10 / 13
第10話 世間は広い。そして箱庭だった。
しおりを挟む
「すいません。お風呂いただいちゃいました」
下着も服もそのまま同じのだけど、正直すっきりした。
「ほい!」と冷蔵庫から缶ビールを取り出し、私に手渡した。
「風呂上がりの一杯は格別だろう。飲んじゃいな」にっこりとほほ笑みながら言う彼の顔を見て。ああ、こんな時一人っきりだったら、どうなっていたんだろう。
予期していた出来事だったけど、それでも自分は意外と平気だったと思っていたけど。
傷は深かったんだね。
「大丈夫だよ。秋葉さんに連絡入れといたよ。上には彼女からうまく言っておくってさ」
そっか、愛子さんにもばれちゃった。でもいいや、彼女も感ずいていたんだろうから。
「よろしくってさ」
……よろしくって愛子さん、深い意味は無いよね。あとでそれこそ尋問されそうだわ。
「すみません」
その言葉しか出てこなかった。
「ま、いいんだけどね。僕も上野さんにはずいぶんと世話になっているから、これくらいしたって罰は当たらないよね」
ブルブルと顔を振った。罰? いやいや、罰どころか感謝と言うか、今傍にいてくれる人があなたでよかったと思います。こんな時頼れる人ってあと愛子さんくらいしかいないし。それに愛子さんはちゃんとした家庭がある身。迷惑どころの話じゃない。
甘えられるのが旦那しかいないというのも不憫なものだと思った。
手渡された缶ビールをじっと見つめ、プルタブを開けごくごくとそのまま一気にビールを喉に流し込んだ。
「ぷはぁ―!」
「うん、いい飲みっぷりだ」感心したようにビールを飲む姿を見つめる彼。
心臓の鼓動が別なリズムを刻み始めたのを感じている。
今、この空間には私と彼。春日先生の二人しかいない。
遮られた空間。個人のプライベートな空間に二人そろう男女。子供同士がいるわけじゃない。まして多感な時期の高校生でもあるまい。それなりのいっぱしの大人として社会人として成り立っている(果たして本当に成り立っているのかどうかは別として?)男女がだけがいる空間。
なんとなく引き寄せられるように、体が彼に触れ始めようとした時。
私のスマホからメッセージの着信音がした。
その音に反応してしまう。
カバンの中からスマホを取り出し見ると。雄也からのメッセージだった。
「今日はもしかしたら泊りになるかもしれない」
ただそれだけの短いメッセージ。
泊りになるかもしれないじゃなくて、泊まるんでしょ。彼女と……。
イラっとした気持ちを抑え込んで。
「わかった。それじゃ、今日は久しぶりに実家にでも帰ってみよっかな」て返してやった。
すぐに返信が来て「そっか、じゃぁ気を付けてね」とだけ返された。
おいおい雄也……さん! 私の実家忘れたわけじゃないよね。関西だよ! 今からそっち行くのって――――あっ、やめた。
その時何か殺伐とした、冷気のようなものが私の胸に流れ込んできた。
終わってたんだ。
……だよね。
私の表情から読み取ったのか春日先生は「旦那さんかい?」と聞いてきた。
そのまま、スマホを彼に渡してメッセージのやり取りを見せた。
「上野さんの実家って、確か大阪だったよね」
あ、この人覚えていたんだ。
前に話したことあった。なんとなく、何気なくだったけど。
「まっ今から行けないこともないんだろうけど。でも何か反応してもいいよね」そう言いながらクスッと笑い。
「でもさぁ君も、当てつけのように返したね」
「はい」と返事をしてやった。残ったビールをそのあと一気に飲み込んだ。
ビールのアルコールは私をちょっと大胆にさせる。ちょっとじゃないか?
「先生! セックスしましょう」
うわぁ。言っちゃってるよ私。
その言葉に春日先生は「ほほぉ」とした表情で即答した。
「しないよ」
「へっ? どうして? やっぱり私なんか魅力ないんですよね」
「いや十分に魅力的な女性だよ。結婚していなかったら彼女にしていたかもしれないな。う――んでも違うな。結婚している上野真奈美が僕は好きなのかもしれない」
「なんですかそれ。単に人妻がいいって言うことですか?」
「いや、そう言うことじゃないんだよね」とは言っているが何かエロイ事考えている雰囲気を漂わせている。さすがエッチなもの書いている人は一筋縄では落ちないって言うことなの?
