5 / 13
第5話 一皮むけました。
しおりを挟む
結婚記念日を境に、なんか私達はぎくしゃくとしていた。
「ごめん。本当にごめん」と平謝りする雄也。
別に仕事だったんだからそんなに謝らなくたって。私だって聞き分けのない子供じゃないんだから。
それとも何か後ろめたいことでもあるの?
それを聞き出す勇気なんてあるわけないじゃん。だって………雄也の事。信じてるもん。
て、そんなことを愛子さんにいうと。
「ああ、それってさぁ―。お互いに疑い始めてるっていうかさぁ。あなたの方が疑い始めちゃってるんだよきっと」
「嘘! そんなことないよ!」
「そぉお? 何か自分に言い聞かせてない? 信じてるよ。なんてさ」
ギクッと胸を刺された感じだった。
その通りだ。自分で自分に言い聞かせている。……自分がいる。
「疑い始めるとさ、止まらないんだよね。それにさ、なんかもやっとしたのが生まれちゃって来るんだよね」
「もしかして愛子さんもそんなことあったの?」
「あはは、私達? もうそんなのとっくに過ぎちゃったわよ」
過ぎちゃったって。て、いうことはあったんだ。
「まっこれも夫婦としての通過点かもね」
にんまりと意味ありげに笑いながら、応える愛子さんがなんか不気味だ。
そんな会話をしていると。
「おい上野!」
と編集長が私を呼んだ。
びくっとした。また身に覚えのない? と言いうのか。ミスしたんだろうか?
脅えながら頭を下げて、ゆっくりと編集長のデスクへ向かった。
「なんだよその元気なさげな姿は?」
「あのぉ――。もしかして私何かまたやらかしました?」
「はぁ―、上野何かお前やらかしたのか?」とにんまり笑いながら編集長は応えた。
プルプルと顔振って「やらかしていません!」と答えると。
「ほれ。これ新企画の資料。今回お前が担当しろ」
わたされた資料の表紙には「百合企画」と書かれていた。
「えっ! な、なんで私なんですか?」
「適任だろ」
「て、適任って……私そっちの趣味無いんですけど」
にんまりとしながら編集長は「今週中に作家5人ピックアップしていてくれ」そう言いながら私から視線を外した。
そうなれば、用事は済んだ。ということを意味している。
自分のデスクに戻ると、愛子さんが資料をひょいと取り上げ。
「へぇー百合企画ってうちじゃ珍しいわね。いよいよそう言うのにうちも手を出してきたんだ」
「あのう、愛子さんなんか面白がっていません?」
「うんうん、面白そうだよ。あ、そうだ春日先生にも声かけよっか」
ジトっと愛子さんを見つめながら。
「春日先生って不倫専門じゃないですか。百合路線いけないでしょ。やばいの書いてきますきっと」
「あはは、確かに言えてる。でもねぇ、この前ちょっと聞かれたんだ。上野さんどうしてるって」
「それってどういう意味なんでしょうね?」
「なんだかさぁ―、寂しがっていたよ彼。麻奈美に会えなくてさ」
「いやいやそんなことは無いでしょ。愛子さんとは良好なんですから。今更私なんか」
「そうかなぁ。そうでもないと思うんだけどなぁ。私って春日先生より年上じゃない。なんかちょっと遠慮って言うかそんな感じがするんだよね」
遠慮って何だろう?
「それにさぁ、本当は春日先生から頼まれてたんだ。麻奈美に取材したいって」
「取材って……何?」
「結婚二年目の浮気についてだって」
「はぁ―? 浮気? 私そんなことするわけないじゃないの?」
「んっ! でもさ、浮気って夫婦。つまりはさ妻だけじゃなくて、旦那についても言えるわけだよね」
「旦那って。雄也が浮気するはず……」
なぜか、そのあとの言葉が続かなかった。
「まっ、別に断りたきゃ、私からそれとなく言っとくけど」
春日先生。担当していた時からちょっと警戒バリアーを這っていたことは確かだ。
でも、今は直担当ではない。その春日先生から『浮気』の取材。
してないから取材にもなんないと思うけど。断ろうとした時私のスマホにメッセージは送られてきた。
雄也♡:「ごめん。今晩かなり遅くなりそうだから、先に休んでいていいよ。夕食もすませておくから大丈夫」
はぁ―またか。最近多いよなぁ。お仕事そんなに忙しんだ。
麻奈美:「わかったあんまり無理しないでね」と返信したら、そのあとは何も返ってこなかった。
「はっ」思わずあきれたようなため息が口から洩れてしまった。
「で、どうするの?」愛子さんから返事を聞かれた。
思わず私は……。
「いいよ」と答えていた。
「ごめん。本当にごめん」と平謝りする雄也。
別に仕事だったんだからそんなに謝らなくたって。私だって聞き分けのない子供じゃないんだから。
それとも何か後ろめたいことでもあるの?
