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第11話 世間は広い。そして箱庭だった。 その2
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自意識過剰? そう思われてもいいけど。
ただ、この中途半端な気持ちは何とかしてほしい。
なんかさぁ、ここまで盛り上がって……(勝手にだけど)来たんだから、最後までいっちゃおうよ!
ささ、今ならこの体好きにしていいんだよ!! おっぱいだってあるんだし。小さい方じゃないと思うんだけどなぁ。
ほらほら、ムラムラしているうちだよ。やけくそに近いんだけど!!
「もうそろそろ来ると思うんだけどなぁ」彼はぼっそりと言う。
「何がですか?」
「何がって。おなかすいてない? 上野さん」
「おなかですか?」
「そう、おなか。すいているとイライラするからね。満腹になって落ち着くと今よりは大分いいんじゃない? お寿司。出前とったんだけど」
「そうですかお寿司ですか……えっ! お寿司!」
「あれぇ、上野さんお寿司嫌いだった?」
ブルブル。首を力強く振った。
玄関の呼び鈴が鳴った。
「おっ来た来た」
寿司桶に入ったきらびやかなお寿司。
それを目にするとごくりと喉が鳴った。
「いいんですか。私なんかのためにこんなお寿司まで。ご迷惑おかけしてすみません。これ私お支払いいたします」
「どうしたの急にかしこまちゃって。べつにいいよ。それよりさ、食べよう。ビールもう一本飲むだろ?」
彼は冷蔵庫からもう一本ビールを取り出し、私に渡す。
「先生も飲みませんか」
なんか私ばかりごちそうになっているのは気が引けてきた。
「うん、そうするかな」
「アルコールが入れば、私のこと抱いてくれる?」
淡い期待を込めて聞いてみた。
「……かもしれないし、そうでもないかもしれない」
もう、じれったい答えしか返してくれない。
少しイラっと来たけど。目の前のお寿司から香る甘酸っぱい香りが食欲をそそらせる。
ぐぅぅ――とおなかが鳴った。
音聞かれちゃった?
「ま、食べようか」とゴクリと彼もビールを喉に流し込んだ。
二人で、特別そのあとの会話もなく。シンと静まりかえったこの家で、寿司をつまんだ。
すきっ腹に流し込んだビール。ほとんど無言で食べた特上寿司。
変な気分を醸し出す。変な気分とはエッチな気分と言うのではなくて、どちらかと言えば気まずい空気とでも言うんだろうか。なんとなく重い感じがする。
空腹が満たされたら、次に襲ってきたのは睡魔。
正直ここのところ、あまり寝れなかったのは否めない。
そのせいだったんだろう。今日電車で移動中に居眠りをしてしまったのは。その結果、夫の秘密に遭遇しまったという事実。
そして駆け込んだ彼の家。
怒りは感じていないと思っていた自分が、実は相当な怒りを持っていた。それが一気に崩壊して。怒りなのか哀しみなのかが分からなくなっていく自分。
そんな私をなぜかしら、すべての事情をすでに知っていたかのように、優しく包み込んでくれた彼。
性欲の高揚(でも、これは怒りと言うか、どうにでもなれと言う落胆から来た敗退な気持ちが支配しての事だと思う)を抑えきれない私をどうにか宥めるかのように接する彼。
分かっていたんだよね。
……多分さ。春日先生は絶対に私には手は出さないって。
「そうだよね……先生」
そんな言葉を漏らし。私の意識は次第に遠のいていった。
テーブルの上にがっくりとうつぶせた彼女の姿を見て、僕の心は申し訳ないという気持ちと共に自分の不甲斐無さに落ち込んでいた。
「済まない上野さん」
そう一言彼女に投げかけ、客間に敷いていた布団にその体を沈めた。
ここで僕まで君に手をだしてしまったら、もう取り返しのつかない事態になる。いいや、もう後戻りはできなくなってしまう。
後戻りができなるなる自信だけは大きかった。と、表現するのはおかしいかもしれないけど。
でも本当は……。初めて君と出会ったときからずっと気にしていたのは事実。
だから、余計に軽はずみなことはできなかったんだ。
浮気はねぇ。気分でしちゃうものかもしれない。でも不倫は、気持ちが先になってしまう。
愛おしいという気持ちが……。
例え、肉体関係がなくとも今、僕が君に抱いている気持ちは『不倫』と言えるだろう。
その気持ちを感じた時僕はあえて君との距離を置いた。
でも、あの事実が舞い込んでから、もう抑えておくことはできなかった。
建前上、君を僕のところで囲っておくことは出来ない。
だから少しでもまた接点を持ちたかった。
引き寄せたかった。
不詳の従妹が犯した罪。その事実を知った時。
すでに僕の気持ちは決まっていたのかもしれない。
「こんばんは。お兄さん」
「ようやく来たか知奈」
「どうしたのよ急に呼びつけて。私も忙しんんだけど! あれ、だれかいるの?」
「まぁな」
「あっ! 珍しい。こんな時間に女の人がこの家にいるなんて。誰なの?」
「知りたいか?」
「うんめちゃ知りたいんですけど! ああああ、そうかようやくお兄さんにも春がやってきたんだね」
「……いや、そう言う訳じゃないんだけど……」
「何よう。もう、隠さなくたっていいじゃん」
「担当の。いや、担当補佐の――――上野さん」
「上野さん?」
「うん、上野雄也さんの奥さんだよ」
その名を聞いたとき知奈の体がぴくんと反応した。
「編集者の上野さん。て、お兄さんの担当だったの?」
「そう、そしてお前の浮気相手の奥さんだ」
「げっ! マジですか!! で、なんでお兄さん上野さん知ってんの?」
「旦那にはあったこともないよ。でも繋がったんだよ。お前が話してた浮気相手と上野さんの旦那の会社が」
「うわぁ、ヤバ!! 私ここにいたら刺されちゃう? 修羅場になりそう?」
「いや、多分大丈夫だろう……根拠はないが」
知奈はちょっとホットした表情をして。
「でもどんな人なんだろう。上野主任の奥さんって」そう言って、寝ている彼女の顔を見つめながら。
「可愛い」と、口にした。
ただ、この中途半端な気持ちは何とかしてほしい。
なんかさぁ、ここまで盛り上がって……(勝手にだけど)来たんだから、最後までいっちゃおうよ!
ささ、今ならこの体好きにしていいんだよ!! おっぱいだってあるんだし。小さい方じゃないと思うんだけどなぁ。
ほらほら、ムラムラしているうちだよ。やけくそに近いんだけど!!
「もうそろそろ来ると思うんだけどなぁ」彼はぼっそりと言う。
「何がですか?」
「何がって。おなかすいてない? 上野さん」
「おなかですか?」
「そう、おなか。すいているとイライラするからね。満腹になって落ち着くと今よりは大分いいんじゃない? お寿司。出前とったんだけど」
「そうですかお寿司ですか……えっ! お寿司!」
「あれぇ、上野さんお寿司嫌いだった?」
ブルブル。首を力強く振った。
玄関の呼び鈴が鳴った。
「おっ来た来た」
寿司桶に入ったきらびやかなお寿司。
それを目にするとごくりと喉が鳴った。
「いいんですか。私なんかのためにこんなお寿司まで。ご迷惑おかけしてすみません。これ私お支払いいたします」
「どうしたの急にかしこまちゃって。べつにいいよ。それよりさ、食べよう。ビールもう一本飲むだろ?」
彼は冷蔵庫からもう一本ビールを取り出し、私に渡す。
「先生も飲みませんか」
なんか私ばかりごちそうになっているのは気が引けてきた。
「うん、そうするかな」
「アルコールが入れば、私のこと抱いてくれる?」
淡い期待を込めて聞いてみた。
「……かもしれないし、そうでもないかもしれない」
もう、じれったい答えしか返してくれない。
少しイラっと来たけど。目の前のお寿司から香る甘酸っぱい香りが食欲をそそらせる。
ぐぅぅ――とおなかが鳴った。
音聞かれちゃった?
「ま、食べようか」とゴクリと彼もビールを喉に流し込んだ。
二人で、特別そのあとの会話もなく。シンと静まりかえったこの家で、寿司をつまんだ。
すきっ腹に流し込んだビール。ほとんど無言で食べた特上寿司。
変な気分を醸し出す。変な気分とはエッチな気分と言うのではなくて、どちらかと言えば気まずい空気とでも言うんだろうか。なんとなく重い感じがする。
空腹が満たされたら、次に襲ってきたのは睡魔。
正直ここのところ、あまり寝れなかったのは否めない。
そのせいだったんだろう。今日電車で移動中に居眠りをしてしまったのは。その結果、夫の秘密に遭遇しまったという事実。
そして駆け込んだ彼の家。
怒りは感じていないと思っていた自分が、実は相当な怒りを持っていた。それが一気に崩壊して。怒りなのか哀しみなのかが分からなくなっていく自分。
そんな私をなぜかしら、すべての事情をすでに知っていたかのように、優しく包み込んでくれた彼。
性欲の高揚(でも、これは怒りと言うか、どうにでもなれと言う落胆から来た敗退な気持ちが支配しての事だと思う)を抑えきれない私をどうにか宥めるかのように接する彼。
分かっていたんだよね。
……多分さ。春日先生は絶対に私には手は出さないって。
「そうだよね……先生」
そんな言葉を漏らし。私の意識は次第に遠のいていった。
テーブルの上にがっくりとうつぶせた彼女の姿を見て、僕の心は申し訳ないという気持ちと共に自分の不甲斐無さに落ち込んでいた。
「済まない上野さん」
そう一言彼女に投げかけ、客間に敷いていた布団にその体を沈めた。
ここで僕まで君に手をだしてしまったら、もう取り返しのつかない事態になる。いいや、もう後戻りはできなくなってしまう。
後戻りができなるなる自信だけは大きかった。と、表現するのはおかしいかもしれないけど。
でも本当は……。初めて君と出会ったときからずっと気にしていたのは事実。
だから、余計に軽はずみなことはできなかったんだ。
浮気はねぇ。気分でしちゃうものかもしれない。でも不倫は、気持ちが先になってしまう。
愛おしいという気持ちが……。
例え、肉体関係がなくとも今、僕が君に抱いている気持ちは『不倫』と言えるだろう。
その気持ちを感じた時僕はあえて君との距離を置いた。
でも、あの事実が舞い込んでから、もう抑えておくことはできなかった。
建前上、君を僕のところで囲っておくことは出来ない。
だから少しでもまた接点を持ちたかった。
引き寄せたかった。
不詳の従妹が犯した罪。その事実を知った時。
すでに僕の気持ちは決まっていたのかもしれない。
「こんばんは。お兄さん」
「ようやく来たか知奈」
「どうしたのよ急に呼びつけて。私も忙しんんだけど! あれ、だれかいるの?」
「まぁな」
「あっ! 珍しい。こんな時間に女の人がこの家にいるなんて。誰なの?」
「知りたいか?」
「うんめちゃ知りたいんですけど! ああああ、そうかようやくお兄さんにも春がやってきたんだね」
「……いや、そう言う訳じゃないんだけど……」
「何よう。もう、隠さなくたっていいじゃん」
「担当の。いや、担当補佐の――――上野さん」
「上野さん?」
「うん、上野雄也さんの奥さんだよ」
その名を聞いたとき知奈の体がぴくんと反応した。
「編集者の上野さん。て、お兄さんの担当だったの?」
「そう、そしてお前の浮気相手の奥さんだ」
「げっ! マジですか!! で、なんでお兄さん上野さん知ってんの?」
「旦那にはあったこともないよ。でも繋がったんだよ。お前が話してた浮気相手と上野さんの旦那の会社が」
「うわぁ、ヤバ!! 私ここにいたら刺されちゃう? 修羅場になりそう?」
「いや、多分大丈夫だろう……根拠はないが」
知奈はちょっとホットした表情をして。
「でもどんな人なんだろう。上野主任の奥さんって」そう言って、寝ている彼女の顔を見つめながら。
「可愛い」と、口にした。
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