報われない恋の育て方

さかき原枝都は

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第1話 見事にフラられました ACT 1

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来るよな。いや来てくれるよな。

授業が終わった放課後。校舎裏の小さな庭。日差しは校舎の陰で遮られ、少し薄暗く感じるこの場所で僕は三浦恵美みうらえみが来るの待っていた。
今日の朝、彼女の下駄箱に手紙を入れた。いわゆる告白ラブレターだ。

この1年半、ただ遠くから見つめていただけの憧れの三浦恵美。
クラスは違うが、同じ学年であることはなんとなく、気持ち的にも近親間を持てている。

しかしだ! 彼女はこの学校では超が付くほどの有名人だ。
あの金髪にかわいらしい顔。吹奏楽部でアルトサックを吹かせれば、その音色に聞きほれてしまう。

男女にかかわらず、この学校で彼女三浦恵美という生徒を知らないものはいないだろう。
そしてこれは今や、もう勇者争奪。いやいや、愛しの姫争奪と言ってもいいだろう。この学校に入学してからの1年半の間、彼女に告白した男子の数はもはや30人を超えている。

そのすべてが撃沈しているのだ。

30人以上の敗北者。この僕が勇者の伝説を勝ち得るだけの力が……あ、ねぇよなぁ。
でも、でもだ。万が一という間違いでもいい。奇跡という神業をなしえてもいい。
チートなんて使えるんだったら、もちろん使うだろう。
ああ、すでに敗北感がこの僕を支配してきている。

それでも行くのだ、この1年半の想いを僕は彼女に告げなければいけない。
あんな姿とあんなにも悲しい声で泣く彼女の姿を見てしまった僕にできること。いつもそばにいてあげたい。
そんな思いが、ただただ、あふれてくる。

「ちょっと、だれ、私のお尻触ってんのぉ―」
「何言ってんだ誰も触ってなんかいねぇじゃねぇか」
孝義たかよし君、わたしが魅力的なのはわかっているけど、いきなり触るのはよしてね」
「だから触ってねぇって言ってるじゃねぇか。……誰がお前のそのデカ尻なんか触るもんか」

「んっ! でかじりとな?」

「あ、ごめん私かも……」
「なになに、愛華あいかなの?」
「ちょっとこの木が邪魔で。よいしょっと!」
茂みの枝を愛華が寄せようとすると、その枝が戸鞠とまりのスカートをめくりあげた。

「きゃっ!」と、戸鞠が叫ぼうとした口を孝義はとっさに手で覆い。
「シー! シー! 結城に見つかってしまうじゃねぇか」
「うごうご……」

孝義は戸鞠の口を手で覆ったまま
「しかしよう、なんで結城ゆうきの奴急に告る気になったんだ」
「さぁなんでしょうね。今朝、笹崎君確かに手紙を三浦さんの下駄箱に入れていましたから。来てみて正解でしょ」

「く、苦しい!」
孝義の手をはがすように取り「はぁ―」とため息を漏らす戸鞠。

「はぁ―、苦しかったぁ。でもさぁこんなのよくないんじゃないの? なんかさ、陰でこそこそ覗くなんてさぁ」
「あ、戸鞠は気になんねぇのかよ。結城が、あの三浦恵美に告るのをさぁ」
「き、気にならなって言ったら……そりゃ、ねぇ――――――もっのすご――――く。気になるんですけど!!」

「だろぉ――――! で、さぁ――。どうだ俺は撃沈にコーラ1本」
「え――――っ! じゃぁ私も撃沈につぶつぶオレンジ1本。愛華は?」
「わ、私ですか。それじゃぁ撃沈にサイダー1本」
「なんだよう、みんな撃沈だったら、賭けにならねぇじゃねぇかよ」

「だねぇ――――! あ、しっ! 三浦さん来たみたいだよ」
「あぁぁ、ほんとにきちまった。結城よ検討を祈る」

「何よ! 全然孝義君検討の”け”の字も祈っていないくせに」
「あ、わかるぅ!」


もうここまで来たら茂みの中でこそこそしている、あの3人のことなんかもう関係ない。

ここから始まる。笹崎結城。一世一代の大勝負!!


――――――そしてここで終わる大勝負。
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