49 / 70
第10章
4
しおりを挟む「なんで星先生と真夜が一緒に?どういうことですか」
「あの、ちょっと落ち着いて下さい、日暮先生……!」
「落ち着けません!星先生、Domですよね?真夜は俺のSubですよッ!?」
真白のそんな言葉に枢も真夜もハッとして、思わずお互いに顔を見合わせる。
陽に未練があるから真夜と別れて同棲も解消したんじゃなかったのか――?
先ほどまで真夜と話していた憶測の話とは違う展開に二人とも驚いてしまったのだが、それが逆に真白の頭を更に沸騰させた。
「なんですか、いつの間にそんなに仲良くなったんですか?真夜がSubだと分かって近づいたんですか?」
「いや、そういうわけでは……!」
「ちょっと、やめろって真白!オレから誘ったんだって!」
「は?誘ったってなに……」
「やべっ、今のは言葉の綾!」
「ちょ、ちょっと真夜くん…!更にややこしくなるから!」
「………真夜くん?名前で呼ぶほど親しくなったんですか、星先生」
「え、な、なんで朝霧先生が怒って……!?」
いつの間に枢がDomだと知られたのか、自分のSubである真夜が枢に取られると思っているのかGlareが出そうになっている真白と、その後ろで今まで見たこともないほど怒った顔をしている陽に枢はもう何をどうしたらいいのか分からず混乱した。
枢と真夜の見解では、昔付き合っていた二人がやはりお互いのことを忘れられずにまた復縁するのだと思っていたのだが、真白の様子からしてどうやら思い違いをしているらしい。でもそんなこと言われないと分からないし、二人の態度は完全に『元恋人同士』を彷彿とさせていたので、こちらが怒られるのは筋違いというものなのだけれど。
でもさすがに、この状況で2歳も年上の二人に指摘することはできなかった。
「……だからちゃんと捕まえとけって言ったろ、陽!お前が放し飼いしてるから!」
「は?なんでおれのせいにするわけ?真夜くんにフラれて泣きながら帰ってきた意気地なしは真白でしょ。そもそも真白が帰ってこなかったらおれと星先生は順調にいってたの!お前が帰ってくるからこじれんただろ!」
激怒している真白に殴られると身構えていたのだが、二人の突然の登場に驚いている枢と真夜を差し置いて二人が大声で喧嘩をし始めた。店内にいるお客さんも店員さんもこちらに注目していて、さすがに高校教師のいざこざをこのまま見られるわけにはいかない。早いところ退散しないといけないと、喧嘩している真白と陽の背中を押して店の外へ出てマンションへと向かった。
「大体、今更なにが"陽チャージ期間"だよ、嘘つき!おれのことなんて嫌いだろ、お前は!」
「は!?先に俺を嫌いになったのはお前のほうだろ!こっちはお前の具合が悪そうだから、家族だしと思って助けたのに翌日から避けられるし!」
「そりゃ避けるだろ!Play中に顔見たくないとか言われたら、誰でも嫌われたと思うだろうが!」
「いや、気まずくなるのは当たり前だろ!今まで俺、お前をそんな対象で見たことなかったのにいきなりだったんだぞ!?」
「あーあー、わかったよ、全部おれが悪いよ!おれがSubとして生まれてきたのが全部悪いよ!幼馴染がSubで悪かったな!同棲してた恋人からも疑われてフラれるし、散々だよな、真白は。おれがSubなんかに生まれたから、おれなんか……」
初めて陽が声を荒げている姿を見て、枢は心が痛んだ。そんなに自分を責めないでほしいし『おれなんか』なんて言わないでほしい。Subである陽のことを好きな人間が、現に目の前にいるのだから。
「……〈Relux〉、ヒナ。"おれなんか"って言わないで下さい……DomでもSubでもNormalでも、俺にはあなたが必要なんです」
興奮している陽の手を枢がそっと握ると、彼の大きな瞳から涙が零れ落ちる。まるで陽の心のように透明な涙を親指で拭うと、彼が指にすり寄ってきた。
真白は陽と枢がパートナー関係にあるというのは知っているようなので、陽を落ち着かせるためにもコマンドを使った。そのコマンドを陽は拒否することなく受け入れて、繋いだ手をぎゅっと握り返してくれる。泣いていた陽が何だか安堵したような顔になって、枢もホッとした。
「とりあえず、詳しい話はまた後日ってことで。行こう、真夜」
「あ、ちょっと……!枢、またな!」
真白に手を引かれながら上の階に連れ去られた真夜。残された二人は、陽の希望により枢の部屋に帰ることにした。
44
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜
沈丁花
BL
“拝啓 東弥
この手紙を東弥が見ているということは、僕はもうこの世にいないんだね。
突然の連絡を許してください。どうしても東弥にしか頼めないことがあって、こうして手紙にしました。…”
兄から届いた一通の手紙は、東弥をある青年と出会わせた。
互いに一緒にいたいと願うからこそすれ違った、甘く焦ったい恋物語。
※強く握って、離さないでの続編になります。東弥が主人公です。
※DomSubユニバース作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる