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第60話〈ガンシャ―ガトリング砲〉
しおりを挟む【ゼツ視点】
横を歩くノエルが聞いてくる。
「あの翼が生えた人、ゼツ君を探しているの?」
「うん、あいつ等は僕を捕らえて監禁する積りなんだよ」
「どうしてそんなことをするの?」
「奴等の親玉、人神が僕の加護を必要としているから……」
そんなことをノエルに話しても理解できないだろう。
5000年前【MR無責任種付おじさん】の加護を授かったソロモンは12歳で天国愛に攫われ10年間監禁された。
目隠しされアーティファクトでスキルロックをかけられた。歩くことも喋ることもトイレに行くことすらできず、天使が攫ってきた女と交尾させられる日々過ごす。
だがそうして彼はレベル4000を超え、天国愛を下し自由に生きることができた。
僕も攫われたそうなるのか……。ソロモンと同じように女漬けにされるのはごめんだ。
「ノエル、大丈夫。アエロリットが僕を守ってくれたから」
「そっか……、ゼツ君、私の前からいなくならないでね?」
彼女は不安気な顔をしていた。だから僕は真剣に答える。
「ああ、約束するよ」
オリハルコンゴーレムに向かって歩くと、A級やB級モンスターが町中を闊歩し、民間人を救助しているのが見えた。
クリトの仕業だな。
彼が僕とノエルの前で使った〈異空間〉は【SR魔王】のアクティブスキルだ。
そしてこの使役されたモンスターはアクティブスキル〈軍勢〉だろう。
つまりクリトの加護は【SR魔王】。
魔王とはこの世界を征服する目的で神々が設計した加護。大量のモンスターを異次元から呼び出すスキルは、この星の空間と次元に自在に干渉できるところに本質がある。
歩いていると、オリハルコンゴーレムの頭部再生が始まった。
この位置から〈ガンシャ〉でヤツを破壊するれば、背後の町まで吹き飛ばしてしまう。
「ノエル、〈グラビティ〉で僕をオリハルコンゴーレムの上空に送ってくれないか?」
「で、できるかな?」
「〈グラビティLv8〉なら人を浮かせられるよ」
「ゼツ君がそう言うなら、やってみる!」
「うん、それとラストアタックなんだけど――――」
僕は歩きながらノエルに細かい指示を出した。
僕達がオリハルコンゴーレムの近くまで来ると、パンティー達が駆け寄ってきた。
「ゼツ様ぁ~!これはゼツ様がッ?」パンティー
「待ちくたびれましたわ。まったく」アターシャ
「ゼツぅ~、ノエルぅ~こわかったニャン」ティッシュ
アナルも澄ました顔で僕を見ている。
皆無事で良かった。
「これからオリハルコンゴーレムを倒す。パンティー、核が露出したらトドメを刺してくれ」
「……わ、わかりましたッ!」
パンティーが頷くと同時に、オリハルコンゴーレムが動きだした。
「ノエルッ!頼むッ!」
「うん!アクティブスキル〈グラビティLv8〉ッ!」
僕の体が宙に浮いた。そのまま空へ向かって上昇していく。
オリハルコンゴーレムが長く太い腕を伸ばし僕を捕まえようとするが、それをすり抜けどんどんと上昇する。
僕はオリハルコンゴーレムの上空で静止した。
「アクティブスキル〈Gスポット〉ッ!
アクティブスキル〈ガンシャ―ガトリング砲〉ッッッ!」
僕の手に6丁の〈ガンシャ―ライフル〉が円形に連なった巨大な兵器が顕現した。
暴力的な存在感、武器自体が禍々しいオーラを放っている。
「種転送、〈種強化Lv80〉ッッッ!!!」
込めるのは当然最強の”種”だ!
僕はようやく起き上がったオリハルコンゴーレムの頭上、遥か上空で呟く!
「終わりだ!」
ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドッピュンッッッッッッ!!!!!――ドゴゴゴンッ!!
オリハルコンゴーレムの体は上からバラバラになっていく。
僕を認識できない天使が発射地点にいるであろう僕に向かって飛んでくるが、その前に片づける!
