月の雫、太陽の愛し子

珊螺

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不穏な空気

小さな異変

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小さな異変は少しずつ始まっていた。


セレビア王国の王都で密かに噂がたった。


[月の雫様がある姫様らしい。]


[雫様は見目麗しいらしい。]


[王子も会いたがって探している。]


などと街の人々は聞いた噂話を人伝に話していた。


その噂話はカイルにも伝わっていた。


(下手な噂が出回っているな・・・。どういうことだ?)


自室で考えていると、コンコンとノックの後にマディルが入室してきた。


「カイル様、ラベルト様から連絡がありました。」


「・・・あぁ。ありがとう。」


ラベルトからの連絡は最近、城下どころか国中のものが噂する案件のものだった。


兄のラベルトは自分が王になることを拒否し、情報収集したりと補佐をしている。


国中に張り巡らせたラベルトの近しいものたちは総勢何名いるのか分からないほどになり、国の情報を集めてカイルに報告をしている。


そのラベルトからこのタイミングでの報告が意味するものは今、国中がザワザワしているあの話だ。


ラベルトの報告によると、情報の始まりはある令嬢が言い始めたことらしい。


秘匿であるははずの月の雫は分からないはずなのに、なぜこんな話が噂されるのか・・・。


それは人々が月の雫がどんな人なのか、太陽の愛し子とは誰なんだという謎を知りたいから噂になるのだ。


「しかし、月の雫様が誰であろうといいのですが、この動きは気味が悪いです。」


いつも冷静なマディルも眉を潜めた。


それはカイルも同じことだった。


「兄上から報告が入ったところをみると、案外いいところを得たんじゃないか?」


ラベルトが報告するときは、大体結果が分かってきたときにやって来る。


詳しくは聞いていないが今のお抱え情報屋は良い仕事をするようだ。


ラベルトがどんな人を情報屋として雇っているかしらないが、ラベルト自身も情報屋と話している訳ではない。


何人もの人を介してラベルトに伝えられている。


情報屋自身もまさか調べているのが王族に伝わっているとは思いもしないはずだ。


「今回もその情報屋か・・・?何者か気にはなるが兄上は隠したがりだからはぐらかせるな。」


カイルは苦笑する。それに続いてマディルも同じような表情をした。
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