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第6章
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しおりを挟む「どうも、枢の姉の乙織です~!弟がいつもお世話になっているようで~…っていうかイケメン!イケメンすぎる!」
「枢くんと一緒にうちのSNSのモデルとか興味ありません?二人並ぶと画面がクソほどイケメンだな……」
「お、お、おれが悪かったです………」
「朝霧先生、国語の先生なのに作者の気持ち、分からなかったんですね」
「わ、分かるわけないじゃないですか、さすがに…っ!」
日曜日の昼下がり、カフェで項垂れている陽に枢は苦笑していた。
姉の乙織のことを彼女とか枢の好きな人だと勘違いし、嫉妬して拗ねていた陽。Playをした翌日に『乙織は姉です』と説明したのだが、彼は疑って納得してくれなかった。
そんな陽に信じてもらうため、美容室に行った後に乙織が予約してくれていたカフェに陽を呼び出すと、彼は顔を真っ赤にして俯いてしまったのだ。しかも乙織の恋人である暁慧至も一緒に来ていたので『おれはとんだ勘違いを……』とごにょごにょ言っている彼にもう一度恋をしたのは、言うまでもない。
「ていうかうちのカットモデルやってもらいたいくらいだわ~!先生ってやっぱりそういうのダメなんですかね?」
「え、えっと、いや、どうでしょう…多分ダメなんじゃないかなと……」
「ちぇ、やっぱりそうなんだ!枢も全然写真撮らせてくれないし」
「乙織、すぐSNSに投稿するから……」
「だぁって、こんなにイケメンな弟がいるんですって自慢したいじゃん!」
「大学デビューを俺とイオで手伝ったんですけど、その時の投稿が大バズりしたんですよ」
大学に入りたてだった5年程前の写真を出してきて、ほら、と慧至がスマホの画面を陽に見せる。その画面に映る枢の姿を見て、陽の目元がじわりと染まったのが分かってドキッとした。
「うわ、わ、若い……!ていうか、かっこいいですね…!」
「いや、もう、お世辞とかいいですって……」
「いまより細い…鍛えたんですね、星先生」
「あー…大学の時、アメリカに留学したことがあって。体格のことでバカにされたんで……」
「へぇ、そんなことが……」
英語の教師になるのに留学は必要なかったかもしれないが、本場の文化や言語をきちんと勉強しようと思ってアメリカへ留学したのだ。留学と言っても半年くらいだったのと、長期休暇期間中は毎年アメリカへ行っていた。留学していた時はちょうど冬の時期と被っていたので、本場のクリスマスを経験したのはいい思い出だ。
授業の時も自分の経験談を交えて生徒に話をしたり、本場の発音を教えられるので無駄ではなかったなと思う。教師としても役に立っている思い出だし、自分が鍛えるきっかけにもなった友人からの辛辣な言葉も今となっては笑い話である。
「そのバカにしてきた奴とは今でも連絡取るくらい仲がいいんですけどね」
「……意外です」
「え?」
「星先生って、無理って思った人はずっと無理なタイプなのかと思ってました」
「基本的にはそうですよ。無理なことは無理ですけど、そいつとは張り合いながらお互いを高め合って……ライバル的な?戦友みたいな感じですね」
あまり過去の話をお互いにしていないし、どんな友人がいるのかも話したことがないからか、陽は枢の昔話を楽しそうに聞いていた。先ほどまで『早とちりした……』と真っ赤になって落ち込んでいた人とは思えないくらい、今は枢に興味津々のようだ。
「ていうか、枢が誰かを連れてくるほうがお姉ちゃん的にはびっくりなんだけど」
「そうそう。今まで友達とか知り合いとか紹介してくれたことないからね」
「二人はそんなに仲がいいの?ただの同僚じゃなくて?」
乙織に指摘されてドキッとする。
ちなみに乙織は枢と同じDomで、恋人の慧至はSubなのだ。二人は高校生の頃からお互いがパートナーであり、そのまま婚約をしているDomとSubのお手本のようなカップル。家族なので枢がDomだというのは知っているし、もしかしたら陽とパートナーだとバレる可能性を考えていなかった。
陽を安心させるためとは言え、軽率に彼を呼んだのは間違いだったかもしれない――。
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