上 下
59 / 69

第58話 季節が変わるその時期に ACT4

しおりを挟む
杉村愛華すぎむらあいか。今僕が付き合っている彼女……と、言っていいのか?
学校ではなんだかすでに公認の仲になっているようだ。

それも、担任が広めたというお墨付き。

はぁ―ちょっと待ってくれよ頼斗さん。確かに相談したことは、今更いいんだけど。それをさ、ホームルームで公表しなくたっていいんじゃねぇの!!
クレームだ!! 頼斗さんに「なんで愛華と付き合っているなんていうんだよ」ってメッセージを送ると。

即座に「あははは、まずかったか? でもそう言う関係になってんだろ。ネタはもう上がっている。それに杉村の成績も何とかお前が居れば大丈夫そうだしな」
「それって、何? 成績のことでくっ付けただけじゃん」
「いやいや、海外にいる杉村の母親の代わりに、あの美人で若い祖母さんと面談した時に向こうから言ってきたんだよ。お前と杉村がいい仲だっていうのをさ」

「はぁ―」とため息が出てきた。

まぁ確かにその、愛華の家ではもうすでに公認と言うか、知られているわけで。特に佳奈美さんにはなんかものすごく気に入られてしまい。

「ねぇねぇ、来年にはひ孫の顔見られるかなぁ」なんて、と言うかそのあとに「結城の子なら私が身籠ってもいいんだけど」
愛華が付け加えるように「そっかぁ―、でもまだ生理あるんでしょ。出来るかもよ」なんてあおる始末。

正直出来ないようにするのが難しい? 避妊すればいいだけなんだけど、ホント期待されちゃってるというか、なんかそのままずるずると行きそうな気がして怖いくらい。
それに佳奈美さんは「別に愛華と必ず結婚しなくたっていいよ。あんたの子だったら大歓迎さ」と言うし。

当の愛華も「そうねぇ―、私の本性ここまでさらけ出せるのって、結城だけしかいないんだもん。つながり持ってくれればそれでもいいんだけど。2番、3番でもいいよ」
それでもって、担任に妊娠宣告ですか?
そこまでしますか? ――――普通?

確かにお店の跡継ぎが欲しいというのはよくわかるんだけど。まぁそれだけじゃないというのもよく伝わってくる。
まずは、愛華の性欲と性癖は表に出しちゃいけない。

気温が下がってきたこの季節、裸でいるのには寒くなってきているのもある。それでも部屋が暖房で温かくなると脱ぐ始末。
「結城も脱いじゃえばいいのに」と愛華は言うけど、決してこの家族と言うかこの家系は裸族ではない。
性欲が強すぎるがために、そうしているというのが本音だということを理解した。

そんな二人を知り尽くしている佳奈美さんの旦那……愛華からすればお爺さんになるんだろうけど、この家には寄り付かない。
この二人の餌食になるのがわかっているからだ。もしこれに愛華の母親が居たら――――もっとすごいことになっていたのか?

それでも愛華との関係はどんどん深まっていくような感じだ。

「なぁ結城よ。お前、そこまで惚れ込まれているんだったら、もう、腹決めたらどうだ!」
「腹決めるって? 結婚しろっていうこと?」
「じゃねぇのか?」と、頼斗さんは他人事のように言う。

ま、確かに他人事なんだろうけど、一応担任なんだけど。受け持つ生徒が在学中に妊娠出産? また問題ですよ。もしかしてそれこそ学校首になりかねないんじゃねぇ。

「あのさ、それじゃ、自分はどうなんだよ。頼斗さん。新しい彼女でももう出来ましたか?」
頼斗さんはきっぱりと「いや、いねぇぞ。出来ねぇんだなこれがまたぁ」
いつしか通話モードになっていた。

「女子生徒には人気あるのにね」
「あははは、生徒に手付けたらそれこそ懲戒解雇だぜ。でもさ、正直いねぇんだよ。彼奴を超える女性ひとが……」
「なんだよ、実は律ねぇに未練まだたっぷりなんじゃない? そこんとこ否定したくないんでしょ。ねぇ兄さん」
「うっ! お前最近つえぇよな! 仮にも俺、お前より年上だし一応担任様なんんだぜ」

「あのさぁ―、この際そんなこと言ってられないんじゃない。未練たらたら、垂れ流し状態なんだもん。もう一度ちゃんと向き合ってみたらどうかな律ねぇと」
「……そ、それでお前はいいのかよ。お前だってそのなんだ、彼奴の事……」

「僕らはそう言う関係じゃねぇていうの。まぁ確かにさ、もし律ねぇがどこかの人と本当に結婚しちゃったら。繋がりは……もう切れているんだろうけど、永遠に手の届かないところに行ってしまうのが、なんかものすごく寂しい。家族のようだったし。実際はそれ以上の関係だったけど。でもできることなら、ずっと繋がりがあってほしいんだ。どんな形でも」

「それがお前の本音か?」
「――――そ、そうだね」

「それにこの俺を利用しようとしているっていうことか?」

「そう取られてもいい。そうなれるのなら、僕も納得するよ。―――――――兄さん」


馬鹿か、お前は。
頼斗さんはそう言って通話を切った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダメな君のそばには私

蓮水千夜
恋愛
ダメ男より私と付き合えばいいじゃない! 友人はダメ男ばかり引き寄せるダメ男ホイホイだった!? 職場の同僚で友人の陽奈と一緒にカフェに来ていた雪乃は、恋愛経験ゼロなのに何故か恋愛相談を持ちかけられて──!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

さくらと遥香(ショートストーリー)

youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。 その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。 ※さくちゃん目線です。 ※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。 ※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。 ※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

私と白い王子様

ふり
恋愛
 大学の春休み中のある日、夕季(ゆき)のもとに幼なじみの彗(けい)から電話がかかってくる。内容は「旅行に行こう」というもの。夕季は答えを先送りにした電話を切った。ここ数年は別々の大学に進学していて、疎遠になっていたからだ 夕季 https://x.gd/u7rDe 慧 https://x.gd/gOgB5 「『私と白い王子様』について」 https://x.gd/aN6qk

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...