夜明けの使者【コミカライズ企画進行中!】

社菘

文字の大きさ
上 下
57 / 70
第11章

しおりを挟む



陽の心が満たされた後に押し寄せてきたのは、自分のDomにちゃんとSubとして支配されたいということだ。

「かなめ……」
「ん?」
「〈Switch交代〉しよ……」
「え、」

枢の腕をなぞって目を見つめると、自分の中からじわじわとDomの欲求が消えていく。その代わり、ものすごく枢に支配されたくなった。枢は相変わらず陽が欲しくてたまらないという顔をしていて、そんな彼にめちゃくちゃにしてほしくて、自分勝手に役割を『交代』してしまった。

「……なんか、自分の中が一瞬で変わる感覚って、変な気分ですね」
「あー、うん、そうだよね……」
「ヒナは今まで、Domとして俺を"支配"したかったの?」
「Domとしてっていうか……支配されたいし、支配したかった。とにかく、枢を…おれのものにしたくて……」
「じゃあ、今は?Switch交代した理由は?〈Say言って〉」
「っあ、かなめに、めちゃくちゃにしてほしいから……!」

陽を見下ろしたままの枢が口元に笑みを浮かべて、前髪をかき上げる。やっぱり自分は生まれながらのSubである。たまたまDomのコマンドが使えるだけで、本当のDomなんかじゃない。

この男のSubなんだと、思わされる。

枢に支配されたいと、それが幸福なんだと願う自分の頭の中はとろとろに蕩けてしまっているのかもしれない。これがいわゆる『恋愛脳』とか『恋は盲目』ってやつなのかなとぼんやり思っていると「何を考えてるの?」と、少し不機嫌そうな声が降ってきた。

「俺以外のことを考えてたら、めちゃくちゃにするだけじゃ済まないよ?」
「ちが、枢のことしか、考えてないよ……」
「ふぅん。じゃあ… 〈Butter Upおねだりして〉」

Switch交代』する直前の会話から、枢が何を欲しているのかは分かっている。どうしよう、恥ずかしい。誰にもこんなことしたことないし、こんな情けない姿を見せたこともないのに。でもDomには、枢には逆らえなかった。

「めちゃくちゃにして、かなめ…今日は下着の上からで、ゆ、許して……っ」

おぼつかない手でズボンを脱ぎ、自分で足を持ち上げる。下着を履いてはいるけれど、恥ずかしい部分を枢に見せつけて誘った。そんな陽の姿を見て、ごくり、枢から大きな音が響いてドキッと心臓が跳ねた。

陽が膝の裏に手を差し込んで持ち上げていると、そのままぐっと膝の頭を枢に押さえつけられる。じっくりと舐めまわすような視線が絡みついてきて、ぶるりと震えた。

「ここ、色が変わっちゃって…かぁわい…」
「うっ、ふ……っ」

触るでもなく舐めるでもなく、ふうっと息を吹きかけられる。精を吐き出したわけではないが、火照った体を散々触られて興奮したからか、カウパーで下着が濡れているのだろう。それを指摘された途端無性に恥ずかしくなって脚を閉じようとすると、先日ベランダでされたように押さえつけられて阻止された。

「〈Stay閉じないで〉。あなたの可愛いところを目に焼き付けてるんだから」
「でも、はずかしい、かなめ……」
「恥ずかしいって……自分で見せつけて、めちゃくちゃにしてって言ってきたくせに。だからご褒美をあげようと思って、俺は考えてるんだよ?」
「ごほうび…キス……?」
「そうだね。キスがいいよね、ヒナは」
「ひぁ――っ!?」

べろり。

下着の上から舐められる。下着のざらりとした感覚と、生温かい枢の舌の感触に驚いて変な声が出てしまった。陽は自分で膝を持ち上げたまま、枢の手によって太ももを固定されている。脚を閉じることもできなければ、口元を押さえて声を我慢することもできない恥ずかしさに小刻みに体が震えた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集

あかさたな!
BL
全話独立したお話です。 溺愛前提のラブラブ感と ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。 いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を! 【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】 ------------------ 【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。 同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集] 等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。 ありがとうございました。 引き続き応援いただけると幸いです。】

処理中です...