何もなかったように、ここにいて当然という感じで、真由美は亜希子に挨拶をした。

「喉乾いたでしょ。冷たいのがいいよね」

「お、さすが亜美。気が利くねぇ」

「好きなところに座っていいよ」

グラスに、氷とオレンジジュースを入れて、亜希子の前にそっと置いた。

「サンキュー、ひゃー生き返るよ」

何となく重い空気が私を押し付けているような気がしてならない。

「ねぇねぇ、珍しいね、真由美が亜美の所に一人で来ているなんて」

「そうぉ?」

「そうだよだって今までこんな感じで、亜美に会う事なんてなかったからね」


「私がいるともしかして邪魔?」


「邪魔って、別にそんなこと言っているんじゃないよ」

「そう、それならよかった。実はね、今、私亜美と一緒にここで暮らしているの」

「えっ!? ……暮らしているって。どういうことなの亜美」

「はぁ~、まぁそう言う事だよ亜希子」

「えっ、えっ……ちょっと良く私わかんないんだけど」

混乱する亜希子。そりゃ、そうだよな。

「あっ! そう言う事かぁ」

何か閃いたのか亜希子は

「確かここってさぁ、真由美のおねぇさんが管理していたとこだったよね。そんでもってこの部屋も、おねぇさんが使っていた部屋だったんでしょ。

それで、真由美がおねぇさんの代わりにここに住んでいるっていう事なんでしょ」

此奴の勝手な思い込みと、空気を読まないこの性格が物凄くうらやましい。

「ところでさぁ、ラインで送って来たことって何なの?」

ここはまず、亜希子の事を先に進めた方がよさそうだ。

「あ、それね。あのね、私バイト始めたんだ」

「バイト?」

「うん、毎日あるわけじゃないんだけど、ほら、夏ってさぁ、あちこちでイベントとか多いじゃん。

そのイベントなんかで入場者のチケット受け付けたり、会場案内とかする仕事なんだけど。これが意外と大変なんだぁ」

「亜希子がそんなバイトしていたなんて、最近何も連絡よこさない訳だ」

「ごめんねぇ、亜美にはバイトの事教えておこうと思ってたんだけど、ちょっとね、いろいろあって……」

「ちょっと色々あって……」

なんだかもう何か見え隠れし始めてきている。

「男の人と手を繋いでいた」

その事実もこの際、全部暴露していただきますか……亜希子。

でもそれを静かに聞いている真由美の姿を見て、いつ爆発すのか?
不安でいっぱいな私、亜美。


さてこの先どうなるんだろう?
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