月の雫、太陽の愛し子

珊螺

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セルビア王国の朝

始まり

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緑豊かなセレビア王国の城下に広がる街、レテル。


街の人々が行き交う中心街から外れた道を歩く少女、ハル。


ハルは、親がいなかった。いわゆる孤児だ。


ハルが歩いていると、近くの家から声が聞こえてきた。


「ママ!何かお話ない??」


少年の声で母親に話しかける声がする。


「んー・・・・、じゃあ、月の雫様と太陽の愛し子様の話をしようか・・・・


昔々、この王国ができて数年か経った頃、この王国の至るところで病気になったり、怒りやすくなって皆がイライラし始める事が増えたんだ。


何が起こっているのかはわからないけど、異常なことだったんだ。


そんな時、急に空の雲が晴れて目も開けられないほどに光ったんだ。


光が晴れると、なんだか悪い夢でも見ていたように皆の病気もイライラもキレイさっぱりなくなっていたんだよ。


その出来事は教会から神から思し召しがあったって・・・・。


この王国に月の雫と太陽の愛し子がいるかぎり悪い事柄は起きないと。


そうしてどこかにいる雫様と愛し子様がいるかぎりは良いことが起こるってことさ。」


「でも、ママ?どこかって誰かわからないの?」


「そうだね・・・。誰が雫様で愛し子様かは調べてもわからないし、知ろうとしてもよく分からなくなってしまうんだよ。」


「きっと知ったら皆が来てしまうから分からないように神様が隠したんじゃない?」


そう、その存在は秘匿。隠される事柄。誰にも分からないように巧妙に隠している。


「だから、この王国の国旗には女の子と男の子の絵が入っているだろう?


それは雫様と愛し子様を敬って絵にしているんだと。」


「すごい人がいてくれるから平和なんだね!どこかで守ってくれてるんだね!」


そうだね、と聞こえるか分からないほどにハルが小高い所へ歩いてきていると、光がパッパッとハルの視界を遮った。


『ハル、今日はいい天気だよ。』


ハルという少女は上を見上げる。その目には空が眩しかった。


「・・・・・・うん。」


ハル以外には聞こえないその声は優しく居ないけど寄り添った。


『大丈夫。ハルはハルらしく居たらいいよ。』


その言葉にはハルは答えなかった。


どう答えたらいいかわからなかったから。


しばらくハルは立ち尽くした。そして、振り返りまた歩きだした。



ハルは今の月の雫。6歳の頃に親をなくし、何とか生きてきた中、9歳になる前に突然光が体を包み、月の言葉を聞いた。


『ハル。私のハル。もう一人にはしない、私がそばにいる・・・・私の雫よ・・・・・。』


どこかで前の月の雫が亡くなり、次の月の雫がハルに選ばれたのだ。


ひっそりと代替わりをしてこの王国は繁栄を続けていく・・・。


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