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31 警察から連絡が来た

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 家に帰る途中、マーイを早乙女さんの家に降ろし暫く預かってもらった。それから一人で家に行くと自宅の前にマスコミやYouTuberが数名いた。うちの土地に勝手に車を停めている。
 昨日と今朝もマスコミが来たからいるんじゃないかと思っていたが正解だったな。

 車を納屋に入れて外に出るとマスコミ達が寄ってきた。

「桜沢さん〇〇テレビの者です。取材よろしいですか?」
「TV△△なんですけど魔女さんの話し聞かせてもらえませんか?」
「テレ××です。今日魔女さんはおられますか?」
「時事ネタ系のYouTubeチャンネルやっている者です。自分も良かったら話し聞かせてください」

 俺は「はー」と溜息を吐く。マスコミ連中は許可なく撮影はしないがYouTuberは勝手に撮るからほんとに困る。因みに横浜でマーイが飛んだ動画はマーイに身分証がないから肖像権侵害で被害届を出せなかったけど、俺の動画を勝手にアップするなら本当に被害届出してやろうかな?

 そんなことを考えながら俺は笑顔で口を開いた。

「せっかくお越しいただいたのにすみません。うちに魔女はいませんので何もお答えできません。あと撮影しないでいただきたいのと、ここうちの土地なんで車停めないでください。それと、勝手に入らないでもらっていいですか?皆さんだって自分の家の庭に知らない人が大勢、勝手に入ってきたら嫌でしょう?車だって人の家の庭に許可なく停めないですよね?」

「車移動してきますので、お話しだけでも聞かせてください」

「いえ、話すことはありませんのでお引き取りください」

 そう言って頭を下げ、俺は家の中へ入った。





 保育園のお迎えに行く頃にはマスコミはいなくなっていて、俺は綾を引き取った帰り早乙女さんちに寄った。

 綾を抱っこしながらドアフォンを鳴らすと千穂ちゃんが玄関を開けてくれて、早乙女さんとマーイが出てきた。

「すみません。遅くなって」

「いいってことよ。俺らも今帰ってきたんだ」

「どこか行ってたんですか?」

「警察署に呼ばれたんだよ」

 一昨日の川飛込み事件か……。

「早乙女さんが被害届を出したんですか?」

「いんや、うちは千穂と話してそいうのはしないことにした。朝隈んとこの次男が学校で千穂を見ててくれるって言うしな」

 あのデカい奴か……。小崎をぶん殴って千穂ちゃんに告ってたな。彼が守ってくれるなら安心だ。

「あれ、早乙女さんって朝隈さんの知り合いなんですか?」

「ん?ああ、俺の後輩だ。あいつは農家継がないで鉄道会社に勤めてるがな」

 てことは結構真面目なお父さんなんだな……。なのに朝隈兄は特攻服着て単車乗り回してたぞ。

「俺らが警察に呼ばれたのは千穂の同級生が被害届を出したからだ。そんでよぉ、落とした不良連中と揉めてるらしくてな。不良側の言い分は千穂を川に投げたから仕返ししたって話だ。したらよ、同級生の中に動画撮ってた奴がいて、千穂は空飛んだから川に落ちてない言うんだよな。その辺の事情を聞かせてくれって言われてさっきまで警察署にいたんだよ」

 それってマーイの話しになってるんじゃ……。でもその前に、動画ってことは一人撮影していた奴がいたからあれだ。早乙女さんがあの光景を見たらショックは計り知れないぞ。

「早乙女さん、動画見たんですか?」

「いんや、刑事事件になるから警察が一旦は預かるそうだ」

 そうか……、でもいずれ見ることになるんだよな。たぶん。

「マーイの話しはしたんですか?」

「いや、言ってないぞ。なぁ千穂?」

「うん。嘘は付けないので、空を飛んで川に落ちなかったけど、何で飛んだのか、わからないって答えました」

「マーイ、魔法使った!」

「はい!マーイさん、本当にありがとうございました」

「マーイ、ありがとう」

 俺も千穂ちゃんと一緒にお礼を言った。あれは本当にマーイのお陰だ。

「うん、マーイできるっ!」
「できゆ!」

 マーイが胸を張って誇らしげに言うと俺に抱っこされた綾が続き、それで皆笑顔になった。






 玄関を開けて3人で家に入る。

「夕飯はハンバーグなんだけど、あとは焼くだけの状態、付け合わせとサラダ、スープは作ってあって米も炊いておいたから、先に風呂に入っちゃおっか」

「「 ハンバーグ! 」」

「ハンバーグ好きだよね」

「「 うんっ! 」」

 因みにうちの風呂は遠藤さんが将来的に介護し易いよう設計したらしく普通の家より1.5倍くらい広い。浴槽も少し大きめで三人入れる。

 脱衣所で服を脱いでいると俺のスマホが鳴った。

 知らない番号だ……誰だろう?市外局番はこの辺だな。下三桁が110……。あれ?これ確か警察署だよな?

「ごめん。先に入ってて」

 そう言って俺は慌てて服を着てリビングへ移動し電話を取る。

『もしもし』

 電話口からドスの利いた中年男性の声が聞こえた。

「もしもし」

『遅い時間にすいやせんね。私、警察署刑事課の岩井田というもんなんですけど、桜沢さんの携帯であってます?』

「はい。そうです」

『一昨日、学生が川へ飛び込む事件があったでしょ?ご存知ですよね?』

「はい」

『その件で、お話を聞きたいんですけどね、お連れさんいたでしょ、ピンク色の髪の女性』

 ここは後のことを考えると嘘は吐かない方がいい……。

「あ、はい」

『その方と一緒に署に来て欲しんですよ』

 とうとうこの時が来たか。なるべく時間を稼がなくては……。

「それは構わないんですけど、今週は少し忙しくて時間が……、来週でもいいですか?」

『ん?でしたらこちらから伺いますよ』

「いや、来られても対応できませんので。……うーん、今週末なら時間を取れるかもしれません。調整してまた電話していいですか?」

『いつ頃お電話いただけますか?』

 今日は水曜日……、

「金曜までには連絡できると思います」

『そうですか……、わかりやした。刑事課の岩井田宛に連絡ください』

「はい」

『では、失礼します。――プッ』

 ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい。事件当日、俺とマーイは警察と話していない。魔法で助けはしたが、当事者ではなかったからだ。

 あれだけの事件だし、マスコミがマーイを報道してる。だから警察から連絡来るとは思っていたけど!
 取り敢えず金曜日に電話して更に日数を稼がなくては……。電話しないのは不味い。しなかったらたぶん来るぞ。



 この日は早めに綾を寝かせ、俺はマーイから彼女がいた世界の話しを聞いた。




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