それを聞き出す勇気なんてあるわけないじゃん。だって………雄也の事。信じてるもん。
て、そんなことを愛子さんにいうと。
「ああ、それってさぁ―。お互いに疑い始めてるっていうかさぁ。あなたの方が疑い始めちゃってるんだよきっと」
「嘘! そんなことないよ!」
「そぉお? 何か自分に言い聞かせてない? 信じてるよ。なんてさ」
ギクッと胸を刺された感じだった。
その通りだ。自分で自分に言い聞かせている。……自分がいる。
「疑い始めるとさ、止まらないんだよね。それにさ、なんかもやっとしたのが生まれちゃって来るんだよね」
「もしかして愛子さんもそんなことあったの?」
「あはは、私達? もうそんなのとっくに過ぎちゃったわよ」
過ぎちゃったって。て、いうことはあったんだ。
「まっこれも夫婦としての通過点かもね」
にんまりと意味ありげに笑いながら、応える愛子さんがなんか不気味だ。
そんな会話をしていると。
「おい上野!」
と編集長が私を呼んだ。
びくっとした。また身に覚えのない? と言いうのか。ミスしたんだろうか?
脅えながら頭を下げて、ゆっくりと編集長のデスクへ向かった。
「なんだよその元気なさげな姿は?」
「あのぉ――。もしかして私何かまたやらかしました?」
「はぁ―、上野何かお前やらかしたのか?」とにんまり笑いながら編集長は応えた。
プルプルと顔振って「やらかしていません!」と答えると。
「ほれ。これ新企画の資料。今回お前が担当しろ」
わたされた資料の表紙には「百合企画」と書かれていた。
「えっ! な、なんで私なんですか?」
「適任だろ」
「て、適任って……私そっちの趣味無いんですけど」
にんまりとしながら編集長は「今週中に作家5人ピックアップしていてくれ」そう言いながら私から視線を外した。
そうなれば、用事は済んだ。ということを意味している。
自分のデスクに戻ると、愛子さんが資料をひょいと取り上げ。
「へぇー百合企画ってうちじゃ珍しいわね。いよいよそう言うのにうちも手を出してきたんだ」
「あのう、愛子さんなんか面白がっていません?」
「うんうん、面白そうだよ。あ、そうだ春日先生にも声かけよっか」
ジトっと愛子さんを見つめながら。
「春日先生って不倫専門じゃないですか。百合路線いけないでしょ。やばいの書いてきますきっと」
「あはは、確かに言えてる。でもねぇ、この前ちょっと聞かれたんだ。上野さんどうしてるって」
「それってどういう意味なんでしょうね?」
「なんだかさぁ―、寂しがっていたよ彼。麻奈美に会えなくてさ」
「いやいやそんなことは無いでしょ。愛子さんとは良好なんですから。今更私なんか」
「そうかなぁ。そうでもないと思うんだけどなぁ。私って春日先生より年上じゃない。なんかちょっと遠慮って言うかそんな感じがするんだよね」
遠慮って何だろう?
「それにさぁ、本当は春日先生から頼まれてたんだ。麻奈美に取材したいって」
「取材って……何?」
「結婚二年目の浮気についてだって」
「はぁ―? 浮気? 私そんなことするわけないじゃないの?」
「んっ! でもさ、浮気って夫婦。つまりはさ妻だけじゃなくて、旦那についても言えるわけだよね」
「旦那って。雄也が浮気するはず……」
なぜか、そのあとの言葉が続かなかった。
「まっ、別に断りたきゃ、私からそれとなく言っとくけど」
春日先生。担当していた時からちょっと警戒バリアーを這っていたことは確かだ。
でも、今は直担当ではない。その春日先生から『浮気』の取材。
してないから取材にもなんないと思うけど。断ろうとした時私のスマホにメッセージは送られてきた。
雄也♡:「ごめん。今晩かなり遅くなりそうだから、先に休んでいていいよ。夕食もすませておくから大丈夫」
はぁ―またか。最近多いよなぁ。お仕事そんなに忙しんだ。
麻奈美:「わかったあんまり無理しないでね」と返信したら、そのあとは何も返ってこなかった。
「はっ」思わずあきれたようなため息が口から洩れてしまった。
「で、どうするの?」愛子さんから返事を聞かれた。
思わず私は……。
「いいよ」と答えていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説


【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる