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第36話 あの子とこの娘とそして君もなの? ACT 2
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「ねぇ、助けてほしい?」
葵さんは悪戯っぽく僕に言う。
目がスッと、葵さんの胸元に行ってしまった。いくら家の中とは言え、ノースリーブのシャツ1枚と言うのは……高校男子の視線をそこに行かせてしまうのは、自然なことだろうか。
く、黒のブラ……谷間が見える。
しかしこんな状態でもそこに意識が集中してしまう男の性が恨めしい。
「な、なによさっきから葵さんとべたべたしちゃって」
「あれぇ―、べたべたなんかしてないわよ、そう見えるのぉ?」
「見えるから言ってるんじゃない」
「そうなんだぁ―、まだ恵美ちゃんもウブなのねぇ。これくらいのことでそんなに目くじら立てなくたっていいじゃない。それにさ、あなた他達って別に付き合っているわけでもないんでしょ」
「うっ! そ、そうよ。どうせ私は振ったわよ。私は結城を振りました!」
「でしょ――。だったら別にいいじゃない。結城君がどこで何しようがさ。恵美ちゃんには関係ないこと。まぁー特に悪いことしてたような感じはしないから、いいんじゃない」
納得いかなそうな顔をしながらも恵美は
「もう知らない、そこまで言うんだったら、もういい!!」と、すねて自分の部屋に行ってしまった。
はぁ―――――っ! 深いため息が出た。
「ああ、すねちゃった。可愛いねぇ―、いいなぁあんな態度取れる年頃が懐かしいよ」
葵さんは腕を組んでしみじみと言う。
「ま、それでも何とかなったからいいか。あ、結城君これ、貸にしておくね。あとできっちりと払ってもらうから」
「ええ、そ、そんなぁ――」
「えへへへ、その体で払ってもらもらおっかなぁ―」ジトっとなまめかしい視線が僕の方に注がれる。
「ああ、楽しみが一つ増えたなぁ―、シャワーでも浴びてこよっと」
そう言い残し、葵さんは風呂場へと向かった。
いったい何だったんだ?
帰ってくるなり、いきなりこんなことになるとは思ってもみなかった展開だ。
でも……、恵美と話せた。
緊張せずにと言うかなんだろう、本心で話せたというべきなのかなぁ。ま、喧嘩みたいな感じだったけど、でも話せたんだよな。それに、恵美の方から話しかけてくれたのは今思うとなんとなく嬉しい。
しかしだなぜ、恵美はあんなにもつかかって来たんだろう?
頼斗さんと一緒に出掛けたことは、多分恵美には誰も言っていないと思うんだけど。
それもさ、響音さんの命日だった……。もしかして本当に恵美は僕のことを心配して。
今だからこんなことを思える。今だから、恵美のことを全く違う想いで見られる。
やっぱり、僕はあそこに行くべきだったんだ。
一晩空かした自分の部屋に入ると、なんだか知らない部屋に迷い込んだかのような気がしていた。
確かに自分の部屋なのに。今までいた感じとは何かが違う。
多分、僕自身が変わったせいかもしれない。
ベッドに体を倒れこるようにして投げ出し、天井を黙って見つめていた。
少しだけど、恵美の心の中に触れることが出来たかもしれない。
今はそれだけでいい。それ以上は求めない。
もし、恵美が響音さんに見せていたあの笑顔を、僕にも見せて……そんなことは望まない。
いいんだ。それで。
別にあきらめたわけじゃないんだけど、なんだろう。何かもやっとした感じが僕の胸の中にある。
ただ単に好きだから。そうだったのか?
だけどその好きって言うのは、いったい何だったんだろう。
あの日、恵美の泣き叫ぶその姿に僕の心が揺れ動いたのは確かなことだ。それよりも、彼女が吹くあのアルトサックスの音色に僕の心はすでに奪われていた。だからこそ、僕はあの河川敷に足を何度も運んだんだ。
あの1年半の想いっていったい何だったんだろう。
なんか自分が自分である前に他の他人のような感じに思えてくる。
いったいこれから僕はどうすればいいのか?
今まで通りでいいのか?
……多分、それはもう出来ないことかもしれない。知ってしまった恵美の過去と深い傷跡。できることなら、支えになれればいい。
でも今はまだ、恵美とは距離を持ちたい。
この少しの距離が僕にとって、彼女を見つめていられる唯一の空間なんだから。
葵さんは悪戯っぽく僕に言う。
目がスッと、葵さんの胸元に行ってしまった。いくら家の中とは言え、ノースリーブのシャツ1枚と言うのは……高校男子の視線をそこに行かせてしまうのは、自然なことだろうか。
く、黒のブラ……谷間が見える。
しかしこんな状態でもそこに意識が集中してしまう男の性が恨めしい。
「な、なによさっきから葵さんとべたべたしちゃって」
「あれぇ―、べたべたなんかしてないわよ、そう見えるのぉ?」
「見えるから言ってるんじゃない」
「そうなんだぁ―、まだ恵美ちゃんもウブなのねぇ。これくらいのことでそんなに目くじら立てなくたっていいじゃない。それにさ、あなた他達って別に付き合っているわけでもないんでしょ」
「うっ! そ、そうよ。どうせ私は振ったわよ。私は結城を振りました!」
「でしょ――。だったら別にいいじゃない。結城君がどこで何しようがさ。恵美ちゃんには関係ないこと。まぁー特に悪いことしてたような感じはしないから、いいんじゃない」
納得いかなそうな顔をしながらも恵美は
「もう知らない、そこまで言うんだったら、もういい!!」と、すねて自分の部屋に行ってしまった。
はぁ―――――っ! 深いため息が出た。
「ああ、すねちゃった。可愛いねぇ―、いいなぁあんな態度取れる年頃が懐かしいよ」
葵さんは腕を組んでしみじみと言う。
「ま、それでも何とかなったからいいか。あ、結城君これ、貸にしておくね。あとできっちりと払ってもらうから」
「ええ、そ、そんなぁ――」
「えへへへ、その体で払ってもらもらおっかなぁ―」ジトっとなまめかしい視線が僕の方に注がれる。
「ああ、楽しみが一つ増えたなぁ―、シャワーでも浴びてこよっと」
そう言い残し、葵さんは風呂場へと向かった。
いったい何だったんだ?
帰ってくるなり、いきなりこんなことになるとは思ってもみなかった展開だ。
でも……、恵美と話せた。
緊張せずにと言うかなんだろう、本心で話せたというべきなのかなぁ。ま、喧嘩みたいな感じだったけど、でも話せたんだよな。それに、恵美の方から話しかけてくれたのは今思うとなんとなく嬉しい。
しかしだなぜ、恵美はあんなにもつかかって来たんだろう?
頼斗さんと一緒に出掛けたことは、多分恵美には誰も言っていないと思うんだけど。
それもさ、響音さんの命日だった……。もしかして本当に恵美は僕のことを心配して。
今だからこんなことを思える。今だから、恵美のことを全く違う想いで見られる。
やっぱり、僕はあそこに行くべきだったんだ。
一晩空かした自分の部屋に入ると、なんだか知らない部屋に迷い込んだかのような気がしていた。
確かに自分の部屋なのに。今までいた感じとは何かが違う。
多分、僕自身が変わったせいかもしれない。
ベッドに体を倒れこるようにして投げ出し、天井を黙って見つめていた。
少しだけど、恵美の心の中に触れることが出来たかもしれない。
今はそれだけでいい。それ以上は求めない。
もし、恵美が響音さんに見せていたあの笑顔を、僕にも見せて……そんなことは望まない。
いいんだ。それで。
別にあきらめたわけじゃないんだけど、なんだろう。何かもやっとした感じが僕の胸の中にある。
ただ単に好きだから。そうだったのか?
だけどその好きって言うのは、いったい何だったんだろう。
あの日、恵美の泣き叫ぶその姿に僕の心が揺れ動いたのは確かなことだ。それよりも、彼女が吹くあのアルトサックスの音色に僕の心はすでに奪われていた。だからこそ、僕はあの河川敷に足を何度も運んだんだ。
あの1年半の想いっていったい何だったんだろう。
なんか自分が自分である前に他の他人のような感じに思えてくる。
いったいこれから僕はどうすればいいのか?
今まで通りでいいのか?
……多分、それはもう出来ないことかもしれない。知ってしまった恵美の過去と深い傷跡。できることなら、支えになれればいい。
でも今はまだ、恵美とは距離を持ちたい。
この少しの距離が僕にとって、彼女を見つめていられる唯一の空間なんだから。
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