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第27話 僕の知らない彼女 ACT 12
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「お邪魔しまぁ―す」
玄関の三和土からそれほど段差を感じさせないフローリングの床の廊下。
頼斗さんの後をちょっとびくびくしながらついていく。
彼女が出てきたその部屋は、キッチンと居間一緒になった広めの空間の部屋だ。大きなサッシ窓に映る緑色の芝生と10本くらいだろうか、大きく疎の花弁を見開く黄色い向日葵の姿。
そんな光景が真っ先に飛び込んできた。
「なんだ親父。まだギブス取れていなかったのかよ」
「久しぶりに帰ってきて第一声がそれか、頼斗」
「はいはい、ただいまです。お父上様」
「全く人を相変わらずコケにしおって。お前ももういい年なんだから、親を少しは安心させれうような行動はとれんもんか!」
「うっせいわ! またすぐにそっちに話を持っていこうとする。俺たちはお互い承諾して、別れたんだ。それにこれは、当人の問題あって、親父の問題じゃねぇだろ!」
「ねぇねぇ、今日はさぁ―、頼斗君お客さん連れて来てるんだから、そこんとこ気が付いたら? 顔合わせるといつものように喧嘩ばかりしてなくてさぁ―」
ああ、たぶん律ねぇとの事刺されているんだ! まぁしょうがないか、お互い我が強いところは同じだし、まぁ―頼斗さんのあの見栄っ張りなところは多分律ねぇに振られたなんて言えないだろうな。
ま、正直なところ、どっちの言い分が正解なのかはわかんないけどね。
でも、この人が頼斗さんの父親。そして響音さんの父親。
ちょっと目をずらすと幸子さんの姿が目に入る。
いやぁ――――、どう見たって、なんというか、そのぉ――――やっぱり信じがたい。
どうしたら、こういう年配の人が、こんなにも可愛い、しかも自分の事同年代の人と結婚できるんだろうか。
そう言うことを考えちゃ失礼かもしれないけど、でも幸子さんって、なんかものすごく心に刺さる感じの人だよなぁ。
ほんんと初めて会った気がしない。
でも、何だろうずっと、僕に視線を送っているのが誰にでもわかるくらい、幸子さんは僕に気を向けている感じがするんだけど。
また、あの感触が即座によみがえるし、なんかさ、とてもこう言っては……ごめん! 誰に謝るのかはさておき、ものすごくエロイ。あのきゅっとしまったウエストに、スキニーパンツが食い込んでいる。大人の魅力を醸し出しながら、あの可愛さは罪だ。
やっぱりやばいな。なんかこの人は母親の前に女だ。私は女なんだということをアピールしているのが刺さる。
「あ、これ、俺の生徒。今日は響音の墓参りについてきてもらった」
頼斗さんのお父さんはそのことを聞くと顔を上げ、その伸びた髭を手でなぞりながら。
「それはありがとう。息子に手を合わせてくれて。ちょうど君と同じくらいの時だったな。彼奴も……」
「いや、響音の方が一つ年上かな」さっきまで喧嘩腰だった二人の会話は、静かな声に変っていた。
「初めまして、笹崎結城といいます」
軽く頭を下げ、名を言うと。
「笹崎? もっしかして、太芽君の?」
「父を知っていましたか?」
「そうか、やっぱりな、どことなく似ている気がしたんだ彼に。そうか……」そしてしっかりとした眼差しで僕を見つめ「ご両親残念だったな」と彼は言った。
それに返して僕はどう答えたらいいのか、戸惑った。それでも「ご心配いただいてありがとうございます。何とかようやく僕の方も落ち着いてきたところですから」と言う。
「そっかぁ笹崎ってどこかで聞いたことがあると思ったんだけど、太芽さんご夫婦の息子さんだったのね。正樹さんとも物凄く仲が良くて、それに綺麗な奥さん。ううん、お母さんだったね。結城君」
「皆さん僕の両親のこと知っていたんですね」
「ああ、あのカヌレのすぐ傍に一時住んでいたから、政樹君たちにも世話になったよ」
頼斗さんから聞いた通りだ。
だから、恵美のことをよく知っていたし、正樹さんやミリッツアさんとも、頼斗さんは親しげに会話ができるんだ。
葬式の時正樹さんが「葬式は身内だけの密葬にしよう。でないと、どんだけの人が来るかわからねぇからな」
正樹さんは多分、父さんの顔の広さを知っているからこそ、そうしたんだと思う。……多分それは僕への負担を減らしたかったからだろう。
こんなところまで繋がりがあるくらいだ、普通に葬式をしていたら、僕の精神は持たなかっただろうから。
「ま、いいから、結城君も座って。おなか減ってない? お料理頑張ったんだからたくさん食べてね」
「ま、座れや結城も。幸子さんの料理はうまいぞ、食べて言って損はないと思うけどな。やっぱ、結婚するんなら、うまいもん食わせてもらえる人が一番だよな」
「あら、頼斗君。まだ私の事諦めていなかったの? なんだかうれしいなぁ――!」
びょんと飛び跳ねる幸子さん。精神年齢は多分僕より若いんだろうな。
それで、まだ私のこと諦めていなかったって、一応義理でも親子なんじゃ……。
「か、勘違いすんなよ結城。幸子さんは俺の嫁じゃねぇ、この年寄りのもんだからな」
「な、なんだと、人を年寄りとは!! 俺はまだ50代だ! 老人じゃねぇ!」
「はん、何言ってやがる。だったら、ちゃんと幸子さんにもっと幸せな顔させろよ。名前の通りにな!」
「あのぉ―、二人ともいつもこんなに仲悪いんですか?」
と、仲に入る幸子さんに聞いてみると。
「ううん、本当はねものすごく仲いいの」とそっと耳に息をかけるくらい近づけて言う。
その顔を見るとにっこりとしているから、また変な気が盛り上がる。
前かがみにる幸子さんのその姿勢が、はだけたシャツの中に見える黒いブラに注がれてしまった。
多分、その視線を幸子さんは知っていながら、「うふっ」としながら僕の頭に手を添えた。
「ねぇ頼斗君。今日はお泊りしていくんでしょ。お酒飲んでもいいんじゃない。ねぇあなた?」
えっ! 泊まるの? ここに? マジで……。
ちらっと見つめる、頼斗さんの視線が気になるこの僕でした。
玄関の三和土からそれほど段差を感じさせないフローリングの床の廊下。
頼斗さんの後をちょっとびくびくしながらついていく。
彼女が出てきたその部屋は、キッチンと居間一緒になった広めの空間の部屋だ。大きなサッシ窓に映る緑色の芝生と10本くらいだろうか、大きく疎の花弁を見開く黄色い向日葵の姿。
そんな光景が真っ先に飛び込んできた。
「なんだ親父。まだギブス取れていなかったのかよ」
「久しぶりに帰ってきて第一声がそれか、頼斗」
「はいはい、ただいまです。お父上様」
「全く人を相変わらずコケにしおって。お前ももういい年なんだから、親を少しは安心させれうような行動はとれんもんか!」
「うっせいわ! またすぐにそっちに話を持っていこうとする。俺たちはお互い承諾して、別れたんだ。それにこれは、当人の問題あって、親父の問題じゃねぇだろ!」
「ねぇねぇ、今日はさぁ―、頼斗君お客さん連れて来てるんだから、そこんとこ気が付いたら? 顔合わせるといつものように喧嘩ばかりしてなくてさぁ―」
ああ、たぶん律ねぇとの事刺されているんだ! まぁしょうがないか、お互い我が強いところは同じだし、まぁ―頼斗さんのあの見栄っ張りなところは多分律ねぇに振られたなんて言えないだろうな。
ま、正直なところ、どっちの言い分が正解なのかはわかんないけどね。
でも、この人が頼斗さんの父親。そして響音さんの父親。
ちょっと目をずらすと幸子さんの姿が目に入る。
いやぁ――――、どう見たって、なんというか、そのぉ――――やっぱり信じがたい。
どうしたら、こういう年配の人が、こんなにも可愛い、しかも自分の事同年代の人と結婚できるんだろうか。
そう言うことを考えちゃ失礼かもしれないけど、でも幸子さんって、なんかものすごく心に刺さる感じの人だよなぁ。
ほんんと初めて会った気がしない。
でも、何だろうずっと、僕に視線を送っているのが誰にでもわかるくらい、幸子さんは僕に気を向けている感じがするんだけど。
また、あの感触が即座によみがえるし、なんかさ、とてもこう言っては……ごめん! 誰に謝るのかはさておき、ものすごくエロイ。あのきゅっとしまったウエストに、スキニーパンツが食い込んでいる。大人の魅力を醸し出しながら、あの可愛さは罪だ。
やっぱりやばいな。なんかこの人は母親の前に女だ。私は女なんだということをアピールしているのが刺さる。
「あ、これ、俺の生徒。今日は響音の墓参りについてきてもらった」
頼斗さんのお父さんはそのことを聞くと顔を上げ、その伸びた髭を手でなぞりながら。
「それはありがとう。息子に手を合わせてくれて。ちょうど君と同じくらいの時だったな。彼奴も……」
「いや、響音の方が一つ年上かな」さっきまで喧嘩腰だった二人の会話は、静かな声に変っていた。
「初めまして、笹崎結城といいます」
軽く頭を下げ、名を言うと。
「笹崎? もっしかして、太芽君の?」
「父を知っていましたか?」
「そうか、やっぱりな、どことなく似ている気がしたんだ彼に。そうか……」そしてしっかりとした眼差しで僕を見つめ「ご両親残念だったな」と彼は言った。
それに返して僕はどう答えたらいいのか、戸惑った。それでも「ご心配いただいてありがとうございます。何とかようやく僕の方も落ち着いてきたところですから」と言う。
「そっかぁ笹崎ってどこかで聞いたことがあると思ったんだけど、太芽さんご夫婦の息子さんだったのね。正樹さんとも物凄く仲が良くて、それに綺麗な奥さん。ううん、お母さんだったね。結城君」
「皆さん僕の両親のこと知っていたんですね」
「ああ、あのカヌレのすぐ傍に一時住んでいたから、政樹君たちにも世話になったよ」
頼斗さんから聞いた通りだ。
だから、恵美のことをよく知っていたし、正樹さんやミリッツアさんとも、頼斗さんは親しげに会話ができるんだ。
葬式の時正樹さんが「葬式は身内だけの密葬にしよう。でないと、どんだけの人が来るかわからねぇからな」
正樹さんは多分、父さんの顔の広さを知っているからこそ、そうしたんだと思う。……多分それは僕への負担を減らしたかったからだろう。
こんなところまで繋がりがあるくらいだ、普通に葬式をしていたら、僕の精神は持たなかっただろうから。
「ま、いいから、結城君も座って。おなか減ってない? お料理頑張ったんだからたくさん食べてね」
「ま、座れや結城も。幸子さんの料理はうまいぞ、食べて言って損はないと思うけどな。やっぱ、結婚するんなら、うまいもん食わせてもらえる人が一番だよな」
「あら、頼斗君。まだ私の事諦めていなかったの? なんだかうれしいなぁ――!」
びょんと飛び跳ねる幸子さん。精神年齢は多分僕より若いんだろうな。
それで、まだ私のこと諦めていなかったって、一応義理でも親子なんじゃ……。
「か、勘違いすんなよ結城。幸子さんは俺の嫁じゃねぇ、この年寄りのもんだからな」
「な、なんだと、人を年寄りとは!! 俺はまだ50代だ! 老人じゃねぇ!」
「はん、何言ってやがる。だったら、ちゃんと幸子さんにもっと幸せな顔させろよ。名前の通りにな!」
「あのぉ―、二人ともいつもこんなに仲悪いんですか?」
と、仲に入る幸子さんに聞いてみると。
「ううん、本当はねものすごく仲いいの」とそっと耳に息をかけるくらい近づけて言う。
その顔を見るとにっこりとしているから、また変な気が盛り上がる。
前かがみにる幸子さんのその姿勢が、はだけたシャツの中に見える黒いブラに注がれてしまった。
多分、その視線を幸子さんは知っていながら、「うふっ」としながら僕の頭に手を添えた。
「ねぇ頼斗君。今日はお泊りしていくんでしょ。お酒飲んでもいいんじゃない。ねぇあなた?」
えっ! 泊まるの? ここに? マジで……。
ちらっと見つめる、頼斗さんの視線が気になるこの僕でした。
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