ノエルの援護で上下左右に移動しているからすぐには捕まらない。
核が見えた!
僕は〈ガンシャ〉を止めて叫ぶッ!!
「パンティイイイイイイ!!核を壊せッ!」
露出したのは直径2メートルの巨大な核。そこにパンティーが上段から剣を切り下す。
「うらぁああああッ!」
パンティーの剣が届く刹那――、ノエルが呟いた。
「アクティブスキル〈闇魔法-即死Lv8〉」
オリハルコンゴーレムの核を黒い髑髏形の光が包む。そこにパンティーの剣が入った。
核が壊れると、オリハルコンゴーレムの体は黒い霧になって消えいく。
跡には巨大な黄金の金属が残った。
僕はハエのように飛んでくる【SSR天使】を刀で切り落とす。複数体に掴まれれば今の僕でも抵抗できず攫われる。天使の切れ間ができたところで、ノエルが〈グラビティ〉を解除した。
僕は地上へ落下しながら空を見る。天使は僕を探し回っている。
「天国愛、これでもうお前にチャンスはない」
そしてタカヒロに念話を送った。
【タカヒロ、ゼツ視点】
『タカヒロ、飛べ』
『へい!』
タカヒロの感覚の全てを僕は共有できる。今僕は落下しながらタカヒロの目を通してクリトを見ている。
「クリトさん行きやしょう」
タカヒロがそう言うと、クリトは明後日の方向を見ながら頷いた。
恥ずかしいのか?少し顔が赤いようだが……。
クリトは凛々しい声で叫ぶ!
「アクティブスキル〈空間転移〉ッ!」
【アエロリット視点】
ゼツの居場所を吐かせるため、アエロリットは拷問を受けていた。
しかし彼女はクツクツと生意気に笑うだけで答えない。
苛立った龍神は最初は指を切り落とし、次に足、腕と彼女の体を切り落としていった。
手足を失ったアエロリットの両肩に杭が打たれ壁に貼り付けにされている。
神自慢の回復スキルもMPが枯渇した状況では発動せず、あと数分もすれば本当に死んでしまう状態だった。
「あなた、言わないと死ぬわよ?」
天国愛がアエロリットの顎を指で持ち上げ、見下した目で言うが、アエロリットは口元に薄い笑みを浮かべるだけで何も答えない。
「愛、もうコイツいらなくない? コイツがいなくなって困ることって、龍脈と常闇の調整ができなくなることだけだろ?」
「うーん、そうね。雫も起きないんじゃ、いらないわよね……、生意気だし殺しちゃおっかw」
この絶望的な状況でもアエロリット諦めていない。
常に思考を巡らせている。
主がタカヒロを召喚すれば、ソロモンの記憶が蘇る。妾がいくら言ったところで信じてもらえんが、ソロモンの記憶さえ見ることができれば、主はこ奴らの残虐性を知り、妾の味方に付いてくれる……筈じゃ……。
その為に妾は主を縛らず、無理な勧誘もせず、主の良心を信じることにしたのじゃ。
妾は賭けたのじゃ、ゼツに……。
あと少し……必ず助けに来てくれる。
「うーん、神殺しかぁ、どうせなら眷属にやらせた方がいいわよね。レベルも上がるしさ」
「いや、面倒くさいから今殺――」
そう竜ケ崎流花が言っている最中、三人の神の間に軍服の少年と裸のおっさんが「スッ」っと現れた。
「ぐぅへへへへへへッ!久しぶりだなぁ!竜ケ崎ぃ~!天国ぃ~ッ!」
タカヒロが血走った眼で言い放つ。タカヒロを見た龍神が驚き叫ぶ!
「き、貴様はッ!タカヒロッッッ!!」
「クツクツ、妾の勝ちじゃッ!!」
「アクティブスキル〈空間転移〉ッ!」
アエロリットが叫んだ瞬間、魔王が〈空間転移〉を発動させ、タカヒロを残し二人は飛んだ。
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