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第11章
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しおりを挟む枢から与えられる熱と快楽にどんどん頭がボーっとしてくる。
想いが通じた分Playにも気持ちがこもっているからか、今までよりも枢の指先が熱い気がするし、触れられたところから溶けてしまいそうな気がするのだ。
「もっと、って言うなら……この下も触りたい。ダメ?ねぇ、コマンド出して」
この下、と言いながら脱ぎかけのズボンから見えている下着の縁をカリッと引っかかれる。彼がそれを望んでくれるのは、ベランダで目隠しをしてPlayをした時以来かもしれない。逆に陽が枢に対して『そういうこと』を提案したのはパートナーになりたての頃だった気がする。あの時は枢も身体的接触に慣れていなかったので、そういうことはしなくていいと拒否されたのだ。でも今の彼は、それよりも一歩進んだことをしたいと思ってくれているらしい。それが分かって、陽は心臓がきゅんっと締め付けられた。
でも、彼の想いに応えられない理由があって――
「だめ、だめ…今日はきれいにしてないから……」
「……ふは、俺は別に"そこ"を触るって言ったわけじゃないけど…いつも俺とPlayする時は綺麗にしてたってこと?」
「ね、ねんの、ため……」
「んはっ、やっぱりヒナって……」
とんでもないビッチですね。
と、思いっきり低い声が耳の中に流し込まれる。ビッチじゃない、最後までされたことないし!と反論しようとしたけれど、枢の熱い舌が入り込んできて口内を犯された。Subになってもスイッチが入った枢の意地悪さは健在で、どちらかと言うと今の状況を楽しんでいる。
DomからSubにSwitchした時は戸惑っていたくせに、陽が自らの体に触る許可を出すと『そっちのほうがえろくて、M気質のヒナにはぴったりだね』と飄々と言ってのけたのだ。
「直接触るのがダメなら、もっとキスさせて」
「ぁ、かなめ……っ」
陽が枢に出したコマンドは『キスをして』と『体に触って』の2つだけ。ベランダでPlayをしたときに上半身は肌に触っていいと許可を出したからか、枢は律儀にそれを守ってくれている。だからきっと、今まで我慢していた分も爆発してしまいそうなのだろう。
相当我慢していたのか、久しぶりのPlayなのもあって不足していた分を補おうとしているのか、息さえ奪われるほどのキスをされる。Tシャツで隠れていた肌には多くのキスマークがあり、枢の唾液で怪しく濡れた。でも、彼から与えられる熱が気持ちよすぎて『Stop』と言えない。頭の中がハチミツのようにとろとろになってしまったかのようで、何かを考える器官が壊れてしまったように思う。
「じゃあ、下着の上からならいいでしょう?それもダメ?」
もう一度ダメ押しというように、カリカリ、下着の境目を指で引っかかれると、思わずびくりと体が跳ねる。
下着の上からって、どういうこと?その上から触るだけ?
そう思いながら枢を見ると、心臓が止まるかと思った。あまりにも険しく、欲まみれの顔をして陽からのコマンドをじっと待っているのだ。今の枢は完全に陽のことしか見ていないし、考えていない。それが分かると背筋にぞわりと興奮が走り、小さな心臓は愛で満たされた。
枢がそんな顔を、してくれるなんて。
陽が欲しくてたまらないというような様子の枢に、今までぽっかり開いていた穴が塞がっていくような気がした。Subとして彼に支配されていた時もすごく満たされていたが、Domとしても彼を支配してやっと、陽の中の凶暴な欲求が満たされたのだ。
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