57 / 70
第11章
5
しおりを挟む陽の心が満たされた後に押し寄せてきたのは、自分のDomにちゃんとSubとして支配されたいということだ。
「かなめ……」
「ん?」
「〈Switch〉しよ……」
「え、」
枢の腕をなぞって目を見つめると、自分の中からじわじわとDomの欲求が消えていく。その代わり、ものすごく枢に支配されたくなった。枢は相変わらず陽が欲しくてたまらないという顔をしていて、そんな彼にめちゃくちゃにしてほしくて、自分勝手に役割を『交代』してしまった。
「……なんか、自分の中が一瞬で変わる感覚って、変な気分ですね」
「あー、うん、そうだよね……」
「ヒナは今まで、Domとして俺を"支配"したかったの?」
「Domとしてっていうか……支配されたいし、支配したかった。とにかく、枢を…おれのものにしたくて……」
「じゃあ、今は?Switchした理由は?〈Say〉」
「っあ、かなめに、めちゃくちゃにしてほしいから……!」
陽を見下ろしたままの枢が口元に笑みを浮かべて、前髪をかき上げる。やっぱり自分は生まれながらのSubである。たまたまDomのコマンドが使えるだけで、本当のDomなんかじゃない。
この男のSubなんだと、思わされる。
枢に支配されたいと、それが幸福なんだと願う自分の頭の中はとろとろに蕩けてしまっているのかもしれない。これがいわゆる『恋愛脳』とか『恋は盲目』ってやつなのかなとぼんやり思っていると「何を考えてるの?」と、少し不機嫌そうな声が降ってきた。
「俺以外のことを考えてたら、めちゃくちゃにするだけじゃ済まないよ?」
「ちが、枢のことしか、考えてないよ……」
「ふぅん。じゃあ… 〈Butter Up〉」
『Switch』する直前の会話から、枢が何を欲しているのかは分かっている。どうしよう、恥ずかしい。誰にもこんなことしたことないし、こんな情けない姿を見せたこともないのに。でもDomには、枢には逆らえなかった。
「めちゃくちゃにして、かなめ…今日は下着の上からで、ゆ、許して……っ」
おぼつかない手でズボンを脱ぎ、自分で足を持ち上げる。下着を履いてはいるけれど、恥ずかしい部分を枢に見せつけて誘った。そんな陽の姿を見て、ごくり、枢から大きな音が響いてドキッと心臓が跳ねた。
陽が膝の裏に手を差し込んで持ち上げていると、そのままぐっと膝の頭を枢に押さえつけられる。じっくりと舐めまわすような視線が絡みついてきて、ぶるりと震えた。
「ここ、色が変わっちゃって…かぁわい…」
「うっ、ふ……っ」
触るでもなく舐めるでもなく、ふうっと息を吹きかけられる。精を吐き出したわけではないが、火照った体を散々触られて興奮したからか、カウパーで下着が濡れているのだろう。それを指摘された途端無性に恥ずかしくなって脚を閉じようとすると、先日ベランダでされたように押さえつけられて阻止された。
「〈Stay〉。あなたの可愛いところを目に焼き付けてるんだから」
「でも、はずかしい、かなめ……」
「恥ずかしいって……自分で見せつけて、めちゃくちゃにしてって言ってきたくせに。だからご褒美をあげようと思って、俺は考えてるんだよ?」
「ごほうび…キス……?」
「そうだね。キスがいいよね、ヒナは」
「ひぁ――っ!?」
べろり。
下着の上から舐められる。下着のざらりとした感覚と、生温かい枢の舌の感触に驚いて変な声が出てしまった。陽は自分で膝を持ち上げたまま、枢の手によって太ももを固定されている。脚を閉じることもできなければ、口元を押さえて声を我慢することもできない恥ずかしさに小刻みに体が震えた。
77
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説


「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました



顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!
小池 月
BL
男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。
それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。
ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。
ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。
★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★
性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪
11月27日完結しました✨✨
ありがとうございました☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる