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9 ラブホで暴走

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 マーイはラブホがどのような場所なのか知らない。しかも彼女はたぶん未成年。そんな子をラブホに連れ込んで襲ったらそれはもうゲスの極み、鬼畜以外の何者でもない。

 しかし俺はマーイに何もしない自信がある。
 なんたって1ヶ月半以上、毎日一緒に風呂に入って一緒に寝ているのに何もしていないからだ。
 いや、何もしないとは少し違うか……。マーイ長い髪を洗ってやったり、ドライヤーしてあげているし、寝るときに絵本を読んで日本語を教えている。頼まれたら背中を掻いたり擦ったりもする。

 ただ、性的なことは何もしていないのだ。

 だからラブホに連れ込んでも俺は鬼畜にはならない。いつも通り過ごすだけだ。

「リョウ!布団、おっきい!」

「それはベッドって言うんだよ」

「ベッド! ベッド!」

 マーイは大きなダブルベッドに座り楽しそうに体を上下に揺らす。

「新しい家に引っ越したらそれくらいのベッドが欲しいな」

 二人で寝るならダブルサイズだよな……。

「リョウ、お風呂、見える!」

 ベッドからはガラス張りの浴室が見える。よくわからず適当に選んだらこんな部屋になった。

「これなぁに? お菓子かな……開けていぃい?」

 と枕元に置いてあったコンドームを手に取り、手でブニブニしたり匂いを嗅ぐマーイ。
 俺はさっとそれをかすめ取る。

「これは婆ちゃんが肩こりの時に背中に貼るやつの小さいのかなぁ~。たぶん。 マーイには必要ないだろ」

「臭いの! あ、テレビ、見る」――ピッ

「あっ♡あっ♡あっ♡ ああああ♡いやぁあああ♡ お゛お゛お゛お゛っ――」――ピッ

 俺はベッドにヘッドスライディングしてマーイからリモコンを奪い取りテレビを消す。この子に見せてはいけないものが映っていた。

「なんで消すのぉ? テレビ、なぁーに?」

 マーイは真顔でコテッと首を倒す。

「た、たぶん……き、筋トレ?あっ、プロレスごっこかなぁ~、あははは……」

「キントレ? プロレス?」

「それよりもう遅いから、お風呂入ろっか♪」

 ベッドに転がった俺はめっちゃ笑顔で言った。


 それから一緒に風呂に入った。
 マーイは泡風呂やレンボーライトで大はしゃぎ。楽しそうで何よりだ。

 因みに俺はマーイの裸を見ていつもドキドキするが、体は大人の園児を相手にしている思考回路でやり過ごすことによって乗り切っている!

 寝支度を済ませベッド入ったのはいいが――、
 今日は見慣れない大きなビルやネオンを見て、ラブホの設備で遊んで、興奮しているのかマーイがなかなか寝てくれない。

「寝れないの?」

「……うん」

 腕枕をしている俺の胸に顔を押し当て、返事をするマーイ。お互い備え付けのバスローブを着ていて、それが少しはだけている。



 眠いし先に寝よう。

 ――ブブッ ブブッ

 そう思ったら枕元に置いてあったフマホが鳴った。
 マーイの頭を抱きかかえるようにして、スマホを開くと長谷川からLINEが来ていた。時刻は11:40――。

 なんだろう?そういや優香とやるとか言ってたな……。

 俺は少し緊張しながらメッセージを開く。

 そこには目隠しされ、赤い紐で縛られた優香の姿が……、ベッドの上なのだろうか、優香が寝転がるシーツの上には色んな玩具が転がっていて、優香の腹の上には使用済みゴムが5個並べあった。

 続けて、メッセージが来る。

【ガチ追い込みかけといた(*^▽^*)v】

【いちいち報告するなw】

【涼チンの元嫁だし、黙っとくのも悪いじゃん】

【何その気遣い!?むしろ黙っといて!】

【凹んだ?大丈夫?】

【何とも思ってないから問題ない。ほんと勝手にやってくれ。あとマジで報告しなくていいから】

 ホウレンソウは社会人の基本だが、この場合は適用外だろ。

 この女がクールビューティーポニーテールの篠田さんなら少しはドキドキしただろう。
 しかし俺は写真を見てもキモいとしか思わなかった。目隠され縛られた裸のおっさんでも見せられているよな気分だ。
 つか優香太ったな。三段腹でぶよぶよじゃないか……。
 長谷川は見た目はあれだが、女の扱いが上手く結構ヤリチンだったりする。一度やると女の方が離れられなくなり、奴には常にセフレがいる。

 あんなに俺とのセックスを拒否ってたくせに、長谷川とは簡単にやるんだな……。なんかもうよくわからないよ。

 優香もその前に付き合っていた女もそれなりに楽しくエッチできていたし、逝かせることもあったからヘタじゃないと思うけど……、ってあれ演技だったのかな!?

 別に優香がどうなろうが知ったことではないが、元嫁のこんな姿を見るとなんか少しムカつくな。……くっそ。

 ガバッ!

「リョウ、どうしたの?」

 俺は咄嗟にマーイの肩を掴んで、彼女を仰向けにし、そこに馬乗した。マーイのバスローブがはだけ、小さくもなく大きくもない胸が片方露わになっている。

 俺はその胸に顔を埋めた。きめ細かい雪のように白い肌、柔らかい乳房、マーイの香り……。

「リョウ? 何してるのぉ? リョウ?」

 ああ煩い。黙らせてやる。

 俺は顔を上げ、強引にマーイの唇を奪おうとして彼女と目が合った。ピンク色の長いまつ毛に囲まれた宝石のように青い大きな瞳。彼女はいつものあどけない顔でキョトンと俺を見つめている。

 俺は吸い寄せられるように顔を近づけ額と額を重ねる。それからゆっくりお互いの鼻と鼻を合わせた。
 マーイの呼吸を感じる。あと1cm唇を下げれば――、キスをする。

 目を開いたマーイは逃げたり嫌がらないどころか表情も変えない。
 何をされているのか、本当にわからないって顔だ。

 俺はスッとマーイから離れた。

「ごめん。……俺、たまに寝相悪くて」

 と意味不明なことを言って、マーイから降りて横になる。

「リョウ、手」

「あ、ああ、うん」

 再び腕枕をした。
 危なかった。自分のちっぽけな自尊心を少し傷つけられただけで、俺は鬼畜になろうとしていた。

 マーイはまだ幼い。キスの経験とかあるのかな?なかったらファーストキスになるわけだが、こんな形で馬鹿なおれから奪われては可哀想だ。

「マーイ……ごめん」

「ん?……マーイ、リョウ……すき」

 そう言ってまた俺の胸に顔を埋める。マーイの好きは美味しいと同じ意味だけど、少しだけ心が楽になった。

 この日から俺はマーイという女の子に少しづつ興味を抱くようになっていった。






 翌朝、YouTubeを開くと動画にコメントが来ていた。俺みたいな底辺YouTuberはなかなかコメントをもらえないのだが……。

 何て書いてあるのかな?

 コメントを開くと見覚えのあるGoogleアカウントで、『撮影してる子だれ?』っ書かれてた。

 つか、このアカウント優香じゃん!



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