「じゃぁさぁ、先生! 不倫の仕方教えてください」
「あっ、それも断る」
「断るって、知っているんでしょ。あんなエロイ小説書いてんですから知っていますよね」
「もちろん。知っているけど」
あっさりと答えるな!! だったら素直に教えろ! 心が叫んでいた。いやいや、胸の中でそう叫んだに過ぎない。
「じゃぁ私はどうすればいいんですか?」
「それは分からない。僕がどうこう言える立場じゃないからね」
「逃げるんですか!!」パンチ一発投げちゃった。
だってさ、頼るのもうあなたしかいないんだよね。それにそう言う風に仕向けたのあなたじゃないの? もしかして。
それを口にはしなかった。
したかったけど、しない。したら負けのような気がした。
なんで勝ち負けにこだわるのかは自分でも分からないけど。ふと、こんなことを思い始めた。
この人はずっと前から私のこと見続けていたんじゃないのかって。
春日成人さん。
あなたは私のこと……。本当に――――愛してくれているのかもしれないね。
下着も服もそのまま同じのだけど、正直すっきりした。
「ほい!」と冷蔵庫から缶ビールを取り出し、私に手渡した。
「風呂上がりの一杯は格別だろう。飲んじゃいな」にっこりとほほ笑みながら言う彼の顔を見て。ああ、こんな時一人っきりだったら、どうなっていたんだろう。
予期していた出来事だったけど、それでも自分は意外と平気だったと思っていたけど。
傷は深かったんだね。
「大丈夫だよ。秋葉さんに連絡入れといたよ。上には彼女からうまく言っておくってさ」
そっか、愛子さんにもばれちゃった。でもいいや、彼女も感ずいていたんだろうから。
「よろしくってさ」
……よろしくって愛子さん、深い意味は無いよね。あとでそれこそ尋問されそうだわ。
「すみません」
その言葉しか出てこなかった。
「ま、いいんだけどね。僕も上野さんにはずいぶんと世話になっているから、これくらいしたって罰は当たらないよね」
ブルブルと顔を振った。罰? いやいや、罰どころか感謝と言うか、今傍にいてくれる人があなたでよかったと思います。こんな時頼れる人ってあと愛子さんくらいしかいないし。それに愛子さんはちゃんとした家庭がある身。迷惑どころの話じゃない。
甘えられるのが旦那しかいないというのも不憫なものだと思った。
手渡された缶ビールをじっと見つめ、プルタブを開けごくごくとそのまま一気にビールを喉に流し込んだ。
「ぷはぁ―!」
「うん、いい飲みっぷりだ」感心したようにビールを飲む姿を見つめる彼。
心臓の鼓動が別なリズムを刻み始めたのを感じている。
今、この空間には私と彼。春日先生の二人しかいない。
遮られた空間。個人のプライベートな空間に二人そろう男女。子供同士がいるわけじゃない。まして多感な時期の高校生でもあるまい。それなりのいっぱしの大人として社会人として成り立っている(果たして本当に成り立っているのかどうかは別として?)男女がだけがいる空間。
なんとなく引き寄せられるように、体が彼に触れ始めようとした時。
私のスマホからメッセージの着信音がした。
その音に反応してしまう。
カバンの中からスマホを取り出し見ると。雄也からのメッセージだった。
「今日はもしかしたら泊りになるかもしれない」
ただそれだけの短いメッセージ。
泊りになるかもしれないじゃなくて、泊まるんでしょ。彼女と……。
イラっとした気持ちを抑え込んで。
「わかった。それじゃ、今日は久しぶりに実家にでも帰ってみよっかな」て返してやった。
すぐに返信が来て「そっか、じゃぁ気を付けてね」とだけ返された。
おいおい雄也……さん! 私の実家忘れたわけじゃないよね。関西だよ! 今からそっち行くのって――――あっ、やめた。
その時何か殺伐とした、冷気のようなものが私の胸に流れ込んできた。
終わってたんだ。
……だよね。
私の表情から読み取ったのか春日先生は「旦那さんかい?」と聞いてきた。
そのまま、スマホを彼に渡してメッセージのやり取りを見せた。
「上野さんの実家って、確か大阪だったよね」
あ、この人覚えていたんだ。
前に話したことあった。なんとなく、何気なくだったけど。
「まっ今から行けないこともないんだろうけど。でも何か反応してもいいよね」そう言いながらクスッと笑い。
「でもさぁ君も、当てつけのように返したね」
「はい」と返事をしてやった。残ったビールをそのあと一気に飲み込んだ。
ビールのアルコールは私をちょっと大胆にさせる。ちょっとじゃないか?
「先生! セックスしましょう」
うわぁ。言っちゃってるよ私。
その言葉に春日先生は「ほほぉ」とした表情で即答した。
「しないよ」
「へっ? どうして? やっぱり私なんか魅力ないんですよね」
「いや十分に魅力的な女性だよ。結婚していなかったら彼女にしていたかもしれないな。う――んでも違うな。結婚している上野真奈美が僕は好きなのかもしれない」
「なんですかそれ。単に人妻がいいって言うことですか?」
「いや、そう言うことじゃないんだよね」とは言っているが何かエロイ事考えている雰囲気を漂わせている。さすがエッチなもの書いている人は一筋縄では落ちないって言うことなの?
「じゃぁさぁ、先生! 不倫の仕方教えてください」
「あっ、それも断る」
「断るって、知っているんでしょ。あんなエロイ小説書いてんですから知っていますよね」
「もちろん。知っているけど」
あっさりと答えるな!! だったら素直に教えろ! 心が叫んでいた。いやいや、胸の中でそう叫んだに過ぎない。
「じゃぁ私はどうすればいいんですか?」
「それは分からない。僕がどうこう言える立場じゃないからね」
「逃げるんですか!!」パンチ一発投げちゃった。
だってさ、頼るのもうあなたしかいないんだよね。それにそう言う風に仕向けたのあなたじゃないの? もしかして。
それを口にはしなかった。
したかったけど、しない。したら負けのような気がした。
なんで勝ち負けにこだわるのかは自分でも分からないけど。ふと、こんなことを思い始めた。
この人はずっと前から私のこと見続けていたんじゃないのかって。
春日成人さん。
あなたは私のこと……。本当に――――愛してくれているのかもしれないね。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ダメな君のそばには私
蓮水千夜
恋愛
ダメ男より私と付き合えばいいじゃない!
友人はダメ男ばかり引き寄せるダメ男ホイホイだった!?
職場の同僚で友人の陽奈と一緒にカフェに来ていた雪乃は、恋愛経験ゼロなのに何故か恋愛相談を持ちかけられて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる