夜明けの使者

社菘

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第7章

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最初は陽の家でPlayをすることが多かったが、枢の姉である乙織やその恋人の慧至と会った日に初めて彼の家を訪れてからは、陽は好んで枢の家に来ていた。なんせ、枢の家だと彼の匂いがいっぱいで、心も体も満たされるような感覚に陥るからだ。そんな変態チックな理由でこの家に来ていることは、もちろん枢には教えていないけれど。

「ヒナ、〈Stay動かないで〉」

先に自分の家でシャワーを浴びてきたら意外と体が火照ってしまって、夜風に当たろうとベランダに出ていた時。

同じくシャワーを浴びて上がってきた枢にコマンドを出され、ベランダの手すりを握ったまま動けなくなる。どきどきしていると後ろから腕が伸びてきて、無骨な右手が陽の顎を撫でた。

「ん……ここ、外…」
「外、というかベランダですね」
「誰かに見られたら、どうするの……」
「多分、見えないよ。部屋も暗くしてきたし」
「なにそれ、でも…」
「〈Shushもう黙って〉」

太い指が二本、口の中に入ってくる。舌を掴まれたり、性器のように扱かれたり、上あごをなぞられたり好き勝手に口の中を犯しながら、年下の彼の左手は服の上から体を触ってくる。

熱い唇がうなじに押し付けられ、服に隠れていない肌をしつこく食まれながら触られると次第に頭がふわふわしてきて、気絶しそうになるのだ。彼は無意識なのかもしれないし計算していないかもしれないが、どうすれば陽が堕ちるのか、扱いをすっかり心得ているらしい。

くそ、ほんとうに。
Play中の枢はだんだんSっ気が強くなってきて、陽は内心ゾクゾクしていた。Subを甘やかしたいDomだと言っていたくせに、彼の内に秘めた『欲』を自分にぶつけられていることが、自分に見せてくれていることが、嬉しくてたまらない。

やっぱり、初めて出会った時に感じた『圧倒的なDom』の雰囲気は、間違いではなかったのだ。

「恥ずかしいなら目隠しする?」
「や、だ……っ」
「でもバレたくないんだよね?それなら顔隠した方がいいかなって」
「見えないのはイヤ……」
「………本当に?〈Speak正直な気持ちは?〉」

スイッチの入った枢はいつも、言葉にさせたがる。
コマンドを使われると強制的に『言わされる』から、すなわち本心が出てくるのだ。隠しておきたい気持ちを全て暴かれるから、彼が知らないことはほとんどない気がする。

「…っ目隠し、敏感になるから、イヤ……」
「……てことは、誰かにされたことがあるってこと?」
「ぁ、まって、まってかなめ、」
「俺じゃない誰かに、そういうこと目隠しをされたことがあるんだ?へぇ。誰にされたの?見つけ出して、あなたに関しての記憶、全部消してやりたい」
「……っ」

はぁ、と火傷しそうなくらい熱い吐息が耳に触れる。枢は姉の恋人であるSubの慧至にでさえ、連絡先を交換しただけで嫉妬するような人なのだ。もし陽がまだ枢に暴かれていない『過去』の話をしたら、彼はどうなるのだろう。普段はピュアで優しい彼の目が獲物を狩る獣のように険しくなって、かみ殺されるかもしれない。

でも、もしそういうことになったら、陽は嬉しくて死んでしまう自信がある。

枢自身は最初『Subをとろとろに甘やかしたい』という欲求しか持っていなかったようだが、彼の奥底に眠るDomとしての支配欲が姿を現し、陽に対してはそれだけではないと言う。体に触れたいという性的な欲求も出てきている自分が怖い、と言って俯いた枢のつむじを眺めながら陽が舌なめずりしてたことを、彼は一生知ることはないだろう。

「まぁ、記憶なんて消せないから……新しい記憶の上書き、させてくれますよね?」
「え……?」
「目隠し。やってくれますよね?」

あぁ、星枢。
おれ、星先生のことがすきなの、どうしよう。

最初は優しくされるだけでよかった。Playに満足してすぐ眠っちゃ星先生が愛しくて、可愛くて、おれがそうさせたんだって優越感に浸ってたんだよ。

それなのに、こんな、こんな――

「……はぁ、えっろ…ヒナ、今のあなた、めちゃくちゃえろい」

今日枢が着ていたスーツのネクタイで目隠しをされて、ベランダに置いてある椅子に座らされ、次に何をされるのか期待している自分が怖い。枢がこんな自分を『えろい』と言って少なからず興奮しているのが伝わってきて、ぞわりと背筋に興奮が走った。

「こんなおれでも、えろく見える……?」
「あの完璧な朝霧陽だから、更にそう見えるよ」
「そ、なんだ……」
「ヒナ、〈Stayそのまま〉」

ちょっとこれ、恥ずかしいかも……。
脚をM字に開かされ、目隠しをされたままじっとしているなんて、羞恥以外のなにものでもない。いつまでこうしていたらいいのか、枢がいつ満足するのか分からないまま、陽は見えない恐怖と快感に耐えるしかなかった。


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