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最終章
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しおりを挟む昼休みに入ると、国語準備室に引きこもることが増えた。
「……っあ、んん、ほしせんせ…っ」
「〈Shush〉。声、抑えないと外に聞こえますよ、朝霧先生」
「でも、だって、できな…声、でちゃう……」
「可愛い。気持ちいいこと好きなんだね、ヒナ。毎日毎日、職場でこんなことして……」
「ひぁ……っ」
木製の古びた机の上に陽を座らせ、彼の足の間に自分の体を割り入れて突き上げるようなキスを繰り返す。陽の長い足が枢の腰に絡みついて『もっとしてほしい』と言うように、ゆらゆらと腰が揺れている陽はなんともエロティックだ。
パートナーであり恋人として付き合うようになってから、お互いに高校時代から我慢していたタガが外れてしまっている。家に帰ってからも飽きもせずお互いを求めあうのに、ここが職場であり子供たちの神聖な学び舎であることも忘れ、昼休みというわずかな時間を使ってでも求めてしまうのだから恋をした人間というのは本当に脳みそがドロドロに溶けて、正常な判断ができなくなってしまうのだと思う。
「こんなところ、他の先生や生徒が見たらどう思うんでしょうね。みんなの憧れの朝霧先生が、星先生に犯されてるなんて……」
「やぁ、こえ、声すき、ほしせんせいの声、だめ……っ」
「ん?俺の声、好きですか?」
「んぅ……っ」
陽が枢の声に弱いというのはつい最近知ったのだ。
どちらかと言えば声は低いほうなのだが、ベッドの中で重低音で囁くのは腰に響くらしい。陽は清純そうな顔をしているくせにいじわるされるのが好きなので、ダメだと言われてもこの声を武器に彼をとろとろにさせている。陽が枢の手や声、コマンドによって乱れてくれる姿を見ると、こちらもこちらで我慢が限界突破しそうなのだけれど。
「肌、真っ赤ですよ。俺に触られて、いじわるされて嬉しい?〈Speak〉」
「あっ、う、うれしい…!きもちい、も、あたまおかしくなる……っ」
「はは、今の朝霧先生、めっちゃエロいですよ。あなた、こんなとろとろになった後に授業するの?生徒にエロい目で見られてるかも……」
「やめ、そんなこと、ないって……っ」
「そんなことある。あなたがめちゃくちゃエロいSubだって、気付いてるDomは他にもいるかも。迫られたらどうします?エロいことさせてくださいって言われたら」
「いじわる言わないで、かなめ…そんなの、かなめにしかゆるさない、し……」
中途半端に緩んでいるネクタイに、ワイシャツをはだけさせて、そこから覗くぷっくりと立ち上がった突起は唾液で濡れて光っている。ベルトは最初に抜き取っていたが、可哀想なくらい膨らんでいるそこはまだ触ってあげていない。絶頂を迎えるに至らない弱い刺激に陽はもどかしそうにしていて、潤む瞳が枢を見上げてくる。そんな顔をしたあとに、こんなことをしたあとに、彼は午後の授業を控えているのだ。よく切り替えられるなと純粋に尊敬する。
「………ワイシャツって、エロく見えるんですよ」
「へ……?」
「なんでいつもワイシャツなんですか?きっちりした格好をしてるほうが、暴きたくなる」
はだけているワイシャツの隙間に手を差し込んで、くっきりと浮き出ている鎖骨を撫でる。そのままうっすらと浮かぶ筋肉の筋を指先でなぞり、枢が舐めたり噛んだりしていた突起を指の腹でぐにっと押しつぶした。
「んぁ…っ!」
「ここ、立ってたらバレますよ。ワイシャツって透けやすいのに……」
「なか、なかにTシャツ、着るから……っ」
「……そんなTシャツの下がどうなってるのか、俺はあなたを見ると想像しちゃいますね」
「ん……っ」
思いっきり低い声で囁くと、陽の体がびくんっと跳ねる。もしかしたら声だけでイってしまったのかもしれない。その証拠に陽が顔も首も耳も真っ赤にして瞳を潤ませているので、枢は思わず舌なめずりした。
「ほ、ほしせんせいだって……」
「ん?」
「ポロシャツ、エロくてダメなのに……!」
「え?俺?」
「う、腕の筋肉とか丸分かりだもん!なんかこう、ワイシャツより体のラインが分かるっていうか……!星先生だってエロい目で見られてるかも…」
「ふはっ、ないでしょ……俺をエロい目で見てるのはあなただけだよ、ヒナ」
俺を欲しがってるのはあなただけだよ。
そう言いながら、セックスさながらの腰遣いで突き上げると陽は口元を抑えてのけ反った。あの日以来何度か体を重ねているけれど、前戯や服越しに責められるほうが陽はよく乱れる。本人に直接確かめたことはないが、こういう前戯をすると彼はそのあともっと枢を求めてくれるのだ。
「……っと、もう予鈴が鳴ります」
「ぁ…か、かなめ……」
「〈Good Boy〉ヒナ。家に帰るまで、待て、できるよね?」
「うん……」
「いいこ。じゃあ、ご褒美」
甘い甘いキスをして、いつも二人の昼休みは終わりを告げる。
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