【改訂版】この世界に足を踏み入れたら抜け出せないじゃないですか……

さかき原枝都は

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姉と妹と妹と姉と

いいのかなぁ姉妹同士なら? 12回目

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小岩沙良こいわさらその名を聞いた途端事情はのみ込めた。

この子はお父さんの。いや父の再婚相手の子。
前の苗字は分からないけど、最近小岩こいわになったという事を聞けば連鎖の結果はおのずと解ける。

しかしだ、私はこの子とはお初なんだけど、何で美代ねぇの事は知っているんだ? 
とりあえずこの子の素性も分かったんだけど、私には物凄く敵対心剥き出しなんですけど。
どうして?

部屋のカギを開けて、まずはこの子も中に招き入れた。
「さぁ、どうぞ」
「お邪魔します」
意外ときちんと靴もそろえて礼儀も正しい。

「適当にそこらへんに座っていて、今美代ねぇ呼んでく来るから。あ、その前に、喉乾いたでしょ。あんな暑いところにずっと立っていたんだから、ちょっと待っててね。麦茶でいい?」

「私にはお構いなく。あなたから施しを受けようなんて思っていませんので」

うっ!
いちいち、私には反抗してくるんだ。

ま、でもお客さんだし
「はい、麦茶。まずは飲みなさい」

目の前に置かれた冷たい麦茶を始めはじっと見つめていたが、コップに手を付けると、ゴクゴクと一気に飲み干してしまった。

「やっぱり喉乾いていたんでしょ。無理しないの」
空になったコップに改めて、麦茶を注いだあと
「それじゃ呼んでくるね」
「あ、ちょっと待ってください」
「どうしたの?」

椅子から立ち上がり、ポーチから清涼汗拭きシート、ファンデーションに口紅を取り出して。

「ちょっと整えさせてください」

そう言いながらササッと慣れた手つきでメイクをし直すその姿。
中々のもの。

濃いからず、薄からずのその微妙な中間点のメイクの仕方は、ある程度のテクニックが要求されるほどの絶妙な色合い。

それも、今着ている服に合わせたかの様に出来るなんて。
今どきの中学生は……。多分そうだと思うんだけど。

最後に洋服の乱れと整えて
「お待たせしました」と、そのまま立ったまま美代ねぇが来るのを待つようだ。

とりあえず、美代ねぇが起きているかの確認からだ。
ラインで美代ねぇに「お客さん来てるよ」と送信した。

すぐに
「だぁれぇ?」と返信が来た。
「来てみればわかるわよ」
「ん!」という返信の後、美代ねぇの部屋のドアが開いた。

さっきまで熟睡していたのがバレバレのその姿で
「あれぇ、そこにいるのはもしかして沙良ちゃんじゃないのぉ!」
ちょっと驚いた感じであの子を見ると

「はい来ちゃいました。美代おねぇ様」

おいおい「美代おねぇ様」って、どういう事?

「いかがですか? 今日の私のこの姿は」
「うんうんいいよ。とっても可愛いよ」
「ありがとうございます。美代おねぇ様」
そのまま、美代ねぇにハグ。

抱き着いたまま美代ねぇの耳元で何かを小声で言っていた。
そして、ちらっと私に視線を向けて
二人の唇が重なった。

えっ! ええええええええええ!

「ちょっと、ま、待った!」
「なぁに、ミーちゃん」
何事もなかったように美代ねぇは、私の驚いた顔をにっこりとほほ笑んでみている。

「あのね、この子、父と再婚した人の子なんだけど」
「あら、ミーちゃん知ってたの?」
「知ってたのって、さっき聞いたことなんですけど」

「そうよ。それにこの子はないじゃない。あなたの義理の妹なのに。沙良ちゃんて呼んであげなさいよ」

沙良ちゃん。む、無理かもしれない。なにせ向こうは私の名前を知っていながら、「あなた」とか「あんた」とかしか言ってこないし、まぁ年下に腹立てても仕方ないけど、ほんと敵対心感じるんですけど。

そんな私に追い打ちをかけるように
「何をそんなに驚いているんですか? 義理のおねぇさん。それとも私と美代おねぇ様との関係に嫉妬なさっているんですか」

「嫉妬って……」
「あら、私たちキスよりもっとふか―――――い関係なんですのよ。確かあなたもそうでしたわね」

「ちょっとちょっと美代ねぇ、私混乱してきたんだけど。ちゃんと説明してくれる」
「ははははぁ、そうだよねぇ。ミーちゃん何も知らなかったんだもんね」

そこに尚子さんが部屋から出てきた。
「どうしたの誰か来ているの?」
こちらも今まで寝ていたのがバレバレの姿。

それでもって尚子さんからも
「あれぇ、沙良ちゃんじゃないの」
「あらぁ、奇遇でしたわね。尚子おねぇ様もいらっしゃったとは。私今日来て苦労したのが報われましたわ」

「もしかして尚子さんもこの子の……さ、沙良ちゃん知ってるの?」
「うふふ」と不気味な笑みを見せつける沙良……ちゃん。

「そ、そうね」
ちょっと隠し事気味なのが怪しい。

「しっかりと説明してもらおうじゃないの! 美代ねぇ」

「あら、ミーちゃん本気モードで怒っちゃったわねぇ。どうする尚子、全部話しちゃう」

「わ、私は別にか、かまわないけど。美代の方がやばいんじゃない」

「やばいってどういう事? 美代ねぇ」

「こうなったら、洗いざらい白状しちゃったら」

「そうよねぇ、それしかないわよねぇ。あのねミーちゃん、ミーちゃんに隠していた訳じゃないんだけど、まぁ知らない方がいいのかなぁて、思うところも正直あったから言なかったんだけど」

運命というか世間は狭いというか、どこでどう言う繋がりが出来てしまうのか。今の時代本当に分からない。

美代ねぇの話によれば、美代ねぇと尚子さんはある会員制クラブコミュニティの会員で、この会員の入会はとてもレベルが高いセキュリティに守られている。
しかも、ネット上ではどんな検索ワードにも引っかからないようにされている。

もし仮にどこかでこのクラブのサイトの事を聞いてアクセスしても、ただの投稿サイト、最もレズやコスプレなどの趣味を持ち合わせた人たちが集うクラブだという事が推測できない様なコミュニティサイトになっている。

実際はネットでの活動よりも、リアルな会員同士の交流の方が濃厚らしい。
会員制といっても、参加している会員からは入会金などは一切徴収もしていない。

運営の仕組みは美代ねぇにもよく分からないらしいけど、バックには結構なお金持ちが絡んでいることは、薄々感じているみたいだった。

そのクラブは、特別出会いを求めたり、セックスパートナーを斡旋するようないわば売春行為などは行っていない。その点は健全なところだ……と、思う。

でも、会員同士でのプライベートな部分に関してまでは関与していないので、当然グレーな部分はあるという事だ。

沙良は小学生のころからコスプレにはまり出し、中学に上がってからはコスプレ衣装を身にまとい、街中を歩き始めていた。

そんな沙良の姿を幾度となく追い続けたこのクラブのスカウトが、沙羅を引き抜いて会員にした。さながら芸能プロダクションのようだ。

沙良の様にコスプレイヤーとして、会員にその姿を披露するとインセンティブが振り込まれる。

沙良にとっては自分がただロリータ服を着てその姿を大勢の人に見られることに喜びを感じていたから、このクラブはうってつけの環境となった

確かに沙良の容姿は綺麗だ。

今こうしてみているだけでも、どこかのモデルでもやっているかのような整ったスタイルに、美代ねぇ程ではないけど、見た目私よりは大きな胸をしているのがポイントになっているといっても過言じゃない。

それにあの童顔の無邪気そうな顔つきは、ロリータファッションにはぴったりはまりすぎている逸材だ。

始め美代ねぇは小説のネタ集めのため、このクラブに入会したがそのあと、尚子さんを引き込むように入会させ、お互い可愛い女の子のその姿を見ては、愛液ダラダラ状態の官能域に自分たちを向かわせていた。

もうそこまで来ると変態……の領域に近い。

そこで知り合ったのが沙良だった。
ロリコスプレイヤーの中では上位クラスの沙良は注目のまとだったから、クラブの中では有名人だ。

その有名人の沙良と美代ねぇがどんなきっかけで繋がったのかは分からないけど、お互い何か意気投合し、その結果、私の知らない美代ねぇの愛の形が育まれていたという事だ。

そして突如、私たちの親の離婚騒動が勃発した。

だけど、美代ねぇは父が沙良の母親と付き合っていることを、沙良本人から大分前から知らされていた。

もっともその話をされたのも、ほんの1年前くらいの事。

今思えば、両親の離婚のトリガーを影で引いたのは、もしかしたら美代ねぇかもしれない。
その真意については触れなかったけど。

「つまりは美代ねぇと尚子さんは前から、沙良……ちゃんと付き合っていたという事なんだ」

「まぁね、そう言う事なんだミーちゃん。ごめんね黙ってて。ただね、沙良ちゃんが本当に私たちの義理だけど妹になるとは、さすがの私も予想はしていなかったんだけど、ただ沙良ちゃんから聞く限り、父さんはもう自分の家庭を見放したんだという事が良く分かったから、好きなように落ち着いてくれように二人で話したの。それで今の生活になったという事かな」

「うううう、はぁ~。もう何も私考える気力がなくなったみたい」

「あら、ミーちゃんもしかして私の事ケーベツしちゃった?」

「軽蔑も何もこうなる事もう運命つけられていたみたいで、なんだかもう笑うしかないというのが本音」

「あらあなた、意外と飲み込みが早いのね。でも美代おねぇ様と恋仲のあなたとは私はライバルであることは、ご理解していらっしゃるんですか?」

「ライバルって、沙良ちゃんも美代ねぇの事好きなのは分かった気がする」

「亜美、ねぇさん。とお呼びした方がいいんでしょうね。好きというレベルのものじゃないという事をもっと理解してほしんですの。

だって私は美代おねぇ様を心の底から愛しているんですもの。そして義理とはいえ、こうして姉妹になれたこと奇跡の様に感じているんですもの」

「これって姉妹喧嘩になるのかなぁ」

「そうならないようにしましょね、仲良く! ミーちゃん」

「それも亜美ねーさん次第ですけどね」

最後にこの言葉付け加えられた生意気な妹に、この先私は翻弄させられそうだ。

「あのぉ……、聞く気はなかったんですけど、なんだかすごいことになっているようで」

そうと、真由美が私の部屋から出てきて、私の顔を目をぱちくりさせながら見つめていた。

「あのう、こちらはどちら様で?」

尚子さんが「私の妹、真由美。亜美ちゃんとは同じ学校でクラスメイトなの」
「それで、こうしてここにいるという事はもうおねぇ様たちの関係はご存知なんですね」

「そうね。今日知ったと言えば嘘のように聞こえるかもしれないけど、今日は真由美の初デビューの日なのよ」

「あら、それはそれは……それじゃ尚子おねぇ様とも、愛し合っていらっしゃったんですね」

「あはは、それがねこれからなのよ。私と真由美が本格的にプレイするのは」

「……そうなんですか」沙良の目線は真由美に向けられていた。

「かわいいですね。真由美さん」
「えっ! そ、そんなぁ」
もじもじと照れる真由美。

「ええ、っと確かお名前は」
「沙良です。小岩沙良ってなっています。気軽に沙良って呼んでください。真由美おねぇさん」
にっこりと笑う沙良の笑顔はまるで天使のようだ。

おいおい、真由美にはなんか接し方が違うぞ。
真由美に興味持ったのか?

「さぁて私はそろそろお暇させていただくとしますか。美代おねぇ様の新居にも来れましたし、新しいねぇさんにもお会いすることが出来ましたからね。それにいろんな収穫もありましたからもう十分です」

「そうぉ、沙良ちゃん。でもねぇ……外凄い雨よ、電車止まってるかもしれないこれじゃ」

「えっ! それじゃ帰れない」

「それじゃ沙良ちゃんも今晩は泊っていきなさいよ。ねぇ、沙良ちゃん」
「美代おねぇ様がそうおっしゃるんでしたら……」

はぁ~、今晩私はどうなるんだろう……不安だ!
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