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第40話 あの子とこの娘とそして君もなの? ACT 6
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いやぁ―、まずい腹減ってきたぁ。
やっぱりパン1個じゃ足りなかった。ぐるぅぅぅぅ――腹なっている。
「どうしたの笹崎君? 机にうつぶせちゃって」
「あっ、戸鞠か。腹へちゃってさぁ―」
「へっ? お昼食べなかったの?」
「いや、弁当持ってきたんだけど、弁当拉致された」
「はぁ? 拉致って?」
あ、まじぃ。あんなこと言えねぇよな。まさか弁当あの子に横取りされちまったなんて。
んでとっさに思いついたのが何とまぁ―「いやぁ―、弁当広げたら、カラスの奴に襲われて全部持ってかれちまった」なんて見え透いた嘘を言ってごまかした。
「カラス? 嘘! マジ。そんなことってあるんだ。よっぽどそのお弁当美味しそうだったんじゃないの?」
「さぁ、どうだか」
意外と信じてくれた見たい。
「もうなんでもっと早く言わないの! て、私もお弁当もう食べちゃってないし……。あっ! そうだ、これあげる」
戸鞠は自分のサイドバックから何かを取り出し、僕の机の上に置いた。
「あ、飴」しかも一袋。
「ん、今それしかないんだぁ―、ま、それで飢えをしのいでおくんなせぇ―」
にっこりとほほ笑み、戸鞠は僕の頭を幼子をあやすように撫でた。
「飴ですか?」
「そうよ、ないよりはましでしょ!」
「確かに。ありがたくいただきます」
そんな戸鞠とのやり取りをじっと見つめる目があった。ふとその方に視線を送ると、さっと顔を背けて机の上をじっと見つめていた。
杉村愛華。な、なんだ杉村、ジトっとした視線が気になるんだけど!
なにかあるのか? 声をかけようと思ったが、やめた。
なんかそんな雰囲気じゃないような感じだったからだ。
「まっ、あと1時限頑張って。そうすれば今日はもう終わりじゃん」
「………た、確かに」
そのあとの1時限が大変そうなんだけど。
戸鞠からもらった飴をなめ、残りの授業を何とか……。空腹とぽかぽかとした陽気が、意識をどこかに連れて行ってくれておかげで、気が付いたときには、ホームルームも終わっていた。
こりゃ、マジ、どこかに寄ってなんか食わねぇと、ぶっ倒れてしまいそうだ。
足早に教室を出て、駅の方へと向かった。
そんな僕を追いかけ止める声がする。
「笹崎君――――ん! ちょっと待ってよぉ!」
振り向けば、杉村が駆け足でこっちに近づいてくる姿が目に入った。
「………杉村」
と、その時だった。あともう少しと言うところで、何かにつまづいたんだろう「うわぁ!」と言う声と共に僕に杉村の体が覆いかぶさる。
とっさにその体を受け止めるように抱きしめた。
ふわっとたなびくセミロングの髪。その髪と共にふわりとかぐる甘い香り。
ふと思った。腹が減って嗅覚が増していたせいだろうか? あの子。乃木満里奈とは違う香りが洟をかすめる。
しっかりと抱きしめた彼女の体は見た目よりとても柔らかい。……で、もっとやわらかいものが僕の胸にもろに当たっている。
い、意外と……あるんだ。て、何がだよ!!
「大丈夫か、杉村」
抱きしめながら僕は杉村に問う。
「う、うん」
耳元で彼女の声が聞こえる。
「あのぉ――もう大丈夫だから。……その、放してもらえませんか」
「えっ! あ、ご、ごめん」
かなりしっかりと抱きしめていた。服の上からでも彼女のぬくもりが伝わる。少し汗ばんだその体、普段あまり表に出ないというか、自分の表情を何か隠しているような、そんな感じを植え付けさせていた杉村の表情が、いつもと違う。
真っ赤な顔をして、俯きながらも「ありがとう」と言う。その言葉は、はっきりとした言葉だった。
「どうしたんだよ杉村らしくないじゃん。そんなに急いでさ」
「う、うん。だって笹崎君。歩くの早いんだもん。気が付いたらもう学校の外までいっちゃってるし」
「何か僕にあった?」
「べ、別にそんな大事な用事じゃないんだけど、なんとなく。――――な、なんとなくよ」
なんとなくって、でもかなり必死に追いかけてきたような――――気がしたのは。はて?
「ま、とにかく行こうか」
このままここで二人でとどまっているのには、あまりにも辺りの視線が熱すぎる。
駅に向かい歩こうとしたその時だった。
「痛い!」と、杉村の口が開く。
「どうした。どこか怪我でもしたか?」
「う、うん。足首が……その」
「えっ! 足首って、どっち?」
「左の方」そう言う彼女の左足首に目を向けると、靴で少し擦りむいたのか白いソックスにうっすらと血がにじんでいた。
「怪我してんじゃん」かがんで彼女の左足首に触れると「いた!」と声がした。
「もしかして捻挫もしている?」
「わ、わかんない」
「歩ける? 学校戻って保健室に行こうか?」
「………だ、大丈夫。我慢できないほどじゃないから」
そう言いながらも、左足に体重をかけないように歩き出すその姿は、とても大丈夫な様子には見えなかった。
そんな杉村の左腕を取り、僕の肩に乗せて「もっと寄りかかっていいから」と言い、二人でそのまま歩き出した。
駅の改札を抜け、いつもは階段を渡り対面するホームで電車を待ったが、今日はそのまま反対側に向かうホームにとどまった。
「笹崎君、こっち反対側だよ」
「うん、でもほっとけねぇだろ」カンカン、駅わきの遮断機が鳴り出した。
そして僕と杉村はその停車した電車に乗り込む。
いつもとは反対方向に向かうその電車に。
杉村を座席に座らせ、動きだす電車から流れ映る、今までと違う車窓を目にしていた。
やっぱりパン1個じゃ足りなかった。ぐるぅぅぅぅ――腹なっている。
「どうしたの笹崎君? 机にうつぶせちゃって」
「あっ、戸鞠か。腹へちゃってさぁ―」
「へっ? お昼食べなかったの?」
「いや、弁当持ってきたんだけど、弁当拉致された」
「はぁ? 拉致って?」
あ、まじぃ。あんなこと言えねぇよな。まさか弁当あの子に横取りされちまったなんて。
んでとっさに思いついたのが何とまぁ―「いやぁ―、弁当広げたら、カラスの奴に襲われて全部持ってかれちまった」なんて見え透いた嘘を言ってごまかした。
「カラス? 嘘! マジ。そんなことってあるんだ。よっぽどそのお弁当美味しそうだったんじゃないの?」
「さぁ、どうだか」
意外と信じてくれた見たい。
「もうなんでもっと早く言わないの! て、私もお弁当もう食べちゃってないし……。あっ! そうだ、これあげる」
戸鞠は自分のサイドバックから何かを取り出し、僕の机の上に置いた。
「あ、飴」しかも一袋。
「ん、今それしかないんだぁ―、ま、それで飢えをしのいでおくんなせぇ―」
にっこりとほほ笑み、戸鞠は僕の頭を幼子をあやすように撫でた。
「飴ですか?」
「そうよ、ないよりはましでしょ!」
「確かに。ありがたくいただきます」
そんな戸鞠とのやり取りをじっと見つめる目があった。ふとその方に視線を送ると、さっと顔を背けて机の上をじっと見つめていた。
杉村愛華。な、なんだ杉村、ジトっとした視線が気になるんだけど!
