【改訂版】この世界に足を踏み入れたら抜け出せないじゃないですか……

さかき原枝都は

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小岩さんちの家族会議

いざ崩壊へ その3

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美代ねぇと関係を結んだのは私が中学の時だった。
帰宅したその日、私の部屋に美代ねぇとだれかの声が聞こえていた。
そっと美代ねぇの部屋をのぞいてみると、二人は裸で抱き合いながらお互いの唇を合わせていた。

ずっと見ていた。最後まで……。
体がずっと熱かった。
どうにもできないくらい体がほてってきていた。

本能的に私の手は下着の中に向かっていた。ちょっと目を離したときドアがスーッと開いた。
目の前に裸の美代ねぇが私のその姿を見つめていた。

「ミーちゃんに見つかっちゃった」ニコッとして私の手を撮り、部屋の中に入ると、美代ねぇの友達? 見たことない人だったけど、「私もう帰るね」と急いで制服を着なおして部屋から出ていった。

「ああ。尚子なおこ帰っちゃった」
その時は何が何だかわからなかったけど、もう私も中学生。美代ねぇが何をしていたくらいは理解できていた。
でもまさか美代ねぇが女の子同士で……そんなことしているなんて、思ってもいなかった。

「ミーちゃん、お母さんには内緒よ」
こくんとうなずいた。

一緒にお風呂に入らなくなって、どれくらい経つんだろう。久しぶりに見た美代ねぇの体は綺麗だった。同じ姉妹なのに私とはこんなにも違うなんて。

美代ねぇが私の制服に手をかけ、ボタンをはずしゆっくりと脱がしはじめる。
美代ねぇとは比べものにならない、まだ未発達の胸にそっと触れて
「久しぶりに、一緒にお風呂入ろ」
そのまま、二人っきりの家の中を裸で浴室まで行き、浴槽にお湯をためている間、美代ねぇは私の体を自分の手のひらで、優しく触れるように洗ってくれた。

美代ねぇの手が私の体に触れるたび、ぴくんとなんとも言えない感じがずっと続いていた。
ゆっくりと私の口に美代ねぇの唇がかさなった。私のファーストキスは美代ねぇに捧げた。まさか姉妹でこうなるとは思ってもみなかったけど、私はいやな気持ちは持たなかった。

むしろ、もっと美代ねぇに甘えたくなった。


「美代ねぇ、お母さん怒ってた?」
「別に、後はあなた達の好きにしなさいだって」
何とまぁ、放任的な言葉なんだろう。それとも離婚する事がもう決定的だったからお母さんも、もう私たちには関与しないという事なのか?

「それで、お父さんとお母さんの離婚の原因って何なの?」
「そうねぇ、私は気づいていたんだけど、二人とも好きな人が出来たんだって」
「好きな人が出来たって、いつからなの? それを今までずっと私たちに黙って隠していたの」
「そうみたい。でもそれを言ったら私たちも同じじゃない」
美代ねぇにそういわれると愚の根も出ない。

今まで平穏そうに見えていた私の家族はみんな、隠し事を持っていたという事なのだ。

お母さんは仕事で知り合った男性の人と数年の付き合いがあって、結婚を申し込まれたらしい。それをすんなりと受け入れたお母さん。いやもう母と呼ぼう。
そして、休日はゴルフだと言っていつも家にいなかったお父さん。どこでどう知り合ったかはわからないが、私より一つ下の娘がいる現在独身の人の家にずっと通っていたらしい。もうこっちもお父さんではなく、父と呼ぶことにする。

現実的に二人が離婚をしても私からすれば、どんなことがあっても血縁関係は切ることはできない。家族であったからこそ「お父さん」、「お母さん」と呼べていたが、今はもうそう呼ぶ気もうせてしまった。

「はぁ―」と思わずため息が出てしまった。
「以外ねぇ、ミーちゃんもっと怒るかと思っていた。私よりもミーちゃんの方が素直に受け入れちゃっているじゃない」
「受け入れるも何も、うちの家族ってこんなんだったんだ。なんかあきれて何も考えられなくなった」
「あはあは。確かに、私もおんなじ」

「ところでさぁ、私たちってこれからどうなるの?」
「そこよねぇ問題は」
「そうよそこが問題よ。どっちかに引き取られるっていう感じになるのかなぁ」
「それがね、なんかそうでもないみたいなのよ」
そうでもないってどういう事なんだろう?

「本当はね、ここが一番重要なところなんだけど、ミーちゃんも直接この提案聞いてもらいたかったんだけど、二人ともまってられないって出て行っちゃったの」
あのさぁ、こんなにも重要な部分なのに、もう少し待つとかという気持ちは無かったのかねぇ……あの二人は。

美代ねぇが私の体をベッドに引き寄せた。そしてそっとキスをして
「お母さん、早々にこの家から出ていって、今付き合っている人と一緒に暮らすんだって」
美代ねぇの顔をまじかに見つめながら
「そうなんだ」と、もうどうでもいい返事をした。
「それでね、お父さんはこの家に今付き合っている親子と一緒に暮らすんだって」

はぁ? 

「何、それじゃ私たち、見も知らない親子と一緒に暮らすっていう事なの」
そっちの方が動揺する。
「それでね私からも提案したの」
美代ねぇの舌が私の乳首に触れる。からだがピクんと反応する。
「て、提案……て」
指が胸の谷間を這うように動いた。

「私ももうじき大学卒業するでしょ。それに原稿料ももらってるからそこそこの収入はあるし、ミーちゃんと一緒に独立するって言ったの」
独立するって! つまりは、この家から出るという事なの?

「ちゃんと言ってやったわ。ミーちゃんは私が守るって」
美代ねぇは、ニコッと笑って私の鼻の先きに指をチョンと乗せた。

美代ねぇが私を守るって?

「あのさぁ、美代ねぇ」
「なぁにぃ?」
「美代ねぇ、料理できる?」
「うん、できない」
「掃除とか洗濯ちゃんとできる?」
「掃除はルンバがあるじゃない。それに洗濯は洗濯機にちょいちょいと入れればいいだけでしょ」
はぁ、予想はしていたけど、その予想通りの言葉がまさか帰ってくるとは思わなかった。

前途多難だ!

その前途多難な未来予想図をこの頭に描きながらも、私のこの家族は。

今日をもって崩壊した……ようだ。
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