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あま~い 桃生活
私と真由美の二人の想い その1なのです。
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ここの所何もない平穏な日々が続いている。
尚子さんのお店でやったメイド服喫茶。あの興奮に似た感情は少しずつ薄れ、今では逆に心地いい位に感じるまで落ち着いている。
それはそうと夏休みの宿題は、まだ山のように残っている。
このまま手を付けないでいたら、最終日目前に涙目でこなさなければいけい事実が待ち受けているのは確実だ。
美代ねぇは、取材? と言って、1週間ほど旅に出た。なぜかそこに尚子さんも同乗しているのは、何となく不思議なところもあるんだけど。
その間、私はあの喫茶店を任されてしまった。
「亜美ちゃんなら大丈夫。それにイベントも終わったし、この時期意外と暇なの。亜美ちゃんならパフェも作れるし、メニューにある料理は出来るはずだから大丈夫。何かあったらすぐに私に連絡してくれれば対応は出来るから」
えらい信用されている……本当にいいんだろうか?
真由美も駆けつけて手伝いに来てくれた。
また二人で、あの時の様に……と、思っていたが、予想を反して物凄く暇。
「暇だねぇ」
「そうだねぇ」
と、いう事で、お客さんが来ていないときは二人で、宿題をこなすという案にたどり着いた。
「二人だとほんとはかどる。真由美は文系得意だからほんと助かるよ」
「ううん、こっちこそ亜美は理数系得意だから、私ほんとダメなの、特に数学なんか暗号解くみたいで目眩しちゃうくらいなんだもの」
「目眩とはそれ言い過ぎなんじゃないの」
「ははは、でもほんとにそうなんだもの」
「ところでさぁ、最近亜希子連絡も何もよこしてきていないんだけど、こっちからも連絡はしていないんだけど、何もないのが不思議なんだよねぇ」
「そうねぇ、確かに亜希子ちゃん静かよねぇ」
そうなのだ、あの亜希子から、ラインも何も入ってこない。
今までうざいくらいに何かあればメッセージやら、家に来たり呼びつけたりと、振り回すあの亜希子からプツリと音沙汰がない。
「この暑さで干からびていたりして」
おいおい、真由美。言うようになったな。
「連絡してみよっか」
「やめておいたら?」
「どうして?」
真由美はちょっとためらいながら
「本当はね、私見ちゃったの」
「何を……」
「いつもの本屋さんの前を通った時、偶然見ちゃったの。亜希子ちゃん、男の人と手を繋いで歩いているところ」
「はへぇ? 亜希子が男と手を繋いでいた……」
「うん、しかもね……なんかいい雰囲気に見えたんだぁ」
「それで」
「それっでて、そのままスルーしちゃった」
「スルーしたって……」
「気になるの亜美?」
「気になるって、ならないって言ったら嘘になるけど」
「そうなんだ」
ノートに目を落としながら、真由美はこっちを見ない。
何か真由美のジェラシーを、ひしひしと感じるのは気のせいだろうか。
「いいんじゃない、亜希子ちゃんもやっぱり男の子を求めたんだという事なんだから」
やっぱり真由美嫉妬している。
「そっかぁ、亜希子に彼氏ができたんだ」
「あら亜美、嫉妬しないの?」
「ん? 嫉妬ねぇ……やきもちのやの字もなんか出てこないんだけど」
と、今は言っておこう。
これで心配だの、私が驚いたりすれば、真由美の嫉妬心にガソリンを注ぎ込むようなものだ。
「ふぅ―ン意外、亜美もっと妬くかと思ってた」
「どうしてさ」
「だって今まであれだけべたべたしていた仲なんでしょ。それが急にしかも男に取られたんだって知ったら、亜美怒るんじゃないのかなぁて」
「べ、別にぃ……気にしないわよ。それにべたべた寄ってきていたのは亜希子の方、私からは亜希子にべたべたしていなかったんだけど」
「ま、それもそうよね」
「ところでさぁ亜美、このXの値を求めるには先にYの数値出さないと出てこないんだよね」
「ああそこ、ほら、2次元方程式の応用だからこの数式にあてはめてYの値をだすの。それとこのX、Yの値と……」
「亜美」ポンポンと真由美は隣の席を叩いた。
そっちに来いという合図のようだ。
真由美の隣の席に座ると、私の体を抱きかかえて、いきなりキスをしてきた。
そして耳元で
「私は妬いているの。物凄く妬いているの。亜希子ちゃんの事考えるとどうしても抑えきれないの。私、亜美には異常なほど変態なんだから」
お返しに今度は私からキスをしてやった。
真由美の唇は、熱く火照っていた。
「ねぇ今晩泊っていく?」
こくんと頷き「そのつもり」と答えた。
「でもこんなに頻繁に泊っちゃって大丈夫なの」
「それはもういいの。私の親もねぇさんの所に泊まっているの分かっているから。それにねぇさんもずっと帰らないわけじゃないし、催事のある時手伝ってくれればいいって」
まぁ確かに変なところに? 世間様にはあまりおおぴらに出来ない、私たちの関係の場所なんだけど……それでも尚子さんの所であれば親も安心するだろうから。
「でね、お母さんがね。何なら学校こっちから通ってもいいって」
「はへぇ! え、そうなの」
「そうなると私も一緒に住むような感じになっちゃうんだけど……美代さんと亜美に迷惑かけるのかぁって。ちょっと実は迷っているの」
「ん―、でもそれなら今までと、あんまり変わらないんじゃないのかなぁ。もっとも私たちがあそこに入居してからなんだけど、真由美もほとんどこっちで寝泊まりしているからね。もう住んでいるのと変わりないような気がするんだけど」
「そうだよね。よかった、これで気兼ねなく亜美と一緒に生活ができる」
「あははは、もうすでに気兼ねなく一緒に生活してるじゃん」
「うふふ、そうじゃなくてぇ―、……新婚生活……み、見たいに……」
久々に真由美の顔が、いや耳の先まで真っ赤になっているとこ見ちゃった。
カランカラン。お客さんがやって来た。
「いらっしゃいませ」
それからぽつぽつと途切れることなく、お客さんが来てくれた。
それなりの忙しさと、二人で息の合った仕事をしていると、本当に私たちは姉妹……いや、夫婦の様な感じがする。
真由美の影響力は、この私を徐々に変えて行っているようだ。
「なんとか終わったね」
入り口の扉に「クローズ」のプレートを出して、ようやく今日の営業が終わった。
ラインに尚子さんからメッセージが届いていた。
「大丈夫そう? 何かあったら連絡ちょうだいね」
「大丈夫ですさっき、今日の営業無事に終わりました」
既読のサインがすぐに出て
「ご苦労様でした。真由美も来ているでしょ、二人で仲良くお店やってね。新婚さんみたいにね♡♡」
思わず顔が熱くなっちゃった。
真由美にそのメッセージを見せると
「キャッ!」と声を上げて喜んでいた。
そんな真由美の姿を見ていると、何か感慨深い想いがこみあげてくる私は、やっぱり真由美に恋をしているんだという事を改めて自覚してしまう。
オートロックを開け、誰もいないこの部屋に二人で帰って来た。
今日一日誰もいないという事が、この部屋から流れ出してくる、むあぁッとした空気がそれを語っていた。
電気をつけ、エアコンを全開にすると、ようやく、そのよどんだような部屋の空気が浄化されていくような感じがする。
いつもなら、美代ねぇが自分の部屋にいるのだが、今日はその美代ねぇもいない。
真由美と二人っきりで過ごす初めての夜だ。
「ねぇ真由美、お腹空いた? 夕食先に食べよっか」
「うん、手伝うね」
「ありがとう」
二人でキッチンに並び、下ごしらえしてあった夕食の食材で、二人分の夕食を作った。
「もう、亜美ってすごいね。ちゃんと夕食の下ごしらえまでしてあるなんて」
「そんなことないよ。ある程度まとめて、やっておいてあるだけだから、それに簡単に出来る物しか作ってないでしょ」
それでも、豚の生姜焼きにサラダ。お味噌汁とタイマーセットしてあった炊き立てのご飯。
「もう、私の出番なんかないじゃない」
ちょっとすね気味の真由美。
「そうぉ? こうしてご飯よそってもらったりしてくれると、物凄く助かってるんだけど」
「そっかぁ……」
ニコット微笑み返す真由美。
「ねぇ、亜美」
「なぁに?」
「あのねこれから、私もこっちで暮らすようになるんだったら、出来るだけ私も家事やりたいの。でもどこまで手を付けていいのか分からないから、教えてくれると助かるかなぁ」
「ああ、それね。そんなに気使わあなくても別に構わないんだけど、そうだな敷いて言えば、食事の準備かなぁ」
「食事?」
「うん、特に美代ねぇは執筆に追われると、食事自分の部屋で取ること多くなるんだ。それに、簡単に食べられるものが要求される。だからその時は臨機応変に対応しないといけない事かなぁ」
「うううう、それってなんか物凄く大変そう」
「大丈夫だよ。ほったらかしておいても、どうしてもお腹が減れば用意してある物勝手に食べるから」
「なんかそれって、ペットに餌やっているみたいなんだけど」
「あはは、確かに言えてるかも」
「でも亜美って偉いねぇ」
「どうして?」
「こうして家事、なんでも熟しちゃっているから」
「うちさぁ、親が離婚する前までずっと共稼ぎで、どっちも帰り遅かったし。もっともお父さん……いや、父はほとんどほら、帰ってこないこと多かったから、必然的にね」
「そうなんだ、私なんかお母さんに、ほとんどやってもらっていたから、相当甘えていたんだね」
「それが多分……普通の家庭だと思うよ」
真由美が後ろから抱き着いてきた。
あの柔らかい胸が私の背中を押し付ける。
「これから私、亜美のために頑張る。もしかしたら何も出来ない。ううん足手まといになっちゃうかもしれないけど……。でも、亜美のためにこの身を捧げたいの」
「どうしてそんなこと言うの? 真由美は真由美でちゃんと私の事支えてくれているじゃない」
「まだ私には足りないの。まだまだ全然足りないの。亜美の事思うと、もうどうしようもなく苦しいの。自分でもどうしたらいいのか分からないくらい」
「真由美、ありがとう。でもね、真由美最近加速しすぎだよ。私はどこにも行かないし、ずっと真由美の傍にいてあげる。だから安心して」
「うん」真由美の頬に涙が流れていた。
その潤んだ眼を見つめ、瞳に私の顔が映っている真由美にキスをした。
求めているキス。求められているキス。
このキスが、私たち二人の気持ちを、落ち着かせてくれているような気がする。
最近私も加速気味だから……。
「ご飯冷めちゃう。食べよ」
「うん」ようやく笑顔を見せてくれた真由美。
「ごはん食べたら、一緒にお風呂入ろうね……亜美」
「うん」
私もありったけの笑顔を、真由美に返してやった。
尚子さんのお店でやったメイド服喫茶。あの興奮に似た感情は少しずつ薄れ、今では逆に心地いい位に感じるまで落ち着いている。
それはそうと夏休みの宿題は、まだ山のように残っている。
このまま手を付けないでいたら、最終日目前に涙目でこなさなければいけい事実が待ち受けているのは確実だ。
美代ねぇは、取材? と言って、1週間ほど旅に出た。なぜかそこに尚子さんも同乗しているのは、何となく不思議なところもあるんだけど。
その間、私はあの喫茶店を任されてしまった。
「亜美ちゃんなら大丈夫。それにイベントも終わったし、この時期意外と暇なの。亜美ちゃんならパフェも作れるし、メニューにある料理は出来るはずだから大丈夫。何かあったらすぐに私に連絡してくれれば対応は出来るから」
えらい信用されている……本当にいいんだろうか?