なにかあるのか? 声をかけようと思ったが、やめた。
なんかそんな雰囲気じゃないような感じだったからだ。
「まっ、あと1時限頑張って。そうすれば今日はもう終わりじゃん」
「………た、確かに」
そのあとの1時限が大変そうなんだけど。
戸鞠からもらった飴をなめ、残りの授業を何とか……。空腹とぽかぽかとした陽気が、意識をどこかに連れて行ってくれておかげで、気が付いたときには、ホームルームも終わっていた。
こりゃ、マジ、どこかに寄ってなんか食わねぇと、ぶっ倒れてしまいそうだ。
足早に教室を出て、駅の方へと向かった。
そんな僕を追いかけ止める声がする。
「笹崎君――――ん! ちょっと待ってよぉ!」
振り向けば、杉村が駆け足でこっちに近づいてくる姿が目に入った。
「………杉村」
と、その時だった。あともう少しと言うところで、何かにつまづいたんだろう「うわぁ!」と言う声と共に僕に杉村の体が覆いかぶさる。
とっさにその体を受け止めるように抱きしめた。
ふわっとたなびくセミロングの髪。その髪と共にふわりとかぐる甘い香り。
ふと思った。腹が減って嗅覚が増していたせいだろうか? あの子。乃木満里奈とは違う香りが洟をかすめる。
しっかりと抱きしめた彼女の体は見た目よりとても柔らかい。……で、もっとやわらかいものが僕の胸にもろに当たっている。
い、意外と……あるんだ。て、何がだよ!!
「大丈夫か、杉村」
抱きしめながら僕は杉村に問う。
「う、うん」
耳元で彼女の声が聞こえる。
「あのぉ――もう大丈夫だから。……その、放してもらえませんか」
「えっ! あ、ご、ごめん」
かなりしっかりと抱きしめていた。服の上からでも彼女のぬくもりが伝わる。少し汗ばんだその体、普段あまり表に出ないというか、自分の表情を何か隠しているような、そんな感じを植え付けさせていた杉村の表情が、いつもと違う。
真っ赤な顔をして、俯きながらも「ありがとう」と言う。その言葉は、はっきりとした言葉だった。
「どうしたんだよ杉村らしくないじゃん。そんなに急いでさ」
「う、うん。だって笹崎君。歩くの早いんだもん。気が付いたらもう学校の外までいっちゃってるし」
「何か僕にあった?」
「べ、別にそんな大事な用事じゃないんだけど、なんとなく。――――な、なんとなくよ」
なんとなくって、でもかなり必死に追いかけてきたような――――気がしたのは。はて?
「ま、とにかく行こうか」
このままここで二人でとどまっているのには、あまりにも辺りの視線が熱すぎる。
駅に向かい歩こうとしたその時だった。
「痛い!」と、杉村の口が開く。
「どうした。どこか怪我でもしたか?」
「う、うん。足首が……その」
「えっ! 足首って、どっち?」
「左の方」そう言う彼女の左足首に目を向けると、靴で少し擦りむいたのか白いソックスにうっすらと血がにじんでいた。
「怪我してんじゃん」かがんで彼女の左足首に触れると「いた!」と声がした。
「もしかして捻挫もしている?」
「わ、わかんない」
「歩ける? 学校戻って保健室に行こうか?」
「………だ、大丈夫。我慢できないほどじゃないから」
そう言いながらも、左足に体重をかけないように歩き出すその姿は、とても大丈夫な様子には見えなかった。
そんな杉村の左腕を取り、僕の肩に乗せて「もっと寄りかかっていいから」と言い、二人でそのまま歩き出した。
駅の改札を抜け、いつもは階段を渡り対面するホームで電車を待ったが、今日はそのまま反対側に向かうホームにとどまった。
「笹崎君、こっち反対側だよ」
「うん、でもほっとけねぇだろ」カンカン、駅わきの遮断機が鳴り出した。
そして僕と杉村はその停車した電車に乗り込む。
いつもとは反対方向に向かうその電車に。
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