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第11章
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しおりを挟む陽の心が満たされた後に押し寄せてきたのは、自分のDomにちゃんとSubとして支配されたいということだ。
「かなめ……」
「ん?」
「〈Switch〉しよ……」
「え、」
枢の腕をなぞって目を見つめると、自分の中からじわじわとDomの欲求が消えていく。その代わり、ものすごく枢に支配されたくなった。枢は相変わらず陽が欲しくてたまらないという顔をしていて、そんな彼にめちゃくちゃにしてほしくて、自分勝手に役割を『交代』してしまった。
「……なんか、自分の中が一瞬で変わる感覚って、変な気分ですね」
「あー、うん、そうだよね……」
「ヒナは今まで、Domとして俺を"支配"したかったの?」
「Domとしてっていうか……支配されたいし、支配したかった。とにかく、枢を…おれのものにしたくて……」
「じゃあ、今は?Switchした理由は?〈Say〉」
「っあ、かなめに、めちゃくちゃにしてほしいから……!」
陽を見下ろしたままの枢が口元に笑みを浮かべて、前髪をかき上げる。やっぱり自分は生まれながらのSubである。たまたまDomのコマンドが使えるだけで、本当のDomなんかじゃない。
この男のSubなんだと、思わされる。
枢に支配されたいと、それが幸福なんだと願う自分の頭の中はとろとろに蕩けてしまっているのかもしれない。これがいわゆる『恋愛脳』とか『恋は盲目』ってやつなのかなとぼんやり思っていると「何を考えてるの?」と、少し不機嫌そうな声が降ってきた。
「俺以外のことを考えてたら、めちゃくちゃにするだけじゃ済まないよ?」
「ちが、枢のことしか、考えてないよ……」
「ふぅん。じゃあ… 〈Butter Up〉」
『Switch』する直前の会話から、枢が何を欲しているのかは分かっている。どうしよう、恥ずかしい。誰にもこんなことしたことないし、こんな情けない姿を見せたこともないのに。でもDomには、枢には逆らえなかった。
「めちゃくちゃにして、かなめ…今日は下着の上からで、ゆ、許して……っ」
おぼつかない手でズボンを脱ぎ、自分で足を持ち上げる。下着を履いてはいるけれど、恥ずかしい部分を枢に見せつけて誘った。そんな陽の姿を見て、ごくり、枢から大きな音が響いてドキッと心臓が跳ねた。
陽が膝の裏に手を差し込んで持ち上げていると、そのままぐっと膝の頭を枢に押さえつけられる。じっくりと舐めまわすような視線が絡みついてきて、ぶるりと震えた。
「ここ、色が変わっちゃって…かぁわい…」
「うっ、ふ……っ」
触るでもなく舐めるでもなく、ふうっと息を吹きかけられる。精を吐き出したわけではないが、火照った体を散々触られて興奮したからか、カウパーで下着が濡れているのだろう。それを指摘された途端無性に恥ずかしくなって脚を閉じようとすると、先日ベランダでされたように押さえつけられて阻止された。
「〈Stay〉。あなたの可愛いところを目に焼き付けてるんだから」
「でも、はずかしい、かなめ……」
「恥ずかしいって……自分で見せつけて、めちゃくちゃにしてって言ってきたくせに。だからご褒美をあげようと思って、俺は考えてるんだよ?」
「ごほうび…キス……?」
「そうだね。キスがいいよね、ヒナは」
「ひぁ――っ!?」
べろり。
下着の上から舐められる。下着のざらりとした感覚と、生温かい枢の舌の感触に驚いて変な声が出てしまった。陽は自分で膝を持ち上げたまま、枢の手によって太ももを固定されている。脚を閉じることもできなければ、口元を押さえて声を我慢することもできない恥ずかしさに小刻みに体が震えた。
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