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第12話 見上げるその先に ACT2
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「これから結城、どうするんだろうね」
葬式の時親戚といえるかどうかわからないが、そんな話をしている声が僕の耳に届いた。
一度に二人の親を亡くした僕は、もう頼る身寄りがないことをその時知った。
僕を引き取る親戚などはいないことを。
その時僕の肩に手を添えて「気にするな」と言い、まっすぐに前を向き、父さんと母さんの遺影に礼をするクマのようなガタイのいい男性がいた。
「久しぶりだな結城」
その人と会話をするのは、父さんと母さんが事故にあってから初めてだった。
あの時律ねぇは、叫ぶような声で鳴き。すべてを吐き出した。
それから、まるで人が変わったかのように方々に連絡を取りようやくここまでたどり着いた。その間、僕は何もできなかった。
本当に多くの人が弔問し、二人を見送ってくれた。
その彼が、ほんの数時間前、今にでも静かに眠る父さんに殴りかかろうというくらいの勢いで「ばっかやろう!!」と大泣きしながら叫んでいたのを目にしていた。
一緒に来た金髪の色白の女性。夫婦だというのは感じていた。
その女性も泣き叫び、壊れそうになるのを夫の彼がしっかりと支えていた。
「えっと……」
「な、なんだ! 俺のこと忘れちまったか。ま、しょうがねぇな、お前とはほんと久しぶりだし、来ていたのはまだ小さいころだったからな」
居合わせた律ねぇが教えてくれた。
彼の名は三浦政樹。そして寄り添うようにしている金髪のきれいな女性。奥さんのミリッツアさんであることを。
二人は父さんと母さんの親しい友人で会ったことを。
かすかに記憶がよみがえる。確かに幼いころ、この人たちに会っている。
そして僕はミリッツアさんを見た時ドキッとした。
似ている。しかも苗字も同じだ……まるで彼女と生き写しのようなその姿。
三浦恵美。
こんな時に彼女のことを思い出すなんて。
「………ゆうき?」
おぼろげに浮かぶ金髪のかわいらしい少女の姿を。
今の三浦恵美の姿ではない。まだ幼稚園にいるかいないかくらいのころだったと思う。
何か懐かしいその姿。
そうか、三浦恵美とは僕は出会っていたんだ。だから、ずっとどこかで知っているような感じがしていた。いや、何だろう。ただ会っていただけじゃない。
僕らはあのころ姉弟のように過ごしていた短い時間があった。
「もしかして、恵美さんの」
「ああ、ようやく思い出してくれたか。お前が来なくなって大分経つからな」
「ほんと大きくなったね結城君。お父さんにそっくりよ」といいながら、僕をしっかりとミリッツアさんは抱きしめた。
その時、なぜか律ねぇと同じような感じがした。それが同じものであるとは、その時はまだ知る由もなかった。
のちに知る。僕の親と、三浦恵美とその親との関係。
僕は彼らの若き時の話を、この時僕は知っておくべきだったのかもしれない。
そうすれば……彼女との接し方も大きく変わっていたのかもしれない。
白い煙は二人を大きな空という海に放した。
空と海。地球の裏側まで二人がたどり着けるように。
そして僕は、この思い出ばかりが積み重なる家を出て、三浦恵美と同居することになった。
彼女の家で、彼女と共に一つ屋根の下で生活をすることになったのだ。
振られて、まだ1か月もたっていない。
心の傷は癒えて……なんて言ってられなくなったのは、僕の大きな誤算だった。
僕の新たな生活は波乱に満ちた生活になりそうだ。
告って振られた恵美に振り回されてしまう。
本当に君は僕の妖精だったのか。
本性は知らぬが美しい……。
葬式の時親戚といえるかどうかわからないが、そんな話をしている声が僕の耳に届いた。
一度に二人の親を亡くした僕は、もう頼る身寄りがないことをその時知った。
僕を引き取る親戚などはいないことを。
その時僕の肩に手を添えて「気にするな」と言い、まっすぐに前を向き、父さんと母さんの遺影に礼をするクマのようなガタイのいい男性がいた。
「久しぶりだな結城」
その人と会話をするのは、父さんと母さんが事故にあってから初めてだった。
あの時律ねぇは、叫ぶような声で鳴き。すべてを吐き出した。
それから、まるで人が変わったかのように方々に連絡を取りようやくここまでたどり着いた。その間、僕は何もできなかった。
本当に多くの人が弔問し、二人を見送ってくれた。
その彼が、ほんの数時間前、今にでも静かに眠る父さんに殴りかかろうというくらいの勢いで「ばっかやろう!!」と大泣きしながら叫んでいたのを目にしていた。
一緒に来た金髪の色白の女性。夫婦だというのは感じていた。
その女性も泣き叫び、壊れそうになるのを夫の彼がしっかりと支えていた。
「えっと……」
「な、なんだ! 俺のこと忘れちまったか。ま、しょうがねぇな、お前とはほんと久しぶりだし、来ていたのはまだ小さいころだったからな」
居合わせた律ねぇが教えてくれた。
彼の名は三浦政樹。そして寄り添うようにしている金髪のきれいな女性。奥さんのミリッツアさんであることを。
二人は父さんと母さんの親しい友人で会ったことを。
かすかに記憶がよみがえる。確かに幼いころ、この人たちに会っている。
そして僕はミリッツアさんを見た時ドキッとした。
似ている。しかも苗字も同じだ……まるで彼女と生き写しのようなその姿。
三浦恵美。
こんな時に彼女のことを思い出すなんて。
「………ゆうき?」
おぼろげに浮かぶ金髪のかわいらしい少女の姿を。
今の三浦恵美の姿ではない。まだ幼稚園にいるかいないかくらいのころだったと思う。
何か懐かしいその姿。
そうか、三浦恵美とは僕は出会っていたんだ。だから、ずっとどこかで知っているような感じがしていた。いや、何だろう。ただ会っていただけじゃない。
僕らはあのころ姉弟のように過ごしていた短い時間があった。
「もしかして、恵美さんの」
「ああ、ようやく思い出してくれたか。お前が来なくなって大分経つからな」
「ほんと大きくなったね結城君。お父さんにそっくりよ」といいながら、僕をしっかりとミリッツアさんは抱きしめた。
その時、なぜか律ねぇと同じような感じがした。それが同じものであるとは、その時はまだ知る由もなかった。
のちに知る。僕の親と、三浦恵美とその親との関係。
僕は彼らの若き時の話を、この時僕は知っておくべきだったのかもしれない。
そうすれば……彼女との接し方も大きく変わっていたのかもしれない。
白い煙は二人を大きな空という海に放した。
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そして僕は、この思い出ばかりが積み重なる家を出て、三浦恵美と同居することになった。
彼女の家で、彼女と共に一つ屋根の下で生活をすることになったのだ。
振られて、まだ1か月もたっていない。
心の傷は癒えて……なんて言ってられなくなったのは、僕の大きな誤算だった。
僕の新たな生活は波乱に満ちた生活になりそうだ。
告って振られた恵美に振り回されてしまう。
本当に君は僕の妖精だったのか。
本性は知らぬが美しい……。
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