18 / 33
18 引っ越し準備
しおりを挟む苗木の植え付けが終わったら、次は家の周りの枯れ草や外壁に這った蔦を撤去する。
納屋周り、駐車場、玄関周りは砂利が敷いてあって草は少ないが建物南側の畑周りは大変なことになっているので、レーキやスコップを使って枯れ草を撤去していく。所々に種類はわからないが小さな木も生えていて、それは気合で引っこ抜く。とにかく広いから今日は家の周りだけで、畑は納屋にあるミニトラクターで2月頃枯れ草ごとすき込む予定だ。
家の裏でそんな作業をしていると玄関側から声がした。
「ごめんくださーい。桜沢さーん」
「はーい」
今日は電気とガスの業者が来ることになっていて、たぶんどちらかだろう。今日から両方使えるようになる。水は上流から地下水を引いていて蛇口を捻れば出てくる。もちろん無料だ。
◇
外作業を終えて玄関を開けるとマーイと綾が廊下の床を雑巾で拭いていた。薪ストーブが強力なのか廊下まで暖かい。
この家に住むに当たって壁紙や床、キッチン、トイレ、風呂周り等、一切リフォームせずそのまま使うことにした。売主の遠藤さんが引っ越した後、クーリングを入れているのでピカピカで綺麗なのだ。ただ、埃や蜘蛛の巣なんかはあるから、全部雑巾で水拭きすることにした。
「外は終わったから俺も手伝うね」
「パパ、やうの?」
「パパもやるよ」
三人で拭き掃除をして何とか12時頃に終わった。
綾はマーイの真似をして黙々とやっていた。まだ1歳半なのに集中力があって偉い。
「お昼ご飯食べようか」
「マーイ!お腹すいたー!」
「ついたー!」
それから三人でお弁当を食べる。食事が終わると綾が眠ってしまった。
俺とマーイは少し休憩する。
「マーイここ住む、楽しいね。ふふふっ」
「俺も楽しいよ。自然が多くて良い所だよね。果物の苗木もたくさん植えたし実るのが楽しみだな」
「マーイ、リンゴ、ナシ、ブドウ食べたい!お菓子作るね!いつできるのぉ?」
マーイは元パティシエの婆ちゃんからお菓子作りを習っている。
「早ければ来年の秋にはできるかな……」
「らいねん……?たくさん欲しいね。ふふっ」
マーイは来年の意味がわからないようだ。
その頃までマーイがここに居てくれたら良いんだけどな。一緒に収穫して美味しそうに果物を食べるマーイを見たい。
「食べ切れない果物は鶏の餌にする予定だからたくさんできて欲しいな」
情けない話だが昼間俺がいない間はマーイと婆ちゃんが綾を見てくれている。ここに三人で暮らすようになっても彼女がいてくれたらかなり助かる。……いや、そんな打算なくマーイといると俺は楽しい。記憶が戻ったら出て行ってしまうかもしれないが、出来ればもう少し一緒にいたい。
「俺、荷物運び込んじゃうね」
「マーイ、手伝う!」
今日は爺ちゃんの2トン平ボディ車を借りて来た。優香と離婚した時に引き取った家電製品や家具を積んできたのだ。
綾を寝かせておいて俺達は午後の作業に取り掛かる。
俺はリビングにある大きな窓を外し。リビングの床に養生用の毛布を敷く。
次にトラックに乗り込み、車のケツをリビングの窓に極力近付けて停めた。そして、トラックの後ろにあるゲートを下げると丁度リビングの床にピッタリ接する。ゲートがトラックと家の橋になった。リビング側が少し低い。
「おお!完璧だな!予想通!」
寸法を測っていたから想定通りになった。
離婚前、埼玉の新築で使っていた家具は優香の私物以外、引越し業者に頼んで全て福島の爺ちゃんの家の納屋に運んだ。
大型の冷蔵庫は25万もしたし、テレビやブルーレイは20万くらい、エアコンは3台で35万くらいで買った。他にも洗濯機や掃除機、家具等新品を買って、離婚するまでの約2年間しか使っていないので捨てるのがもったいなかった。
捨てなく良かったな……。これを新しく買ってたらかなりの出費だった。
俺とマーイは細かい家具から先にどんどん運んでいく。
さて問題は大型冷蔵庫。積む時はフォークリフトでパレットごと乗せたけど……。
「うぉりゃあああああ!はぁ…はぁ…ダメだ……」
パレットと冷蔵庫の間に敷いた毛布ごと引っ張っても動かない。
冷蔵庫は150㎏くらいあって運べるか不安だったけど、これは無理だな……。マーイは華奢で非力だから無理だろうし。ご近所の早乙女さんにお願いして……。
するとマーイが人差し指を立てて呟いた。
「ベトウユッフ」
これて物を浮かせる超能力?
「リョウ、マーイいっしょ……持つ!」
マーイに言われて俺達は一緒に冷蔵庫の端と端を持ち上げた。
あれ?簡単に持ち上がったぞ!
さっき運んだテレビ台より軽い。
そのままキッチンまで一緒に冷蔵庫を運んで設置位置に立てて置く。
「おお!できた!マーイすごーい!」
「マーイできる!えへへへへ」
本当にマーイは凄いな。
この子は何者なんだろう?本当にヘソマニア人なのだろうか?超能力者であるとこは間違いないと思うけど……。
桜色の髪や眉毛と睫毛、宝石のような青い瞳。
絶対にありえないけど、もしかしたらマーイはこの地球とは違う別の世界から来た、いせかいじn……
ピンポーン
おっと、誰か来たようだ。
お客はガス屋だった。
その後も俺達は持ち込んだ家具などを片付けて今日の作業は終わった。
4
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる