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第9章
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しおりを挟む陽の幼馴染である日暮真白が赴任してきてから、思うように陽と会えていない。
高校時代に見かけていた二人はさすが幼馴染といったようにいつも一緒にいたのだが、枢の知らない大学時代に何かあったのか、真白と再会した陽は少し気まずそうに見えた。真白が同じマンションに越してきたと言っていたがあまり嬉しそうにしていなかった(枢にはそう見えた)ので、無理はしないようにと伝えていたのだが――
「朝霧先生、最近顔色悪くないですか?」
「え?あ、あぁ……そうですね」
「この前までなんだか明るくなったなと思ってたんですけど……気のせいだったのかな」
隣の席にいる白石先生がコソコソ耳打ちしてきて、枢はため息をついた。そう、白石先生にも分かるくらい、見るからに陽は疲弊しているのだ。まるで陽とパートナーになる前の枢と同じような状態で、目の下には酷いクマ、寝不足なのか何度もあくびをしているし、昼休みは準備室にこもって眠っているのを見かけた。
Play不足の寝不足なのか、ただ単にもうすぐ期末テストがやってくるので、夜な夜なその試験問題を作っているから寝不足なのかは分からない。軽いPlayだけなら昼休みに準備室でこっそりしてもいいのだが、なんせ陽が眠りに落ちているのでそれをわざわざ起こすようなことはしたくなかった。
それに、Play不足だと思って彼に話を持ち掛けた時に、ただの寝不足だと言われたらそれはそれであまりにも恥ずかしい。まぁ、もしPlay不足での不調なら陽のほうから何か言ってくるだろうと、そんな甘い考えを持っていた。
「陽、今日も一緒に夕飯食べないか?」
「……毎日毎日飽きないね、真白」
「だって俺たち一緒にいるのは年単位で久しぶりじゃん。だから陽チャージ期間なんだよ」
「別にいいけど、おれは作らないからね」
「分かってる分かってる、料理苦手だもんな陽は」
夕飯を買いにコンビニへ行こうとドアを開けると、ちょうど帰ってきた陽と真白に遭遇した。まずい、最近はずっと通勤時間をずらしていたから、マンションで真白と会うことはなかったのに。
「ん?あれ?一学年担当の星先生?」
「あ、ど、どうも……」
「星先生って眼鏡かけてましたっけ?一瞬誰だか分かりませんでした」
「普段はコンタクトで、家では眼鏡なんです」
「ていうか!同じマンションとか奇遇ですね!」
「あ~…ですねぇ…!」
久しぶりの乙織や慧至以外の陽キャと話した気がする。どれだけ外見を磨いて変わったとしても、中身は所詮『星枢』のままなのだ。騒がしい空間も嫌いだし、根っからの陽キャというイメージの真白との会話は難しいと感じる。毎日高校生を相手にしているので多少慣れてきたと思っていたけれど、自分が高校生の時のイメージがあるので陽と同じように今はまだ近寄りがたいのだ。
「星先生は今からどこか出かけるんですか?」
「夕飯を買いにコンビニに……」
「え!じゃあ一緒に食べません?」
「……へ?」
「俺たちも今から夕飯なんですよ!材料多めに買ってきてるんで、星先生もよければどうぞ!」
「いや、えっと……」
どうしようか迷いながら陽を見ると、彼は申し訳なさそうな顔をしながらも頷いた。真白のことは全然知らないので苦手意識があるのだが、陽が枢に来てほしそう(これは願望だ)な顔をしているので、コンビニに行くのをやめて陽の家にお邪魔することにした。
「適当に座って下さいね、星先生~」
「なんで真白が言うんだよ……」
「ごめんごめん、最近毎日いるからさ」
「へぇ、毎日……仲がいいんですね、お二人は…」
思わず枢がぽつりと呟くと、陽が抗議の目を向けてくる。ただ、どうしてそんな目を向けられるのか分からなかった。だって、幼馴染だし、仲がいいのは普通ではないのか?そう思って言ったのだけれど、陽の癪に障ったらしい。
パートナーになってから知ったこともあるけれど、まだ知らないことのほうが多いのだなと枢は苦笑した。
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