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小岩さんちの家族会議
新たな生活 その1
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「はぁ~」
ため息をつきながらの登校はつらい。昨日は一睡もできなかった。
それもそうだろ。昨日あんなことをいきなり言われて「はいそうですか」とすべてを受け入れる事が出来るほど私は単純じゃないのだ。
いや、受け入れる。受け入れない。とかというレベルの話じゃない。
まぁ確かにうちの親の事に関して、私も関心が薄かったと言えばそれまでだろうけど。
「おっはようさん!」
亜希子が後ろから私の肩を軽くたたきながら言う。
「やぁぁ……おはようぅ……」
「げげ亜美、おっきなくまさん飼ってどないしたん」
「はぁ~、くまさん? そっかぁ、くまさんいるんだぁ」
「マジどうしたん?」
亜希子が心配そうに私の顔をまじかで見つめる。
「亜希子、顔、近い近い」
「そんなこと言ったって、こんな亜美見るの初めてや。ほんとなにかあったんか」
そこに真由美がやってきて
「あのう二人とも、校門の前でじゃれ合うのは目立つというかその……」
「じゃれとんじゃないわ。見てみ! この亜美の顔」
亜希子に言われるままに、真由美も私の顔を覗き込んだ。
「あ! おっきなくまさん」
「あははは……真由美にまで言われちゃった」
「ほんとどないしたん?」
亜希子は小さいころ関西に住んでいたから、よく関西弁と標準語が交互に出てくる。
まぁ、感情が高ぶると、関西弁の方が強くなる傾向はあるようだけど。
「昨夜、美代ねぇさんにずっと付き合わされていたとか? すっごいこと二人して楽しんだとか?」
「亜希子よだれ、よだれ」
じゅるるる、と、よだれを拭きながら興奮気味に言う亜希子に
「そんなんじゃないよ。ただねぇ……、うちの両親離婚するんだって」
「ん! 離婚! て、おじさんとおばさん……」
「離婚!」
大声で亜希子がその言葉を叫ぶ。
「ば、馬鹿。そんな大声で言うな」
周りの登校中の生徒が、私たちをじろじろと見つめる視線が熱い。
「だって一大事じゃん」
「あのう、なんか大変なお話なんだけど、もう遅刻しちゃいますよ」
「ヤバ!」
校門の鉄さくが閉められたら、アウト! 何とか間一髪で校門の内側に入り込んだ。
「今は話す気分じゃないし、時間も無いからあとで話すわ」
かったるい、なが――い校長の話が終わって、ようやく夏休みの入り口に突入!
本来だったら、ああぁ、17歳の最高の夏休みを過ごそうと意気込むところだったが、こんなことになってはそれどころじゃない。
「はぁ」
屋上で空に流れる白い雲を眺めながら、出てくるのため息ばかりだ。
「なんだ亜美、こんなところにいたんか」
「ああ、いたよ」
「何してた?」
「雲見てた」
「そっかぁ……。あんなぁ、朝の話なんやけど」
「ふう、うん」
「ほんまなん?」
「゛あ―、冗談で言ってる雰囲気に見える?」
「゛うっ、返す言葉がみつからへん」
「本当よ。二人とも付き合っていた人が前からいたんだって。お父さんの方なんか、娘もいる人らしい。お母さんは仕事で付き合っていた人。それに私と美代ねぇの事もお母さん知っていたらしい」
「マジかぁ」
ちょっと亜希子はほほを赤くして
「も、もしかしてうちとの事は……?」
「ははは、さすがにそこまではね」
ホットしながら「そっかぁ」と亜希子がつぶやいた。
「亜希子さぁ、私との関係隠しておきたい?」
「あ、いや、なんていうかさぁ」
「なんかって?」
そのまま亜希子にキスしてやった。
「うううう、んんんん」
舌いっぱいからめてやった。
つぅ―と二人の口は粘っこい糸で結ばれていた。
「ふっ。ああ、家帰りたくないなぁ」
「ならウチくる?」
「今行ったら私何するかわかんないわよ」
「受けちゃる。亜美の事受けちゃる」
その時だった私のスマホが鳴った。
お父さん……。
「どうしたの?」
「亜美か。今どこにいる?」
「まだ学校よ」
「そうか。……あ、いや、昨日お前と会えなかったからな。そのなんだ、お前も美代から聞いたと思うが、そういう事だ」
「……、そういう事って、何よ」
わざと言ってやった。
「お前たちには、すまないとは思っている。でも、分かってくれと言わないが、父さんも母さんも、もう限界だったんだ」
「そうなんだ」
「そこでだ、お前の残していった手紙は見させてもらった」
「そう……」
朝、むしゃくしゃした気持ちを少しでも抑えるのに、あの二人。そう父と母宛てに手紙を書いた。
手紙の内容はこうだ。
「勝手、勝手、勝手すぎる。いきなりそんなこと言われたってすぐに納得できるわけないじゃん。でももう、戻ることできないんだったら私は美代ねぇと生きていきます。あなた達のその勝手な代償として、私たちに。慰謝料? 詫び料? どちらでもいいから。
百万、請求します。
馬鹿な親を持った馬鹿な娘より」
「亜美の気持ちはよく分かった。俺たちは何を言われても文句は言えない立場だ。だ、だけど。4百万は無理だ。せめて俺たち二人で合わせて2百万で手を打ってもらえないか……頼む!」
へっ? 4百万? 確か私、百万って書いたはずなんだけど
「美代からは了解もらったが、この手紙は亜美が残したものだから亜美にもちゃんと了解もらえって引かないんだ。頼む何とか頼む亜美」
泣きか! でもどうして4百万なんて金額になったんだろう。
「わかった。で、いつあの家に越してくるのよ」
「来月の初めには……」
プチ!
通話を切ってやった。
なんかむしゃくしゃする。
すぐに美代ねぇに電話した。
「あら、ミーちゃんどうしたの?」
「今、父さん……いや父から電話あったんだけど。美代ねぇでしょ、私の手紙書き換えたの」
「あらあら、分かっちゃった。いいじゃない、もらえるものは多くても邪魔にはならなくてよ。あのお父さんのひきつった顔。あなたにも見せてあげたかったわ」
わが姉ながらなんとも腹黒い。
「で、どうしたの?」
「2百で手は打ったわよ」
「うふふ、よかったじゃない。これで少しは足しになるんだから、私たちの新しい生活の」
「まぁねぇ、でも今月中にあの家出ていかないといけないんだね」
「そうみたいね。とりあえず探してみましょ。私たちの愛の巣を。ね」
愛の巣って……。
「あてあるの?」
「ん、全くないわよ。でも何とかなるんじゃない、ほら今日の新聞にもマンションの広告入っていたし」
マンション! 一体いくらかかると思ってんだよ。まったく金銭感覚ないんだから美代ねぇは。
「住む所は私も探すから」
「あら、そうぉ。お願いしちゃおうかしら」
「分かった。それじゃ」
「ミーちゃんなんだか物凄く頼もしいわよ」
私の横でこんな会話聞を聞きながら目を白黒させて、亜希子はぼう―としていた。
ため息をつきながらの登校はつらい。昨日は一睡もできなかった。
それもそうだろ。昨日あんなことをいきなり言われて「はいそうですか」とすべてを受け入れる事が出来るほど私は単純じゃないのだ。
いや、受け入れる。受け入れない。とかというレベルの話じゃない。
まぁ確かにうちの親の事に関して、私も関心が薄かったと言えばそれまでだろうけど。
「おっはようさん!」
亜希子が後ろから私の肩を軽くたたきながら言う。
「やぁぁ……おはようぅ……」
「げげ亜美、おっきなくまさん飼ってどないしたん」
「はぁ~、くまさん? そっかぁ、くまさんいるんだぁ」
「マジどうしたん?」
亜希子が心配そうに私の顔をまじかで見つめる。
「亜希子、顔、近い近い」
「そんなこと言ったって、こんな亜美見るの初めてや。ほんとなにかあったんか」
そこに真由美がやってきて
「あのう二人とも、校門の前でじゃれ合うのは目立つというかその……」
「じゃれとんじゃないわ。見てみ! この亜美の顔」
亜希子に言われるままに、真由美も私の顔を覗き込んだ。
「あ! おっきなくまさん」
「あははは……真由美にまで言われちゃった」
「ほんとどないしたん?」
亜希子は小さいころ関西に住んでいたから、よく関西弁と標準語が交互に出てくる。
まぁ、感情が高ぶると、関西弁の方が強くなる傾向はあるようだけど。
「昨夜、美代ねぇさんにずっと付き合わされていたとか? すっごいこと二人して楽しんだとか?」
「亜希子よだれ、よだれ」
じゅるるる、と、よだれを拭きながら興奮気味に言う亜希子に
「そんなんじゃないよ。ただねぇ……、うちの両親離婚するんだって」
「ん! 離婚! て、おじさんとおばさん……」
「離婚!」
大声で亜希子がその言葉を叫ぶ。
「ば、馬鹿。そんな大声で言うな」
周りの登校中の生徒が、私たちをじろじろと見つめる視線が熱い。
「だって一大事じゃん」
「あのう、なんか大変なお話なんだけど、もう遅刻しちゃいますよ」
「ヤバ!」
校門の鉄さくが閉められたら、アウト! 何とか間一髪で校門の内側に入り込んだ。
「今は話す気分じゃないし、時間も無いからあとで話すわ」
かったるい、なが――い校長の話が終わって、ようやく夏休みの入り口に突入!
本来だったら、ああぁ、17歳の最高の夏休みを過ごそうと意気込むところだったが、こんなことになってはそれどころじゃない。
「はぁ」
屋上で空に流れる白い雲を眺めながら、出てくるのため息ばかりだ。
「なんだ亜美、こんなところにいたんか」
「ああ、いたよ」
「何してた?」
「雲見てた」
「そっかぁ……。あんなぁ、朝の話なんやけど」
「ふう、うん」
「ほんまなん?」
「゛あ―、冗談で言ってる雰囲気に見える?」
「゛うっ、返す言葉がみつからへん」
「本当よ。二人とも付き合っていた人が前からいたんだって。お父さんの方なんか、娘もいる人らしい。お母さんは仕事で付き合っていた人。それに私と美代ねぇの事もお母さん知っていたらしい」
「マジかぁ」
ちょっと亜希子はほほを赤くして
「も、もしかしてうちとの事は……?」
「ははは、さすがにそこまではね」
ホットしながら「そっかぁ」と亜希子がつぶやいた。
「亜希子さぁ、私との関係隠しておきたい?」
「あ、いや、なんていうかさぁ」
「なんかって?」
そのまま亜希子にキスしてやった。
「うううう、んんんん」
舌いっぱいからめてやった。
つぅ―と二人の口は粘っこい糸で結ばれていた。
「ふっ。ああ、家帰りたくないなぁ」
「ならウチくる?」
「今行ったら私何するかわかんないわよ」
「受けちゃる。亜美の事受けちゃる」
その時だった私のスマホが鳴った。
お父さん……。
「どうしたの?」
「亜美か。今どこにいる?」
「まだ学校よ」
「そうか。……あ、いや、昨日お前と会えなかったからな。そのなんだ、お前も美代から聞いたと思うが、そういう事だ」
「……、そういう事って、何よ」
わざと言ってやった。
「お前たちには、すまないとは思っている。でも、分かってくれと言わないが、父さんも母さんも、もう限界だったんだ」
「そうなんだ」
「そこでだ、お前の残していった手紙は見させてもらった」
「そう……」
朝、むしゃくしゃした気持ちを少しでも抑えるのに、あの二人。そう父と母宛てに手紙を書いた。
手紙の内容はこうだ。
「勝手、勝手、勝手すぎる。いきなりそんなこと言われたってすぐに納得できるわけないじゃん。でももう、戻ることできないんだったら私は美代ねぇと生きていきます。あなた達のその勝手な代償として、私たちに。慰謝料? 詫び料? どちらでもいいから。
百万、請求します。
馬鹿な親を持った馬鹿な娘より」
「亜美の気持ちはよく分かった。俺たちは何を言われても文句は言えない立場だ。だ、だけど。4百万は無理だ。せめて俺たち二人で合わせて2百万で手を打ってもらえないか……頼む!」
へっ? 4百万? 確か私、百万って書いたはずなんだけど
「美代からは了解もらったが、この手紙は亜美が残したものだから亜美にもちゃんと了解もらえって引かないんだ。頼む何とか頼む亜美」
泣きか! でもどうして4百万なんて金額になったんだろう。
「わかった。で、いつあの家に越してくるのよ」
「来月の初めには……」
プチ!
通話を切ってやった。
なんかむしゃくしゃする。
すぐに美代ねぇに電話した。
「あら、ミーちゃんどうしたの?」
「今、父さん……いや父から電話あったんだけど。美代ねぇでしょ、私の手紙書き換えたの」
「あらあら、分かっちゃった。いいじゃない、もらえるものは多くても邪魔にはならなくてよ。あのお父さんのひきつった顔。あなたにも見せてあげたかったわ」
わが姉ながらなんとも腹黒い。
「で、どうしたの?」
「2百で手は打ったわよ」
「うふふ、よかったじゃない。これで少しは足しになるんだから、私たちの新しい生活の」
「まぁねぇ、でも今月中にあの家出ていかないといけないんだね」
「そうみたいね。とりあえず探してみましょ。私たちの愛の巣を。ね」
愛の巣って……。
「あてあるの?」
「ん、全くないわよ。でも何とかなるんじゃない、ほら今日の新聞にもマンションの広告入っていたし」
マンション! 一体いくらかかると思ってんだよ。まったく金銭感覚ないんだから美代ねぇは。
「住む所は私も探すから」
「あら、そうぉ。お願いしちゃおうかしら」
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