59 / 66
第59話〈種強化Lv80〉
しおりを挟むダンジョンの中で、青白く光る直径30メートル程の巨大な魔方陣を発見した。オリハルコンゴーレムが通った跡はこの魔方陣で終わっている。これがクリトの言っていた〈転移魔方陣〉だな。
ノエルが僕の手を握る。
「ゼツ君」
僕は頷きノエルの手を握り返した。
僕達は魔方陣の中に飛び込む。
◇
太陽が眩しい。
僕達は街の中心広場に出た。
【タカヒロ、手筈通り、お前はクリトと合流しろ】
【はは!】
僕達は〈念話〉で会話ができる。
僕はタカヒロに指示を出しながらオリハルコンゴーレムが通った跡、街が破壊されたその先を睨む。
オリハルコンゴーレムが長い腕を振り回し、コマのように回転しながら暴れている。この街の建物は殆が3階建てだ。建物で例えるなら10階建てはある巨大なオリハルコンゴーレムが、ここからでも良く見えた。
「やはり来ていたか」
次に僕は空を見て呟く。
そこには無数の【SSR天使】――。
更に複数の天使がオリハルコンゴーレムを攻撃し、わざとヤツを暴れさせている。
僕をあぶり出し、攫おうとしているのだ。天国愛ならやりそうなことだな。
だが残念だったな【人神】よッ!
「お前は一手遅かったッ!
――ノエル、下がっていて」
ノエルが真剣な顔で頷き下がると。
「アクティブスキル〈ガンシャ―ライフル〉!」
――種転送、〈種強化Lv80〉ッッッ!!!」
僕は暴れるオリハルコンゴーレムの頭を狙って撃つ!
ドッピュンッッッッッッ!!!!!――ドゴゴゴンッ!!
物凄い発射反動エネルギー。僕の周りで雷鳴が鳴り響き紫電が飛ぶ。大地は割れ、爆風がノエルのスカートを捲るッ!
ドガンッッッッ!!!
全てを超越するかのような闘気を纏った”種”が神話級SSモンスター、オリハルコンゴーレムの頭に着弾、奴の頭部を吹き飛ばしバラバラに砕いた!
「なんて物凄い威力なの……、え?なに?この人たち?」
十数体の【SSR天使】が光の速さで地上に降りて、〈ガンシャ―ライフル〉の発射反動で地面にできた小さなクレーターの周りを取り囲む。
天使は全員、白銀の髪と瞳、白い肌、無表情。それらがキョロキョロと周囲を見回している。クレーターの中心に立つ僕が見えていないのだ。
「だから一手遅かったと言ったろう」
アエロリットが僕に掛けたスキル〈神の隠蔽〉――、その効果によって人神と龍神の眷属は僕を認識できない。
5000年前は無かったスキルだ。新しいスキルを創造するには数百年という、長い年月を要する。
アエロリット……、この日の為にこのスキルを用意したのか。
ふっ、流石だよ。お前は……。
僕はそんな天使達の間をすり抜けると、腰に差していた”刀”を抜きざま――、女天使の首を切り落とした。刀を鞘に戻す。
天使の首はトスっと地面に落ち、体は地面に倒れる。切り口からは血は出ない。
「人の成れの果てか……、可哀想に。ノエル行こう」
そう呟くと、頭部を失い倒れたオリハルコンゴーレムへ向かって歩き出した。
僕を追ってきたノエルが。
「ゼツ君、あの人死んじゃったよ」
「あれは生物じゃないんだ。モンスターみたいな存在なんだよ」
天使に生はない。レベルカンストした者が、天国愛のスキルで【天使】に変えられるわけだが、その際に生を奪われるのだ。
僕の行為は【LR人神】天国愛への宣戦布告である。
【クリリス視点】
巨大なオリハルコンゴーレムの頭がバラバラになって弾け飛んだ。
ゼツ・リンダナがやったのか!?
余りの威力に呆然としていた私に裸のおじさんが話し掛けてきた。
「ぐへへへ、【魔王】ですね」
「ッ!?貴様、何者だッ?」
「あっしはタカヒロ、――ゼツ様のホールブラザーズです」
この男が……タカヒロ!!
「――ゼツ様がアレを始末したら、一緒に〈バビロンの塔〉へ飛びやしょう」
「わかった」
私は恥ずかしくて裸の男を直視できないので、倒れたオリハルコンゴーレムを見詰めながら頷いた。
1
お気に入りに追加
1,081
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。





体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる