月の雫、太陽の愛し子

珊螺

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ついに舞踏会の始まり

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舞踏会当日、王宮の一室を令嬢たちが集まっている。


続々と集まるなか、騒ぎの中心の令嬢はターヴィ。


護衛騎士のゼスも来ていた。


「いよいよね!カイル王太子に会えるの楽しみ!!」


うきうきした様子のターヴィ嬢は落ち着かない様子で回りを見ていた。


そのだいぶ遠くで様子を見ている王宮で働く者の格好をした監視者がいた。


別の監視者に『対象者入場終了。引き続き頼む』と言い、ターヴィ嬢を家から監視していた者は次の者に引き継ぎし離れた。


王宮から出た辺りでその監視者は王宮を振り返った。


(ここが王宮・・・。気配がする・・・ここにいるみたい。)


その監視者はハルだった。孤児だったため自分で働かないと食べるものも寝る場所も得られないので、色んな仕事をしていたが数年前から裏で働く家業をしている。


ハルももちろん太陽の愛し子の気配がわかっており、王宮近くから感じていたが入場してさらに確信した。


今のところハルは太陽の愛し子に会いたいわけでもないので、会うことになる前に去った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カイルは舞踏会用に着飾ったが、衣装が堅苦しく顔は険しくなっていた。


「カイル王太子、顔が歪んでます。」


マディルはあんまりにもひどい顔なので口に出してしまった。


「・・・おい。失礼だな。今はいいだろう、会場内ではちゃんとするさ。」


これから起こる事に上手くしなければと思って固くなっているのをマディルが和らげたかったと分かって苦笑する。


その時、カイルがピクリと動きを止めた。


「いかがしましたか?」


その一言も言わない様子を不信がりマディルは声をかけるが応答はなかった。


(月の雫が城内にいる。まさか来場者の中にいたのか?)


『ほぅ。月の雫は息災だな!会いたくはなかったようだが!』


太陽が明るくカイルにからかう。カイルは何もない空間を見つめ、ふん!とそっぽを向く。


(会いたくないなんて思われてたら最悪だな。)


「いや、何でもない。向かうか。」


カイルはマディルと護衛騎士を引き連れて舞踏会の会場へ向かった。


途中で王宮で勤める姿の裏で監視している影が合図をした。


(対象者が入ったか。)


カイルは視線だけ流し、合図に答えたのだった。

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