真由美も駆けつけて手伝いに来てくれた。
また二人で、あの時の様に……と、思っていたが、予想を反して物凄く暇。
「暇だねぇ」
「そうだねぇ」
と、いう事で、お客さんが来ていないときは二人で、宿題をこなすという案にたどり着いた。
「二人だとほんとはかどる。真由美は文系得意だからほんと助かるよ」
「ううん、こっちこそ亜美は理数系得意だから、私ほんとダメなの、特に数学なんか暗号解くみたいで目眩しちゃうくらいなんだもの」
「目眩とはそれ言い過ぎなんじゃないの」
「ははは、でもほんとにそうなんだもの」
「ところでさぁ、最近亜希子連絡も何もよこしてきていないんだけど、こっちからも連絡はしていないんだけど、何もないのが不思議なんだよねぇ」
「そうねぇ、確かに亜希子ちゃん静かよねぇ」
そうなのだ、あの亜希子から、ラインも何も入ってこない。
今までうざいくらいに何かあればメッセージやら、家に来たり呼びつけたりと、振り回すあの亜希子からプツリと音沙汰がない。
「この暑さで干からびていたりして」
おいおい、真由美。言うようになったな。
「連絡してみよっか」
「やめておいたら?」
「どうして?」
真由美はちょっとためらいながら
「本当はね、私見ちゃったの」
「何を……」
「いつもの本屋さんの前を通った時、偶然見ちゃったの。亜希子ちゃん、男の人と手を繋いで歩いているところ」
「はへぇ? 亜希子が男と手を繋いでいた……」
「うん、しかもね……なんかいい雰囲気に見えたんだぁ」
「それで」
「それっでて、そのままスルーしちゃった」
「スルーしたって……」
「気になるの亜美?」
「気になるって、ならないって言ったら嘘になるけど」
「そうなんだ」
ノートに目を落としながら、真由美はこっちを見ない。
何か真由美のジェラシーを、ひしひしと感じるのは気のせいだろうか。
「いいんじゃない、亜希子ちゃんもやっぱり男の子を求めたんだという事なんだから」
やっぱり真由美嫉妬している。
「そっかぁ、亜希子に彼氏ができたんだ」
「あら亜美、嫉妬しないの?」
「ん? 嫉妬ねぇ……やきもちのやの字もなんか出てこないんだけど」
と、今は言っておこう。
これで心配だの、私が驚いたりすれば、真由美の嫉妬心にガソリンを注ぎ込むようなものだ。
「ふぅ―ン意外、亜美もっと妬くかと思ってた」
「どうしてさ」
「だって今まであれだけべたべたしていた仲なんでしょ。それが急にしかも男に取られたんだって知ったら、亜美怒るんじゃないのかなぁて」
「べ、別にぃ……気にしないわよ。それにべたべた寄ってきていたのは亜希子の方、私からは亜希子にべたべたしていなかったんだけど」
「ま、それもそうよね」
「ところでさぁ亜美、このXの値を求めるには先にYの数値出さないと出てこないんだよね」
「ああそこ、ほら、2次元方程式の応用だからこの数式にあてはめてYの値をだすの。それとこのX、Yの値と……」
「亜美」ポンポンと真由美は隣の席を叩いた。
そっちに来いという合図のようだ。
真由美の隣の席に座ると、私の体を抱きかかえて、いきなりキスをしてきた。
そして耳元で
「私は妬いているの。物凄く妬いているの。亜希子ちゃんの事考えるとどうしても抑えきれないの。私、亜美には異常なほど変態なんだから」
お返しに今度は私からキスをしてやった。
真由美の唇は、熱く火照っていた。
「ねぇ今晩泊っていく?」
こくんと頷き「そのつもり」と答えた。
「でもこんなに頻繁に泊っちゃって大丈夫なの」
「それはもういいの。私の親もねぇさんの所に泊まっているの分かっているから。それにねぇさんもずっと帰らないわけじゃないし、催事のある時手伝ってくれればいいって」
まぁ確かに変なところに? 世間様にはあまりおおぴらに出来ない、私たちの関係の場所なんだけど……それでも尚子さんの所であれば親も安心するだろうから。
「でね、お母さんがね。何なら学校こっちから通ってもいいって」
「はへぇ! え、そうなの」
「そうなると私も一緒に住むような感じになっちゃうんだけど……美代さんと亜美に迷惑かけるのかぁって。ちょっと実は迷っているの」
「ん―、でもそれなら今までと、あんまり変わらないんじゃないのかなぁ。もっとも私たちがあそこに入居してからなんだけど、真由美もほとんどこっちで寝泊まりしているからね。もう住んでいるのと変わりないような気がするんだけど」
「そうだよね。よかった、これで気兼ねなく亜美と一緒に生活ができる」
「あははは、もうすでに気兼ねなく一緒に生活してるじゃん」
「うふふ、そうじゃなくてぇ―、……新婚生活……み、見たいに……」
久々に真由美の顔が、いや耳の先まで真っ赤になっているとこ見ちゃった。
カランカラン。お客さんがやって来た。
「いらっしゃいませ」
それからぽつぽつと途切れることなく、お客さんが来てくれた。
それなりの忙しさと、二人で息の合った仕事をしていると、本当に私たちは姉妹……いや、夫婦の様な感じがする。
真由美の影響力は、この私を徐々に変えて行っているようだ。
「なんとか終わったね」
入り口の扉に「クローズ」のプレートを出して、ようやく今日の営業が終わった。
ラインに尚子さんからメッセージが届いていた。
「大丈夫そう? 何かあったら連絡ちょうだいね」
「大丈夫ですさっき、今日の営業無事に終わりました」
既読のサインがすぐに出て
「ご苦労様でした。真由美も来ているでしょ、二人で仲良くお店やってね。新婚さんみたいにね♡♡」
思わず顔が熱くなっちゃった。
真由美にそのメッセージを見せると
「キャッ!」と声を上げて喜んでいた。
そんな真由美の姿を見ていると、何か感慨深い想いがこみあげてくる私は、やっぱり真由美に恋をしているんだという事を改めて自覚してしまう。
オートロックを開け、誰もいないこの部屋に二人で帰って来た。
今日一日誰もいないという事が、この部屋から流れ出してくる、むあぁッとした空気がそれを語っていた。
電気をつけ、エアコンを全開にすると、ようやく、そのよどんだような部屋の空気が浄化されていくような感じがする。
いつもなら、美代ねぇが自分の部屋にいるのだが、今日はその美代ねぇもいない。
真由美と二人っきりで過ごす初めての夜だ。
「ねぇ真由美、お腹空いた? 夕食先に食べよっか」
「うん、手伝うね」
「ありがとう」
二人でキッチンに並び、下ごしらえしてあった夕食の食材で、二人分の夕食を作った。
「もう、亜美ってすごいね。ちゃんと夕食の下ごしらえまでしてあるなんて」
「そんなことないよ。ある程度まとめて、やっておいてあるだけだから、それに簡単に出来る物しか作ってないでしょ」
それでも、豚の生姜焼きにサラダ。お味噌汁とタイマーセットしてあった炊き立てのご飯。
「もう、私の出番なんかないじゃない」
ちょっとすね気味の真由美。
「そうぉ? こうしてご飯よそってもらったりしてくれると、物凄く助かってるんだけど」
「そっかぁ……」
ニコット微笑み返す真由美。
「ねぇ、亜美」
「なぁに?」
「あのねこれから、私もこっちで暮らすようになるんだったら、出来るだけ私も家事やりたいの。でもどこまで手を付けていいのか分からないから、教えてくれると助かるかなぁ」
「ああ、それね。そんなに気使わあなくても別に構わないんだけど、そうだな敷いて言えば、食事の準備かなぁ」
「食事?」
「うん、特に美代ねぇは執筆に追われると、食事自分の部屋で取ること多くなるんだ。それに、簡単に食べられるものが要求される。だからその時は臨機応変に対応しないといけない事かなぁ」
「うううう、それってなんか物凄く大変そう」
「大丈夫だよ。ほったらかしておいても、どうしてもお腹が減れば用意してある物勝手に食べるから」
「なんかそれって、ペットに餌やっているみたいなんだけど」
「あはは、確かに言えてるかも」
「でも亜美って偉いねぇ」
「どうして?」
「こうして家事、なんでも熟しちゃっているから」
「うちさぁ、親が離婚する前までずっと共稼ぎで、どっちも帰り遅かったし。もっともお父さん……いや、父はほとんどほら、帰ってこないこと多かったから、必然的にね」
「そうなんだ、私なんかお母さんに、ほとんどやってもらっていたから、相当甘えていたんだね」
「それが多分……普通の家庭だと思うよ」
真由美が後ろから抱き着いてきた。
あの柔らかい胸が私の背中を押し付ける。
「これから私、亜美のために頑張る。もしかしたら何も出来ない。ううん足手まといになっちゃうかもしれないけど……。でも、亜美のためにこの身を捧げたいの」
「どうしてそんなこと言うの? 真由美は真由美でちゃんと私の事支えてくれているじゃない」
「まだ私には足りないの。まだまだ全然足りないの。亜美の事思うと、もうどうしようもなく苦しいの。自分でもどうしたらいいのか分からないくらい」
「真由美、ありがとう。でもね、真由美最近加速しすぎだよ。私はどこにも行かないし、ずっと真由美の傍にいてあげる。だから安心して」
「うん」真由美の頬に涙が流れていた。
その潤んだ眼を見つめ、瞳に私の顔が映っている真由美にキスをした。
求めているキス。求められているキス。
このキスが、私たち二人の気持ちを、落ち着かせてくれているような気がする。
最近私も加速気味だから……。
「ご飯冷めちゃう。食べよ」
「うん」ようやく笑顔を見せてくれた真由美。
「ごはん食べたら、一緒にお風呂入ろうね……亜美」
「うん」
私もありったけの笑顔を、真由美に返してやった。
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